アングル:米株の強気相場いつ終わるか、転換点を占う12の指標

[ニューヨーク 25日 ロイター] - 記録的な長さとなった米国の景気拡大と米国株の強気相場はいつ終わり、下降期に入るのか──。エコノミストと投資家はその転換点を知るため、いくつかの指標を注視している。
全米経済研究所(NBER)によると、米国の景気拡大はあと1年で過去最長の10年(1991─2001年)を超える。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、米国株の強気相場は8月22日に過去最長を記録する可能性がある。
米景気の拡大は終盤に差し掛かっているが、景気後退は差し迫っていないというのが、多くのエコノミストやストラテジストの見方だ。
以下に景気の転換点を探る上で注目されている指標をまとめた。
(1)イールドカーブ
米国債で期間2年の利回りが10年を上回るイールドカーブの「逆イールド」現象は、これまで景気後退を占う指標として有用だった。ここ数カ月、イールドカーブはフラット化(2年と10年の差が縮小)している。
(2)政府短期証券のイールドカーブ
3カ月物米政府短期証券の現在の利回りと、1年半後の予想利回りの差に注目する方法もある。連邦準備理事会(FRB)高官らは、今後1年間の景気後退を占う上ではこちらのイールドカーブの方が有効だとみている。この指標は現在、景気後退リスクがほとんどないことを示している。
(3)失業率
直近2回の景気後退では、その直前か後退期のごく初期に、失業率と失業保険受給申請件数が上向きに転じた。失業率は5月に3.8%と18年ぶりの低水準を付けたが、6月には4%に上昇している。
(4)需給ギャップ
実際の国内総生産(GDP)成長率と潜在成長率の差は、直近2回の景気後退前に縮小した。オックスフォード・エコノミクスの米投資家サービス責任者、Kathy Bostjancic氏は5月に「現在われわれの推計では、需給ギャップはほぼ消滅しているが、過熱の領域には入っていない」と記している。
(5)株式市場
株価の下落は景気後退の接近、あるいは開始を告げることがある。2001年の景気後退の前に株価は下落し、08年の後退の初期には急落した。
12カ月平均ベースで見ると、米国株は直近2回の景気後退前に下落に転じている。この値は現在、2018年のピークを下回っているが、直近の最低値よりは高い。
(6)ブーム・バスト・バロメーター
ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏が考案した「ブーム・バスト・バロメーター」は、銅、鉄鋼、鉛のスクラップといった工業資材のスポット価格を計測し、それを失業保険受給申請件数で割った数値。これは直近2回の景気後退の前あるいはその最中に下落しており、現在は2018年のピークから下がっている。
(7)住宅市場
過去何回かの景気後退前には、住宅着工および着工許可件数が減少した。6月には両指数が2017年9月以来の低水準に減少している。
(8)増益率
S&P総合500種株価指数を構成する企業の増益率は、前回の景気後退前に落ち込んだ。増益率は今年わずかに鈍化し、来年はさらに下がる見通しだが、それでも1桁台後半から2桁台前半の水準を保つ見通しだ。
(9)韓国の輸出
韓国の輸出は、前回の景気後退中と前々回の景気後退前に減少した。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのマイケル・ハートネット最高投資責任者によると、これは景気先行指数となる傾向がある。
アジアの輸出軟化は世界および米国の経済成長の鈍化と足並みをそろえる傾向があるため、韓国と併せて中国の輸出も指標としての重要性が増している。
(10)高利回り債のスプレッド
高利回り債と米国債の利回りスプレッドは、前回の景気後退前に拡大し、その後劇的に開いた。
(11)投資適格級社債の利回り
投資適格級社債(格付けBaa)と米国債の利回りスプレッドは、1970年以来の7回の米景気後退のうち6回で、直前あるいはその最中に2%を超えた。ルートホールド・グループのジム・ポールセン最高投資ストラテジストによると、ムーディーズ・インベスターズ・サービスのデータに基づくこのスプレッドは今月2%に上昇している。
(12)悲惨指数
悲惨指数(ミザリー・インデックス)とは失業率とインフレ率の合計で、景気後退の最中、あるいはその前に上昇する傾向がある。今年はわずかに上昇したが、まだ比較的低い。
(Megan Davies記者)

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