米中貿易戦争・開戦して分かった、中国には「3つの不利」がある

習近平政権は「徹底抗戦」を選択

先週金曜日、7月6日は、いろんな事があった。西日本一帯に大雨特別警報が出され、数十年に一度の大災害に見舞われた。

東京では、オウム真理教の麻原彰晃教祖以下、計7名の死刑囚の死刑が執行された。さらに、文部省科学省の佐野太前科学技術・学術政策局長が、息子を東京医科大学に不正入学させた問題で、東京医科大が緊急記者会見を開き、臼井正彦理事長と鈴木衛学長の辞職を発表――。

このように、日本は大変慌ただしい一日だったが、この日の午後1時1分、世界でもう一つ、歴史に残るような一大事が起こった。米中貿易戦争の勃発である。

3月22日にトランプ大統領が中国製品への制裁を宣言して以降、世界ナンバー1とナンバー2の経済大国が角を向け合っていたが、とうとうルビコン河を渡ったのだ。

他の国なら、超大国のアメリカにここまで強硬に迫られたら怯むところだが、2期目の5年が始動した3月に「強国建設」を宣言した習近平政権は、後に引けない。そこで、「貿易覇権主義」という新語を米トランプ政権に被せて、まずは「徹底抗戦」を選択したのだ。

〔PHOTO〕gettyimages

経済史上最大規模の貿易戦争が発動

日本時間の午後1時5分、中国商務部の報道官は、「アメリカの340億ドル分の中国産品に追加関税をかけたことに対する談話」を発表した。全文は以下の通りである。

〈 アメリカは7月6日、340億ドル分の中国産品に対する25%の追加関税措置を開始した。アメリカはWTO(世界貿易機関)の規則に違反し、今日まで経済史上最大規模の貿易戦争を発動した。

この種の追加関税行為は典型的な貿易覇権主義であり、まさに全世界の産業チェーンと価値のチェーンの安全を著しく脅かすものである。また、世界経済の復興の足踏みを阻害するものであり、世界の市場に動揺を引き起こすものであり、世界のさらに多くの無辜の多国籍企業と一般企業、消費者に波及するものであり、アメリカの企業と国民の助けにならないばかりか、彼らの利益を損なうものだ。

中国側は先制攻撃はしないとした。だが国家の核心的利益と国民の利益を断固として守るため、必要な反撃に動き出さざるを得ない。われわれは今後、時を見てWTO及び世界各国に、関連する状況を通報し、自由貿易とグローバリズムを共同で維持し、保護していく。

同時に、中国は重ねて申し上げるが、確固として改革を深化させ、開放を拡大していく。企業家精神を保護し、産業の権利保護を強化していく。中国に進出している世界各国の企業に良好な営業・商業環境を提供していく。われわれは今後、関係する企業が受ける影響を計竿くして評価し、効果的な措置を取るよう努力し、企業を助けていく 〉

 

それから3時間後、中国外交部の定例記者会見で、陸慷報道官も厳しい表情で、アメリカを批判した。強調したのは、WTO規約違反を犯したのはアメリカの方であり、中国は自由貿易とグローバリズムを守っていくということだった。

「アメリカ側の誤ったやり方は、WTOの規則に公然と違反するものだ。かつ全世界の貿易秩序に打撃を与え、世界市場に混乱を起こし、世界経済の復興を阻害し、世界の多くの多国籍企業、中小企業、及び一般消費者たちすべてに被害を与えるものだ。また、アメリカの多くの業界と国民も、すでに日を追って自身が被る被害の大きさを意識するようになってきている。

事実、アメリカ政府が最近取っている一連の一国主義と貿易や投資面での保護主義の措置は、すでに世界の広範で懸念と批判を呼んでいる。そして少なからぬ国家の反対と報復を招いている。

中国側は終始、一国主義の行動に反対し、貿易投資面での保護主義に反対してきた。われわれは常に、関係部門がグローバリズムの進捗を客観的に認識するよう、かつ貿易関係において表れる意見の違いや問題を理性的に処理するよう、最大限の努力を尽くしてきた。しかしそれは関係部門が相互に行えばよいことだ。

いかなる一方的な圧力を試みようとも、それはすべて徒労に終わるし、何人ともそうしたことに幻想を抱くべきではない。中国自身の正当な利益が不公平な扱いを受けている状況のもとで、中国側は当然ながら必要な反撃に打って出る。

商務部の報道官が今日すでに述べたように、われわれは時を見てWTOに関係状況を通報し、世界各国と一体となって、共同で自由貿易と多国間の貿易体制を維持し保護する決意である」

同日の中国時間夜7時、中国中央テレビ(CCTV)のメインニュース『新聞聯播』では、トップニュースではなく、後半部分でこのニュースを報道した。前述の商務部と外交部の報道官の発言を紹介した後、アナウンサーが、昨今の中国経済がいかに好調かを強調したのだった。

「世界銀行の最新の発表によれば、今年第1四半期(1月~3月)の中国のGDPの伸びは6.8%で、中国経済の強靭さは変わっていない。国際通貨基金(IMF)も中国の消費は伸びていて中国経済の伸びは年初の予測通りだとしている。

実際、GDPは連続11四半期で6.7%~6.9%を保持している。供給側構造改革は不断に深化し、5月の全国都市部の失業率は4.8%と過去最低ラインだ。1月から5月までの電力使用量、鉄道貨物輸送量など実体的な指標も右肩上がりを保持しており、全国新規企業登録社数も12.3%増加した。一定規模以上の企業の収入100元あたりのコストは0.31元下降し、利益総額は16.5%増加した。

中国人民銀行が発表した第2四半期の企業調査によれば、企業経営者の先行き見通しを示す指数は75.8%で前年同期比10.4ポイントの上昇。6月までPMI(工業購買者担当景気指数)は、連続23ヵ月50%ラインを上回っており、5月の消費者収入景気指数、就業景気指数、消費意欲指数なども、かなり高い数値を示している」

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