ソウル市が高齢者をIoTで見守る事業を本格開始...対象は約2000名

ロボティア編集部2018年5月9日(水曜日)

韓国・ソウル市は今年、一人暮らしの高齢者2100人を対象に、健康と安全をIoTで守る「一人暮らしの高齢者-安全・健康管理ソリューション事業(以下、高齢者IoT事業)」を実施する。

高齢者IoT事業の概要は、単身の高齢者の家に、人の動き、温度・湿度・照度、火災・ガス、安全を感知する「環境データ収集センサー機器」を設置し、福祉センターの担当スタッフにアプリから検出されたデータをリアルタイムで通知するというものだ。一定時間、気配が感知されなかったり、温度、湿度、照度などに異常が疑われる場合、担当スタッフがすぐに高齢者の家に駆けつけ、119番に通報するなど緊急措置をとる。

介護スタッフだけでなく、福祉センターや自治区掲示板などにも常に情報が通知され、二重に見守ることができる。家族や子供もアプリ画面で、安否の確認が取れる。高齢者の個人情報は、法令に基づき徹底して保護される。

これまでは、韓国の介護スタッフは、高齢者世帯に訪問したり、電話で安否確認をしてきたが、高齢者IoT事業が実施されれば、高齢者の活動の様子や健康状態を常に把握でき、危機的状況にも迅速に対応できるようになるはずだ。また、引きこもっている高齢者には、電話や訪問が難しかったが、健康・安全管理がより効率的に行えると期待されている。介護スタッフが、祝日、連休などで長期間にわたり持ち場を離れる際、アプリで安全確認が取れるのもメリットのひとつである。

ソウル市は昨年9つの自治区でモデル事業を進めた結果、実際に命の危険にさらされた高齢者2人を救うなど効果を得たことをふまえ、今年25の自治区に拡大して実施することにした。

ソウル市は昨年、全人口のうち65歳以上の割合が14%以上を占める高齢社会に突入し、単身の高齢者が増加しているなか、そのケアやサポートにもIoTやビッグデータを活用していこうと考えていると同事業の趣旨を説明している。またIoTで「認知症」「ひきこもり」「アルコール依存」「難聴」「貧困」など、高いリスクを抱えている一人暮らしの高齢者の生活サイクル・特徴などを把握し、そのデータを高齢者対策の基礎資料として活用する計画だとしている。

ビッグデータを活用すれば、猛暑・寒波など気候的な優先的に支援が必要な対象者の選定など、迅速なサービス提供も可能となる。ソウル市関係者は「世の中が高齢社会に突入し、今後一人暮らしの高齢者が施設や病院だけでなく、地域社会との関わりを持って生きていくことがますます重要になっている(中略)ソウル市は今後も、公共と民間、地域住民がともに生活密着型のケアサービスを提供し、高齢者が孤立しないよう細やかな社会安全ネットワークを構築して環境を作っていきたい」と述べた。

Photo by Lily.G.S