保育園アプリの主なサービスとしては、連絡帳としての機能や写真の共有などがあります。
「保育園アプリを使えば、保護者は仕事の隙間時間で子どもの様子が確認できる。園側も、朝の個別の電話対応や育児日誌に手書きで書き込む手間がなくなるので、仕事に忙殺されなくて済む。メリットは双方にとって本当に多いですね」(高橋さん)
高橋さんのママ友の体験談では、「仕事中に、保育園アプリで園から、『本日、〇〇ちゃんはちょっと咳こんでいました』と連絡があったのを確認。社内ですぐ小児科に予約をして、その日のうちに病院に受診できた」とのこと。
お迎えのときに知らされた場合は、間に合わなかったかもしれません。保育園アプリが活躍する、いい例ではないでしょうか。
高橋さんがおすすめする保育園専用アプリは「コドモン」と「キッズリー」です。
株式会社コドモンが提供するアプリ「コドモン」は、ICカードとタブレット端末を使い、入退室の時間を正確に記録して、保護者に通知。ファミリーサポートなど、パパ・ママ以外の人に子どもの送迎をお願いしたときには特に安心感があります。
また、緊急の連絡にも対応し、「言った、言わない」などの伝達ミスも避けられます。さらに、毎回のお便りや写真の配布などがペーパーレスになり、保護者はアプリ上で各自確認することができます。
園内での様子を先生が撮影して共有された写真は各自で好きなものを注文してもらい、郵送されます。パパ・ママは子どもの様子を写真で確認でき、欲しいものを選べてとても便利です。
保育園側にとっても、保育士さんたちの仕事の効率を格段にアップさせるのに役立っているようです。例えば、指導案・要録作成や保育料の計算、子どもの給食管理など、多数の機能がついていて充実しています。
2016年度グッドデザイン賞を受賞した、ユニファ株式会社の保育園専用アプリ「キッズリー」はかわいい見た目で使いやすい設計。保育園からの連絡が保護者のほか、登録すれば祖父母にも届くしくみです。
登園・欠席・遅刻などの連絡から、緊急連絡の場合などはアラートで知らせる機能もついています。
「園からのお知らせ」ではスピーディーに連絡が届き、「カレンダー」機能では、運動会やクリスマス会などのイベント情報が入るため、前もってイベントの日を知ることができます。「保育園とママのコミュニケーション」に特化した、連絡帳を中心とした機能が充実。必要な機能が分かりやすく、保護者が使いやすいのが特徴です。
保育園専用アプリ以外でも「快適な子育てを支援するIT活用」として、ぜひ注目したいアプリとして高橋さんが2つ教えてくれました。
まずは、株式会社ファーストアセントが提供する「パパっと育児@赤ちゃん手帳」というアプリです。これは、0歳~6歳くらいまでの子どもの成長記録がグラフによって見える化でき、無料でバックアップ機能が付いていたり、記録が電子書籍にできたりと、便利で優秀なアプリです。
注目すべきは「泣き声診断」という機能。赤ちゃんの泣き声を聞くだけで、どんな気持ちなのかが分かる機能です。約2万人のモニターから集めた泣き声データを元に、赤ちゃんの泣き声から「お腹がすいたよ」などの感情が分かるというもの。モニター評価では正答率は80%との結果が出ています。初めてママになる人なら、赤ちゃんの気持ちが分かると育児もしやすくなるでしょう。
2つ目は、株式会社AsMamaの「子育てシェア」です。これは、知人間共助のアプリで、知っている人だからこそ、親も子どもも安心できる「送迎や託児のシェア」が依頼できるというもの。基本無料で登録でき、万が一のときは保険加入もできます。
さらに、相互の人間関係を深めるために、おさがりの洋服の受け渡し、教科書やおもちゃなどの貸し借りなどのシェアもこのアプリ内で可能です。
また、ごはんやお出かけなどに誘い合う「予定のシェア」もでき、家族ぐるみの楽しい時間の共有もできます。このアプリを使えば、近隣に頼れるママ友がいなくても、サポートし合える関係を無理なくつくることができます。
「託児送迎をシェアできる関係がアプリでできれば、こんなに心強いことはありません。政府が推進する『シェアリング・エコノミー』(個人が保有する遊休資産〔無形のものも含む〕の貸出しを仲介するサービス。総務省より)の活用とも言えます」(高橋さん)
近くに頼れるママ友がいないという人も多いと思います。しかし、今では人間関係の構築もITによって可能なのです。子育てママにとっては、かなり利用価値の高いアプリではないでしょうか。
高橋さんによると「2011年の3月11日に起こった、東日本大震災のとき、安否の確認は電話では繋がりにくくなり、到底無理な状況でした。でも、ITの情報技術なら連絡が取れ、子どもの安否も確認できたんです」とのこと。
また、成人の95%がスマホを持っていると言われ、保育園アプリも普及してきている現在も、課題はあります。
「『保護者のスマホの保持率が100%ではないこと』によって、実は妨げになっている部分もあります。スマホを持っていないパパ・ママには、出欠や連絡などの個別の対応をしなくてはなりません。それも手間にはなりますし、対応として、スマホを持つか持たないかの部分で差別になるのもいけないので、完全普及までは難しいのが現状です。
保護者でも、“スマホを使いこなせない”人もいれば“スマホが好きではないので、昔ながらの携帯電話しか持たない”人もいます。その部分はどうしても個人の感覚によるものなので、統一は不可能でしょう」(高橋さん)
便利なだけでなく、いざというときの子どもの状況も確認しやすい「子育てのIT活用」。スマートフォンを持っていない人への対応などの課題を解決しながら、今後は便利&快適に拡大していってほしいと思います。