習近平がいま一番恐れる「米朝急接近」「求心力低下」の悪夢

かつてのソ連とアメリカのように…

アメリカの真の狙い

7月6日、米中双方が340億ドル相当の輸入品に対して25%の関税をかけ、いわゆる米中貿易戦争が“開戦”となった。

この関税引き上げ合戦はさらにエスカレートしそうな予感がする。一方で、中国としては対外的な強気な発言とは裏腹に、この戦いが非常に不利であることを認識しており、これをどのようにしのぐか、あるいはこの窮地に陥った責任を誰がどうとるかが、8月に予定されている北戴河会議(河北省の保養地で開催される党中央幹部および長老たちによる政策・人事のすり合わせを行う非公式会議)の重要テーマの一つらしい。

 

関税引き上げ合戦になれば、中国からの輸入総額が5000億ドル以上の米国と、米国からの輸入総額が1300億ドル程度の中国では勝負にならない。しかも、米国の狙いは、単に中国の対米貿易黒字を減らさせるという事にとどまらず、中国の経済戦略の柱である「中国製造2025」プロジェクトそのものを妨害する、つまり中国のこれ以上の経済覇権の拡大を阻止するという目的もあるといわれている。

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トランプ個人がどう考えているかは別として、少なくともトランプ政権で今後、影響力を発揮しそうなピーター・ナヴァロなどは、中国との通商問題をたんなる貿易不均衡問題ではなく、安全保障問題に通じるテーマとして考えているようだ。

というのも、「中国製造2025」で打ち出されている重点ハイテク産業のトップは「次世代通信技術」であり、具体的にいえば5Gの通信設備をすべて国産で賄える能力、つまり半導体などをすべて自給確立することなどにあるからだ。中国は国内で13億市場を握り、しかもその市場に海外企業が進出するためには、中国共産党への従順さを要求している。

たとえばサイバーセキュリティ法で「重要なネットインフラ企業やEC企業が中国国内で事業、サービスを行う場合、ユーザーデータほか重要なデータを国内サーバに蓄積すること」などが規定され、もしその企業のサービスが「国家安全に影響を与える」とされれば、当局によるサーバー内の立ち入り検査を受け入れねばならない。

何が「国家安全に影響を与える」と判断されるかは規定されておらず、中国がその企業のサーバー内に立ち入りたいと思えば、いくらでも立ち入る口実を得ることができるということで、これは技術系企業が中国市場進出を躊躇する十分な理由となる。

この結果、中国の情報通信系企業がこの巨大市場をほぼ独占できる。実用がイノベーションの最大の原動力であるとすれば、巨大市場を得た中国企業のイノベーションは加速し、また低価格化も進み、欧米他社を上回る競争力も持つ。こうして中国の情報通信企業の華為、中興などは欧米他社をしのぐ勢いで世界シェアを奪いつつある。

世界の無線インフラ市場は主に4社で構成されるが、そのうちの二つが中国の華為と中興だ。次世代通信技術・5Gもこの調子でいけば、中国勢が市場を席捲することになり、その結果、国際標準が中国規格になる。だが5G技術は米国にとっても軍事利用され、国家安全の根幹をなす技術だ。これの国際標準規格を中国に奪われるわけにはいかない。

中国は今世紀半ばに中国の特色ある社会主義現代強国の実現をうたっており、米国に並び立つ大国となる野望を隠していないが、その実現の第一歩が5Gの主導権を奪う通信覇権の確立なのだ。

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