ウェンディーズ(Wendy’s)はeコマースにおいて、モバイルデバイスからの注文機能を充実させることで、注文数の増加を実現している。店舗にデジタル注文のキオスクを設置し、「デジタル体験組織(digital e […]
ウェンディーズ(Wendy’s)はeコマースにおいて、モバイルデバイスからの注文機能を充実させることで、注文数の増加を実現している。店舗にデジタル注文のキオスクを設置し、「デジタル体験組織(digital experience organization)」という名前の部署のもと、社内でデジタルトランスフォーメーションを行うため、組織の再構成を進めている。
オンラインで商品を購入する習慣があるカスタマーに向けて、ファーストフード企業各社が競い合っているが、ウェンディーズはこうした取り組みによって、競争を優位に進めている。
同社のCEOのトッド・ペネガー氏は、8月第2週に行われた同社の業績報告のなかで、北米地域の売上の40%をデジタル配達プラットフォームによる売上が占め、第1四半期から25%増加したことを発表した。同社はサードパーティ製のアプリ、ドアダッシュ(DoorDash)を用いてアメリカ国内でのデジタル宅配サービスを実施しようとしている。ウェンディーズはほかにも、カナダでスキップザディッシーズ(SkipTheDishes)と同様のタイアップを行っている。
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「軍拡競争のようなもの」
アメリカの一部地域では、すでにドアダッシュのウェブサイトやアプリを使ってウェンディーズの注文ができるようになっている。さらに同社は今年後半までにドアダッシュの機能をアプリに統合し、さらにアメリカのほかの地域にもモバイル配達サービスを拡大させていく予定だ。昨年度で12億ドル(約1320億円)の収益を上げたウェンディーズは、モバイルデバイスからの注文、リワードプログラム、店舗でのデジタル注文ステーションの設置など、デジタルインターフェースの拡大に取り組んでいる。たとえば現在、ウェンディーズの店舗の60%にデジタル注文キオスクが設置されている。
「これはいわば(ファーストフード企業における)軍拡競争のようなもの」だと語るのは、レストランコンサルタント企業アーロン・アレン&アソシエイツ(Aaron Allen & Associates)のCEO、アーロン・アレン氏だ。「ファーストフード業界では、これまで技術に資金を注入してきた企業の投資が結実している。そして大規模な投資を行ってきた企業には新たな道が拓けている」。
ファーストフード企業にとって、デジタル宅配サービスはeコマースで商品を購入する習慣のある新たな顧客層の獲得につながる。オンライン注文はより高額な購入にも結びつくという。ペネガー氏によると、オンラインの平均注文金額は店舗での注文金額と比べて1.5倍から2倍に達するだけでなく、そうした高い金額の注文が繰り返し行われているという。
Amazonに対抗するため
デジタル宅配サービスによって、カスタマーの行動様式や好みについての情報も集めることもできる。ターゲティングによるプッシュ広告に活用できる情報だ。実際にウェンディーズはドアダッシュからデータを得ており、それに基づき「コントロールストア」を決定してテストを実施できるとしている。一方、ドアダッシュから実際に得ている情報の内容について同社は明かさなかった。業者の販売システムとの統合という形で、ドアダッシュはチポレ(Chipotle)やチーズケーキファクトリー(Cheesecake Factory)、チックフィレー(Chick-Fil-A)をはじめとする多数の有名なファーストフードブランドとのパートナー契約を結んでいる。
アレン氏は「レストラン各社がいちばん知りたい指標が何なのか、多数の宅配企業が把握につとめている。またデータとアナリティクスを活用することで注文の正確性と効率、速度が向上し、競争における差別化と優位性につながると見られており、それによる変化が起きつつある」と語る。
またアレン氏は、小売企業がデータ活用の最適化の試みをはじめて、まだ間もないが、Amazonが進出を続ける食品サービス業界において各企業が対抗するためには、こうしたデータがいずれ重要な役割を果たすだろう、と指摘する。
柔軟なパートナー関係
ウェンディーズはオンライン宅配サービスやモバイル宅配サービスにサードパーティの力を借りているが、こうした販売プラットフォームの先がけであるドミノ(Domino’s)はインハウスでカスタマーに関する学習機能をはじめとする技術開発を行った。サードパーティに委託する際の問題点は、カスタマーデータを保有するのが宅配企業になってしまい、依頼している企業がデータへのアクセスを交渉しなければならないという点だ。一方で、サードパーティの宅配企業に外注することで食品サービス企業が事業のコア分野に集中できるという声もある。
デジタルマーケティング企業Hコード(H Code)のCEO、パーカー・モース氏は次のように指摘している。「ファーストフード企業は(パートナー契約によって)宅配車両を減らすことでコストを削減し、さらに得意分野に集中できるようになる。モバイルファーストな現代社会では、ライバル他社と競争していくなかで、こうしたパートナー関係によって柔軟でリアルタイムな対応が可能になる」。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)