日本を訪れる中国人観光客は、こっそりと日本の様々な慣習やマナーに感動している。『中国人は見ている。』を上梓したジャーナリストの中島恵氏が、彼らの「感動」の実態をレポートする。
JRで感動!
このところ訪日中国人観光客が年々増加していることは周知の通りだ。彼らは今や有名な観光地だけでなく、通好みのローカル線の駅舎や路地裏のカフェまで探して押し寄せている。SNSのおかげで、彼らは日本についてのあらゆる「情報」を入手できるようになったのだ。
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しかし、彼らが実際に日本を訪れ「体験」してみて初めて気がつくこともある。
訪日中国人が「これはすごい!」と口を揃える日本での“感動体験”の筆頭が、電車やバスなど、公共交通機関での体験だ。彼らのエピソードを聞いて、私は「そんなところに感動するのか!」と膝を打ち、目からウロコが落ちた。いったい彼らは何に感動しているのか。
「東京でJRの電車に乗ったときのことです」
と話すのは、上海在住で、東京に旅行にやってきた女性だ。
「その日は雨だったのですが、電車に乗ってすぐ、折りたたみ傘を丁寧にしまう人が多いのにびっくりしました。濡れた手で折り目に沿ってきちんと畳み、最後にボタンを留める。思わず一連の作業をまじまじと注視してしまいました。だって、中国ではそんなにきちんとした人はあんまりいないから……。
ほかにも、2~3歳の子どもが靴を脱いで座席に座り、くるっと窓のほうを向いて、お母さんと一緒に外を眺めているところを見ると、微笑ましくなりますね。上海市内は地下鉄しかないので、外の風景はほとんど見えません。日本人の鉄道マニアは、こういう小さいときの体験のなかでマニアとしての人生を始めているのかなと思っちゃいますね。こういうシーンも物珍しいので、やっぱりじーっと見てしまいます(笑)」