HQトリビア(HQ Trivia)は昨年、一大ブームを巻き起こした。同アプリで行われるトリビアゲームの賞金を求め、毎日何百万人という参加者が集まった。そんなHQトリビアの大ヒットを受けて次々と類似サービスが登場した。そしていま、多少出遅れた感があるもののテレビネットワークがこの流行に乗ろうとしている。
HQトリビア(HQ Trivia)は昨年、一大ブームを巻き起こした。同アプリで行われるトリビアゲームの賞金を求め、毎日何百万人という参加者が集まった。そんなHQトリビアの大ヒットを受けて次々に登場したのが、「キュー(The Q)」や「フリートウィット(FleetWit)」といった競合のライブトリビアアプリだ。あのアンダーアーマー(Under Armour)すらトリビアアプリを作った。そしていま、多少出遅れた感があるもののテレビネットワークがこの流行に乗ろうとしている。
米テレビ局ターナー・ブロードキャスティング・システム(TBS)で9月5日に放送された政治風刺番組「フル・フロンタル・ウィズ・サマンサ・ビー(Full Frontal with Samantha Bee)」で、サマンサ・ビー氏がマンハッタンのヘレン・ミルズ・シアター(Helen Mills Theater)で満員のゲストとともに新しいトリビアライブアプリの実演を行った。「ディス・イズ・ノット・ア・ゲーム:ザ・ゲーム(This is Not a Game: The Game.)」という名のこのアプリは、番組と同じく中間選挙と、人々に投票に行ってもらう(そしてもちろん同番組を見てもらう)ことをテーマとしている。
今回の試みについて、TBSおよびTNTの最高マーケティング責任者であるマイケル・エングルマン氏は「数年前には、正攻法のテレビCMによるファネルでカスタマーを十分に獲得できた。だが、いまではデジタルやソーシャル、ライブイベント、ゲームといった複数分野にわたって道を作らなければいけない」と語る。
Advertisement
また、FOXも8月にライブトリビアアプリ「FNジーニアス(FN Genius)」を発表している。同アプリはFOXのコメディドラマ「Rel」で主演を務めるジョーダン・L・ジョーンズ氏が紹介を行った。またプロジェクトの秘密保持契約により匿名だが、別のテレビネットワークの役員もまたHQの競合アプリ開発に積極的に取り組んでいることを明かした。
テレビ局のメリット
HQと同様、これらトリビアゲームはすべて1日のうち特定の時間帯にアプリにログインし、ライブゲームをプレイして賞品(大半は賞金)を獲得する形式だ。テレビネットワークにとっては番組の宣伝になるとともに、テレビネットワークにとっては貴重なファーストパーティデータも取得できる。たとえばTBSのゲームではFacebookまたはメールでのサインインを行う。またFOXのFNジーニアスでは電話番号を教えることで、次のゲームをアラートで通知できるようになっている。
メディアアドバイス企業クリエイティービーメディア(Creatv Media)のファウンダーであるピーター・キャシー氏は、各テレビネットワークのこの動きについて、「各局はこれまでも、流行に飛びつく移り気な若いオーディエンスにリーチするのに十分な大金を投資し、最新映画やテレビ番組を宣伝してきた。ならば自社の知的財産を活用して自社で行ったらどうか、というのが今回の試みだ。そうすれば少なくとも貴重な分析や情報が手に入る」と分析する。
業界がアドレサブルな広告モデルへと移行していくなかで、ファーストパーティデータの重要性は高まるばかりだ。ストリーミングサービスが台頭し、テレビ広告主はファーストパーティデータから視聴者の住所や収入、時間などに応じてターゲティングできるようになっている。
またゲームアプリを開発することで新しいスポンサーや広告枠の獲得にもつながる。HQはナイキ(Nike)やワーナー・ブラザース(Warner Bros.)といったブランドの獲得によって収益を伸ばしてきた。実際にはリリース時点で広告主はいないアプリが大半なのだが、たとえばFOXのFNジーニアスなどはすでにトゥイックス(Twix)と契約を結んでいる。
ブーム終焉の兆し
一方で障害も存在する。たとえば資金の問題だ。TBSの場合、ゲームごとに最大で5000ドル(約55万円)の賞金を支払わなければならない。「ブランド各社も、技術面およびリソース面で非常に負担が大きいことに気づくはずだ」と指摘するのは、デジタルエージェンシーのフルイド(Fluid)でクライアント戦略部門のシニアバイスプレジデントを務めるブリジット・ファーランド氏だ。
広告主からもライブトリビアアプリのブームは間もなく去るだろうという声があがっている。ファーランド氏もまた「私自身もHQトリビアを週に数回プレイしたが、すぐに熱はさめた。賞金による魅力はあるものの毎日プレイする人は減りつつある」と指摘する。
HQトリビアのダウンロード数とアプリストア上のランキングは実際に減少傾向だ。テッククランチ(TechCrunch)は最近、HQブームの終焉に関する記事を掲載した。アップアニー(App Annie)のランキング履歴によると、HQトリビアは2月に1位だったものの8月には585位となっている。HQトリビアは新機能によって参加者を増やそうと試みている。HQトリビアの共同創業者でありCEOのラス・ユスポフ氏は、Apple TVとの統合をはじめ、同アプリを新しいゲーム形式へと拡張する計画についてツイートしている。
Games are a hits business and don’t grow exponentially forever. HQ has massive early traction and still millions playing daily. Also developing new game formats, one of which we think is really special and complements Trivia nicely. More soon! Until then thanks for playing 🎮 https://t.co/wnAcztBuJU
— Rus (@rus) 2018年8月14日
ゲームはヒットビジネスであり、指数関数的に永遠に成長しない。HQは早期から大規模な牽引力を持ち、毎日何百万人にプレイされている。また、新しいゲームフォーマットを開発しているところだ。そのうちのひとつは、本当に特別で、トリビアをうまく補完するものだと思う。ローンチまであと少し! それまで遊んでもらえることに感謝する
キャシー氏は、同社の試みについて次のように述べた。「参入するのが多少遅かろうと、実験するのは良いことだ」。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:SI Japan)