ワイドループ 中古物流機器を家具や床材に再利用
(埼の強み)
フリーマーケットアプリの台頭で活気づく中古品市場。インターネットで日用品や家電、自動車など幅広い中古品が簡単に手に入る時代が来た。こうしたリユース(再利用)のビジネスモデルを物流機器に導入し、市場を切り開いたのが、ワイドループ(さいたま市)だ。
物流施設で資材を運搬するコンベヤーやラック(棚)などの中古品を仕入れ、清掃・修理してウェブサイトで販売している。取り扱う商品は約1万点。品ぞろえの豊富さに加え、注文から1週間程度で出荷できるスピードを強みに利用者を増やしてきた。
古い物流施設を取り壊す際に大量の不用品が生まれる。物流機器の商社マンから2002年に起業した丹羽彦仁社長は「当時はスクラップ処理や廃棄が当たり前だった」と語る。起業当初は新品の機器を販売していたが、顧客から「安い中古品がほしい」との要望が寄せられ、現在のビジネスを発案した。
革新的なアイデアだけで成功できるほど開かれた市場ではない。機器に付いたサビや汚れなどをどのくらいきれいに除けば客に受け入れられるのか――。商社時代に培ったネットワークを頼りに試行錯誤を重ねた。外注していた修理もノウハウを確立し、今では群馬と大阪に構えたリユースセンターで、女性社員らがハンマーや溶接機で古い機器に新たな命を吹き込んでいる。
モノを大切にする循環型社会を実現したいとの思いから、16年に新事業に乗り出した。荷物を載せる木製パレットを家具や床材に再生する「パレットループ事業」だ。木製パレットは国内で年間4400万枚が廃棄処分されている。中古の需要は少なく、同社も長く顧客からの引き取りを断り続けていた。
しかし、木材を使って日曜大工をするテレビ番組を見て「パレットも加工すれば使える」と思いついた。工務店に協力してもらい、椅子やテーブルなどのインテリア商品を作製した。風雨にさらされ、使い古した木製パレットは絶妙な質感、味わいがあり、興味を示す顧客も増えてきた。
重い荷物を載せるパレットは耐久性に優れ、加工すれば用途は大きく広がる。床材や壁材として使用することで、落ち着いた雰囲気のカフェなどの演出にも役立つ。物流の現場から出た廃材を使って食堂や休憩室を造り、物流の職場環境をもっと良くしたい――。業容拡大の先に、こんな理想も掲げている。
(山口啓一)