「りっすんブログコンテスト2019」結果発表!どんな「迷いと決断」があった?

「りっすん」は、はてなブログと共同で、「りっすんブログコンテスト2019」を2019年5月16日(木)〜2019年6月5日(水)にかけて実施しました。

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ブログコンテストの開催は、2018年に引き続き2回目。今年の応募テーマは「#「迷い」と「決断」」でした。期間中、1,500件を超える投稿が寄せられました。たくさんのご応募ありがとうございます。

りっすん編集部と選考委員による厳正な選考を経て、大賞(1名)、優秀賞(3名)、アイデム賞(3名)が決定いたしました! 選考委員の皆さんのコメントと共に、発表してまいります。

選考委員の皆さま

(写真左から)能町みね子さん、児玉雨子さん、山田ルイ53世さん

20年前の迷いと決断/ちばっしー (id:tibassyi)さん

大賞に輝いたのは、ちばっしー (id:tibassyi)さんの「20年前の迷いと決断」。「守られない世界への憧れ」を自覚するきっかけとなったバイク便についてのエピソード、その後、自ら新しい一歩を踏み出すまでを赤裸々につづっています。

選考委員コメント

能町さん

「守られない世界への憧れ」は、比較的問題なく育ってきた人にとっては誰でも少しは思い当たることだと思います。どうしようもない状況から決断せざるをえなかったというわけではなく、それなりに恵まれた状況からあえて踏み切ったということに羨望すら感じました。

決断の大きなきっかけとなる、たまたまその日やりとりしただけのバイカーとの出会いの描写も、自動的に映像がイメージできてしまう鮮烈さで、全く異なる世界に魅力を感じる理由にも説得力がありました。


児玉さん

あらゆる誤解を恐れずに書けば、どうしても人間は「持てる者」と「持たざる者」に分けられます。そして、それでもすべてを投げうって「持てる者」が「持たざる者」(本文中だと「守られない側」)へ越境した、という体験談は他にもありました。

ではなぜこのブログが大賞に、と訊かれると論理的に答えるのは難しいです。ただ、バイク便の兄ちゃんの震える手が、筆者の受けた衝撃が、こちらの意識を掴んで離さなかったから……としか言いようがありません。肉迫してくる「守られない側」の描写がとても印象的でした。


山田ルイ53世さん

「守られない世界」という一言で、自分の“一発屋芸人としての日々”が頭を過り、少々気が滅入りましたが、それはともかく。

ちばっし―さんが会社を辞め、転職に至った動機は、正直、誰もが納得できるものではないでしょう。一方で、万人に同意されるような身の振り方は、その時点でもう「決断」とは呼べないのかなとも思う。

周囲の雑音を断ち、己の感覚のみを頼りに決める……そんな風に解釈するなら、最も純度の高い「決断」をしたのは、ちばっし―さんなのではないか、そう感じました。面白かったです。

串カツ 51年続いた串かつ屋をやめるにあたって/id:fiorentinaxさん

優秀賞一人目は、id:fiorentinaxさんの「51年続いた串かつ屋をやめるにあたって」です。両親が開業した串かつ屋を閉店するまでのことを振り返る中で、自分自身に起こった働き方やライフイベントの変化、また、その時々の葛藤や迷いも語られたエントリーです。

選考委員コメント

能町さん

まずタイトルだけで読みたくなりますよね。お店とご本人とご家族の激動の歴史が、非常にサラリとした淡泊すぎるほどの文体でスラスラ語られていて、なんだか面食らいました。たぶん、ふつうだったらもっとこってり書くと思うんですよね。誰かに読んでほしいというよりも、すべて一旦吐き出してみたいという思いを強く感じて、一息で話しきるかのような勢いにこちらも気圧されました。これを書いたこと自体が「決断」だったんじゃないでしょうか。読めてよかったです。


児玉さん

こんな言葉はないのですが「没読した」と表現したいです。社会情勢、結婚、離婚、新しい命、病、恋、死など、いわゆる重大な出来事を、脚色なく並べてゆく冷静さ。読み手というのは横暴なもので、他者の人生を物語化したくなってしまいます。

