『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』での「ワルイージを参戦させろ」活動が過激化。コミュニティも“要望の声”が本物か判別できず


E3 2018にて正式発表され、世界を沸かせた『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』。同作は、これまでのシリーズで登場したファイターが全員参戦するという「スペシャル」な内容となっている。この発表を受けて、海外の一部コミュニティから、マリオファミリーとしてはおなじみの「ワルイージ」がファイターとして参戦しないことを嘆く(もしくは面白がる)声があがり、SNSなどで新たなネットスラングが生まれている。弊誌でもこうした動きを報道済みだ。

その後、KotakuThe Washington Postがこの問題を取り上げ、こうした声に対してMotherboardが「ワルイージは参戦に値しない」と反論するなど穏やかではない雰囲気が生まれつつある。そして、ジョークとして捉えられていた「ワルイージ参戦」を求めるコミュニティの動きは、次第に過激化していっているようだ。

#JusticeForWaluigi

過激化の代表的な一例としてあげられるのが、Twitterにて投稿されているハッシュタグ#WAHrriorsだ。#JusticeForWaluigiとセットで投稿されているこのハッシュタグは、ワルイージの参戦を呼びかけるもの。『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』では、功労者でありながら、アシストフィギュアとして登場することが確定している紫色の不遇キャラクターを、ファイターとして参戦させることを目的とした活動だ。

問題なのは、この活動が『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』のディレクターである桜井政博氏宛てに送られているという点。そもそも桜井氏のもとには毎分ともいえる頻度で、特定ファイターの参戦希望の要望やファイターの性能強化のリクエストが送られてきている。これに加えて「ワルイージ参戦」の要望するリプライが送られてくるようになった。キャンペーンの発起人でもあるADD WALUIGI TO SMASH ULTIMATE氏は、全員参戦を謳いながらワルイージが参戦していないのは敬意に欠けていると主張。ファイターとして含まれていないことに“私達”は怒っていると述べ、ワルイージ参戦を呼びかけていくと訴えかけている。ただし、一方で節度をもって、平和的にヘイトなしに参戦を訴求していってほしいともコメントしている。

しかし、コミュニティの足並みがきれいに揃うはずもない。そもそもADD WALUIGI TO SMASH ULTIMATE氏はキャンペーンを始めた際には、任天堂公式にリプライをつけて訴えかけていたという背景もあり、桜井氏のもとには大量のワルイージ参戦要望のリプライが送りつけられている(現在氏は、前述したようにやめるように呼びかけ中)。複数のユーザーが、この一連の行動は“嫌がらせ”であるとし、即刻やめるように呼びかけているが、それでも氏のもとには大量のワルイージの画像が届いているのが現状だ。

https://twitter.com/wonderhavoc/status/1008787668824555521

さらには、桜井氏を守ろうというハッシュタグ#JusticeForSakuraiまで生まれており、コミュニティは混迷を極めている。任天堂作品に関連するファンのキャンペーンといえば、昨年に『メトロイド サムスリターンズ』を買ってフランチャイズを盛り上げようというキャンペーンが実施されたが、こちらはシリーズの存続を願うべく、ゲームの購入を平和的に呼びかけるという、誰も傷つかないようにマナーを重んじた活動であったことに対し(関連記事)、今回のワルイージの件は、好きなキャラクターの参戦させるために呼びかけるというパーソナルな活動だ。すべてのファンがリプライによって桜井氏に要望を届けていないにしても、お行儀のよいキャンペーンとはいえないだろう。

『マリオテニス エース』のワルイージ

誰がワルイージを支持しているのか?

そもそも「ワルイージの参戦を望む人が本当にいるのか?」という点に疑問を持つ方も多いだろうが、コミュニティ内でもはっきりとしていない側面がある。redditの該当スレッドでは「桜井さんにリプライを送りつけている人の9割が、面白いと思っているキッズのジョークで、1割がバカ」というコメントに評価が集まっているように、その実態ははっきりしない。署名サイトChange.orgでも「Switch版スマブラにワルイージを参戦させて」というキャンペーンが開始されており、2万人以上が同意しているが、コメント欄は熱意よりもおふざけの強さが目立ち、2万人全員が心底から参戦を望むファンであるか疑問に抱くだろう。

ただ、任天堂からもファンからも“ネタ扱い”が続くワルイージであるが、少なくともファンベースは一定数存在すると考えることもできるようだ。USgamerは、『マリオストライカーズ』でワルイージが見せる、失うものがないかのような泥臭い卑劣な嫌がらせの数々は、称賛に値するとコメント。マリオシリーズ随一の小物感が、固定ファンを生んでいると示唆。さらには『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズをテーマとしたファンコミックBrawl in the Familyで描かれるワルイージの活躍が、同キャラの人気を爆発させたと主張している。2018年4月に実施された『大乱闘スマッシュブラザーズ』での参戦を望むファイターアンケートでも2位の『Shovel Knight』を大きく引き離しトップに輝いている。冒頭でも、最新作へのファイターとしての不参戦がネットスラングになったことを紹介したように、ジョークを含んだとしても人気があることは確かなようだ。

ただし、これらの人気が『大乱闘スマッシュブラザーズ』への参戦を望むものかにつながるかは未知数。前述したように「ジョークだろう」という声も多数あり、コミュニティ内でも判断しかねているようだ。またジョークを含んでいたとしても、今回のような嫌がらせにも近いキャンペーンはワルイージファン全体の印象悪化へとつながるだろう。桜井氏は、タイトル発表時には全員参戦にフォーカスしていると述べ、新ファイターの追加はあまり期待してほしくないと述べていたことを覚えている方もいるだろう。

くわえて、『大乱闘スマッシュブラザーズ』のようなビッグプロジェクトが発売半年を前にして“ファンの突撃”に応じてキャラクターを追加するとは考えづらい。そもそも、ワルイージはアシストフィギュアとして参戦することが確定しているのだ。現実的に実現可能なのかを考慮し、おこなっているキャンペーンとは思えない。ファンの声が熱いというよりは、ネットスラングが悪ふざけへと悪化してしまったと考える人も多いのではないか。

それぞれ人気タイトルのファンの想いを抱えて開発する桜井氏は、プレッシャーと戦いながら作品を開発していると考えられる。氏に対しては、一方的な要望の声よりも、あたたかい応援の声を届けてほしいところだ。