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 国土交通省の官庁営繕部は2020年1月17日、中規模木造庁舎の試設計例を公開した。設計過程などを示しつつ、平面計画や構造設計、コスト検討のポイントを紹介している。近年、民間を中心にCLT(直交集成板)パネル工法による中大規模木造が増えていることを踏まえ、軸組み構法とCLTパネル工法の2例を示した。公共建築物や民間建築物で設計例を活用してもらい、木材利用の促進につなげる。

 試設計の条件は、構造耐力上主要な部分の全てに木材を利用した4階建ての純木造で、高さは20m、延べ床面積は約3000m2。災害応急対策活動を行わない一般的な庁舎で、耐火建築物とした。建物の両端に耐力壁を、中央に大部屋形式の事務室を配置する。

平面計画の考え方。中央の事務室部分には、フレキシブルな事務室空間を確保するために耐震壁などを配置せず、両端のコア部分にまとめた(資料:国土交通省)
平面計画の考え方。中央の事務室部分には、フレキシブルな事務室空間を確保するために耐震壁などを配置せず、両端のコア部分にまとめた(資料:国土交通省)
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 軸組み構法の設計例の構造形式は、コア部分に構造用合板を用いた耐力壁を設け、事務室部分を6m×6mスパンのラーメン構造とした。LVL(単板積層材)ブレースなどを採用した案と比較し、規格材料を使ってコストを抑えられることなどを理由に選んだ。層間変形角は、準耐火建築物に求められる1/150以内を条件とし、構造用合板で耐力壁と床の剛性を割り増した。

軸組み構法の構造モデル。構造計算は3次元立体解析モデルによる応力解析に基づく(資料:国土交通省)
軸組み構法の構造モデル。構造計算は3次元立体解析モデルによる応力解析に基づく(資料:国土交通省)
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軸組み構法の床の水平剛性の検討イメージ(資料:国土交通省)
軸組み構法の床の水平剛性の検討イメージ(資料:国土交通省)
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 CLTパネル工法についても、軸組み構法の構造形式を踏襲し、コア部分に耐力壁を配置した。事務室のスパンが7mある部分には、CLTパネルの柱および集成材の梁を設けた。CLTパネルのサイズは、運搬や施工のしやすさなど生産性を考慮して約2m×約4mに。構造計算はルート3とした。

CLTパネル工法の接合部を、引張・圧縮ばね、せん断ばねによってモデル化したイメージ。接合部のばね配置は節点を離し、パネルゾーンと腰壁の間(CL1)を50mm、壁と壁の間(CL2)を100mmとした(資料:国土交通省)
CLTパネル工法の接合部を、引張・圧縮ばね、せん断ばねによってモデル化したイメージ。接合部のばね配置は節点を離し、パネルゾーンと腰壁の間(CL1)を50mm、壁と壁の間(CL2)を100mmとした(資料:国土交通省)
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