時には自分のことでさえドラマチックに演出してしまいがちなところ、この方は「いろいろあったけど、今はしあわせ!」といった安いカタルシスにも陥らない。読ませる文章というのは、こういうものなのですね。


山田ルイ53世さん

一つの串カツ屋の51年。そこに詰まった人間ドラマを堪能出来ました。これはもう、ブログの域を超え、“大河”、いや、「幸楽」と言っても過言ではありません。特に、3階建てのビルにしようとなった件(くだり)では、

「いやいや、調子に乗るな!」
「メニュー増やすのはやめとけ!」

と此方もハラハラドキドキ。

終始、頭の中で、「渡る世間は鬼ばかり」のテーマソングが流れていました。

ohmygaaさん 「3人のお母さん」を諦める/id:ohmygaaさん

優秀賞二人目は、id:ohmygaaさんの「「3人のお母さん」を諦める」です。「3人の子供のお母さんになりたい」という夢を持っていたohmygaaさん。2人目までは幸運なことに子供を授かったものの、3人目をなかなか授かることができない中での夫婦関係の変化、その中での迷い、見失いかけていた「自分」自身を見つめるということ。今ある幸せに気付くまでの葛藤が鮮明に描かれています。

選考委員コメント

能町さん

迷いと決断、のなかで特に「迷い」の丁寧な描写が心に残りました。前進するばかりが決断というわけではなく、時には「諦める」のも大きな決断であること、それは決して暗いものではなく前向きにとらえることもできること……。

題材が妊娠・出産なので似た経験のある人に刺さるのはもちろんのことですが、全く異分野のいろいろな場面についても有用なお話だったと思います。今回のテーマにいちばん合っていたように感じました。


児玉さん

まず、非常にセンシティヴなことを書かれた勇気に敬意を表します。他者にやすやす話せることではないし、ひょっとしたらこれを読んだ誰かを意図せず傷つけるかもしれない、しかし……と、この記事投稿そのものにコンテストのテーマである「迷いと決断」を見いだしました。

ものを書くこと、とりわけ自らの告白はかっこつけてしまいがちですが、そのようなポーズひとつ取らない切実な語りも素敵です。いち独身女性としても肝銘を受けたブログでした。


山田ルイ53世さん

妊活を鍼灸院に切り替えた理由として、「鍼ならば夫の同意書がいらないのもよかった」と最後にサラッと付け加えておられる。胸を締め付けられました。

「諦め方を探していた」という言葉には、深く頷きます。
「頑張れ!」、「キラキラ輝こう!」……今の世の中、なかなか諦めさせてくれません。

自分の可能性を「諦めてあげる」ということは、言葉のイメージとは裏腹に、人生を前に進める力になり得る。 改めて、そんなことを考えさせられました。貴重な体験を綴って頂いて有難うございます。

あと、テーマ的にそぐわない、不謹慎な寸評かもしれませんが、「泣ける文章」が上手い。テクニカルだなとの印象も受けました。これからも何かしら書いてみては。

ぐでぺんさん 金銭感覚が変わったあの日/ぐでぺん (id:gudepen)さん

優秀賞最後のお一人は、ぐでぺん (id:gudepen)さんの「金銭感覚が変わったあの日」です。「自分はお金をかける価値がない」と感じ、大人になって給料を何に使えばいいのか分からなかった、という遠因にもなった家族との関係のこと。金銭感覚が変わるきっかけとなったあるドリンクについて。その後、「自分のため」にお金を使うという決断をするまでのこと。前を向くことができてからの心境の変化……。決断をしてからの、ぐでぺんさんのポジティブな筆致が印象的なエントリーです。

選考委員コメント

能町さん

ジョア1つおごってもらうだけで感激して泣いてしまう、服1着に3,000円すら使うことができないーーそんな狭い、自分を意味もなく束縛する世界から抜け出せて本当によかった、と保護者のような気分になってしまいました。

狭い空間にずーっといると、自分が狭い空間にいるってこと自体に気づけないんですよね。決断にいちばん賛辞を送りたくなる文章でした。まだまだ若いんでしょうし、ぜひお金を貯めて10万円くらいの服を買ってみてください。


