まつじ/誰かがタマネギを炒めている2

Last-modified: Mon, 30 May 2022 23:20:30 JST (708d)
Top > まつじ > 誰かがタマネギを炒めている2

読む Edit

 鍋の底に菜種油をのばし、ごく弱火にかけている。微塵に切られた彼らは、そこにぼろんと放り込まれてしまう。ぼろんでできた小さな山を、ヘラで平すように馴染ませてやると、やがて彼らは小さな泡をたてて、いてもたってもいられないようである。手心を加えず、じっくり構えていたら、しんなりと色を変えるのが彼らである。何かが軋む。ページを捲る音がする。何を読んでいるのかは分からない。じりじりと沸き立つ泡を背景に、また、ページを捲る音がする。そうするうちに深く深くなってくるのは立ち上る香りも同様で、熱は彼らをすっかり別のもののようにしてしまう。熱は彼らをまるで別のもののようにして、未来を知ることのない彼らの細胞は壊れていく。

 本は閉じられる。

 何かが軋む。

 さてと、

ジャンル Edit

料理五感??軋む?

カテゴリ Edit

超短編/タ行

この話が含まれたまとめ Edit

すぐ読める

評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第187回競作「誰かがタマネギを炒めている」 / 参加作

執筆年 Edit

2022年?

その他 Edit

Counter: 270, today: 1, yesterday: 0