落ち着いて対策を考えよう。
暗号通貨で使われていることでも有名なブロックチェーン。台帳管理や取引の認証を、特定の管理者やサーバーではなくユーザーが分散して記録・承認することで成立し、安全性を保っているということになっています。
しかし、科学者たちは最近急速に成長を遂げている量子コンピューターが近い将来その仕組みを壊す能力を得るかもしれず、ブロックチェーンの安全が脅かされると警鐘を鳴らしているのだとか。
この話を紹介した米Gizmodo記事内でのインタビューに対し、アメリカのオックスフォード大学の実験物理学者アレキサンダー・ルヴォルスキはこのように語っています。
公開鍵暗号方式を使うセキュリティであればどんなものでも量子コンピューターが驚異となりますが、特に危ないのはブロックチェーンです。
例えば銀行では、人間の出納係やキャッシュカード、ATMなどがありますが、ブロックチェーンは完全な匿名制で、それを守るのは公開鍵暗号だけです。銀行を使うには人間でないと無理ですが、ブロックチェーンを使うのは人間じゃなくてもいいんですよ
従来のコンピューターは巨大な素数の掛け算することは一瞬でできますが、その巨大な数字を正しい情報なしに素因数分解するのには時間がかかるもの。公開鍵暗号方式を使う電子署名は簡単に言うとそれを活かして、「コンピューターで作り出すのは簡単だけど解読するのは難しい暗号」を作り出しているのです。
しかし、量子コンピューターはAIが作れたり、化学相互作用をモデル化したりするだけじゃなく、従来のコンピューターとは比べ物にならない速さで素因数分解ができてしまう可能性があるとされているので、そうなった場合、現状の暗号化技術は使い物にならなくなってしまうのだとか。
手遅れになる前に次世代の暗号化技術を
量子コンピューターは急速に成長し、その量子コンピューターに使われるアルゴリズムも発展していて、10年以内には暗号を解読してしまうのではないかという話もあるようですが、量子コンピューターのスタートアップ企業EeroQ Quantum Hardwareの社長ニック・ファリーナは米Gizmodoにこう語っています。
ファリーナ「暗号化技術の脅威となる(量子演算の)アルゴリズムは急速に成長しているものの、現在のハードウェアと同じく、成熟しきってはいません。今できることとしては、とにかくパニックを起こさず、量子演算におけるハードウェアとアルゴリズムの両側面の発展を見守りながら、量子コンピューター実用化後のセキュリティにちょっとだけ早く目を向け始めることです」
また量子コンピューター「IBM Q」を開発するIBM基礎研究所の副所長ロバート・ストールも米Gizmodoにこう語っています。
ストール「次世代の暗号化技術に今のうちに投資しておいたほうが賢いというのが大方の意見です。あらゆる組織のサイバーセキュリティやデータ保護の部門ではそれが当たり前であるべきだと思いますよ」
実際のところ、量子コンピューターの登場に耐えうる暗号としてポスト量子暗号なるものが研究されており、そのうち量子通信も発展して量子インターネットが登場すれば、それらを応用した新たな暗号化技術が登場する可能性もあります。
というわけで、量子コンピューターがまだ実用化されるまでにどれだけかかるか不明な以上、心配しすぎてもしょうがないが、準備をするに越したことはないという感じ。
量子コンピューターが普及したら、量子スマートフォンにはじまり果ては量子電子レンジ(量子演算で最適な温度・時間を導き出して温めてくれるレンジ)なんかも登場する量子社会になって、迫り来る量子ハッカーや量子トロイの木馬の脅威に対抗するため量子セキュリティソフトを入れなきゃならない……そんな未来に備えて我々もちょっとばかし知識を仕入れて準備をしておきましょう!