児玉さん

こう言ったら失礼ですが、起こった出来事の、(あくまで客観的な)重大さに限れば、とても些細な記事です。また同じようなテーマのブログも散見されました。だからこそ、それに頼らない素直な、さみしさと喜びに満ちた筆致がひときわ印象に残りました。

暗鬱で視野狭窄な冒頭から、心情の変化とともに視界が明るく開けてゆく構成や表現も美しいです。賞品のAmazonギフト券で何を買われるんでしょうか。ぜひそのブログも読んでみたくなりました。


山田ルイ53世さん

最初は、「妹や弟にはジュースを買い与えるのに私には……」とか、「(職場の)先輩がジョアを買ってくれた」など、主にジュースに対する執着しか描かれておらず、

「いや、しょうもないな―!!」(芸人的には、誉め言葉です)
とニヤニヤしていましたが、最終的には、『シンデレラ』顔負けの、童話のような読後感。
これはメルヘンです。

作者にとってのガラスの靴は、ジョアの白ブドウ味。そんなもので(いや、申し訳ない)南国気分に浸っていた女の子が、「100万円の歯列矯正」、「美容院」、「一人旅」と華麗にステップアップし、解き放たれていく姿に、不覚にも涙してしまいました。
やはり、ジュースではなく、ジョアと明記したこの方のセンスが秀逸。
ジュースとジョアでは“フリ”の効き方が全く変わってきます。
この場合、勿論、ジョアの方が……いや、ジョアジョアすいません。とにかく、面白かったです。

全人類さん 「できること」と「したいこと」の対立ではなくて/全人類 (id:zen-jinrui)さん
massarassaさん この世界線を選んでよかった/id:massarassaさん
フミコフミオさん あの夏、ダメになりかけていた僕は迷うことを決めた。/フミコフミオ (id:Delete_All)さん

アイデム賞には、全人類 (id:zen-jinrui)さんの「「できること」と「したいこと」の対立ではなくて」、id:massarassaさんの「この世界線を選んでよかった」、フミコフミオ (id:Delete_All)さんの「あの夏、ダメになりかけていた僕は迷うことを決めた。」が選ばれました!

アイデム「りっすん」担当者コメント

アイデムさん

今年で2回目になるりっすんブログコンテストですが、昨年を大幅に上回るご応募をいただき、たくさんの「迷いと決断」のエピソードをお寄せいただきました。ありがとうございます。

アイデム賞は、アイデム社員による投票にて、3作品を選ばせていただきました。

『「できること」と「したいこと」の対立ではなくて』では、「できること」だった大学院での研究をやめ、「したいこと」である接客業を選択したエピソードがエモーショナルに綴られています。今後何かに迷った時に何度でも読み返しなくなるような…背中をそっと押してくれるようなエントリです。

『この世界線を選んでよかった』では、父親になることの戸惑いと喜びが率直にいきいきと綴られている点が高く評価されました。気持ちの良い風が吹き抜けていくような、爽やかな読後感が魅力的です。

『あの夏、ダメになりかけていた僕は迷うことを決めた。』では、会社を辞めた30才の「僕」に自分自身を重ねたと共感を呼びました。迷いと決断を繰り返しながら生きていくことこそが人生で、迷うことは恥ずかしいことでも間違ったことでもないのだ、と改めて気づかせてくれたように思います。

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受賞者の皆さま、おめでとうございます! 大賞には賞金20万円を、優秀賞にはAmazonギフト券5万円分を、アイデム賞にはJTB旅行券5万円分をプレゼントします。

※受賞者の皆さまには、りっすんの制作協力を行っている株式会社はてなより、別途メールをお送りします。はてなの登録メールアドレスのご確認をお願いします。

最後に

たくさんの「迷いと決断」のエピソードを読ませていただくにつれ、迷いが深ければ深いほど、葛藤をすればするほど、迷って決断したエピソードそのものがその人の生きる糧となり、強さになり、心の豊かさにつながっていくのだと感じることができました。そしてこのブログコンテストを通じて、迷うことも決断することも恐れず、前に進んでいく勇気をいただいたような気がします。
 
人々の心に寄り添い、気分を転換させ、ほっと深呼吸ができるメディアを目指し、精進してまいりますので、今後とも「りっすん」をどうぞよろしくお願いいたします。


アイデム りっすん担当


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