荒木飛呂彦:「ジョジョ」原画展インタビュー マンガへの思い語る 悪役ディオには「憧れがある」

「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」発表会後に取材に応じた荒木飛呂彦さん
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「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」発表会後に取材に応じた荒木飛呂彦さん

 「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズで知られるマンガ家・荒木飛呂彦さんが21日、国立新美術館(東京都港区)で開かれた「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」の発表会後に取材に応じた。「ジョジョの奇妙な冒険」は、1986年にマンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載が始まった人気マンガで、数世代にわたる個性的な悪人たちとの戦いを描いた壮大なストーリーや独特の擬音を用いた表現、立ちポーズが人気を博しており、海外での評価も高い。荒木さんに、原画展への意気込みや「ジョジョの奇妙な冒険」への思い、10月から放送予定のアニメ新シーズンについて聞いた。

ウナギノボリ

 ◇原画展はライブ

 ――原画展を読者に見てもらう意味とは?

 マンガは通常印刷されたものを見る形のため、直筆で描いた原画とは違うものだと思っています。音楽でいうなら、原画はライブです。そのエネルギーの違う点を感じ取っていただきたい。印刷と原画を比べると、同じキャラクターでも違うと感じると思いますし、原画の色は厳密には印刷では出ないのです。「色が(正確に)出ない」と出版社に文句を言うのもあきらめているので(笑い)、こういう機会はうれしいですね。

 ――原画展のコンセプトは?

 敵と味方のキャラクターが、同じ場所に存在していることが重要だと思っています。キャラクターと空間を共有する感覚を楽しんでほしい。それを目的に(等身大になるよう、長辺)2メートルの大型原画を描きました。

 ――原画展の東京と大阪の2枚のキービジュアルは、3部の主人公の空条承太郎と1・3部の宿敵ディオですが、どうやって決めたんですか。

 2枚ということだったので、まず風神雷神の画(え)が浮かびました。“両巨頭”の画を描くにあたり、初代(ジョナサン・ジョースター)でもよかったのですが、以前に富士山をバックに、何枚か承太郎を描いたことがあったんです。また(ディオのバックに描いた)月や(承太郎のバックの)富士山という普遍的なもの、背景もほしかったんです。

 ――大阪のビジュアルは月が黄緑だったり、独特の色遣いですね。

 色は実際に作って、試験管で色を見るなどして、色を合っているかを見てから塗るんです。見る人の心に来るかな?とか考えています。

 ――原画展では他のクリエーターとのコラボもあります。

 クリエーターのコンセプトがあり、感じるものを出してほしいので、僕の方から何も言ってないです。今は制作中のようで、出来上がってくるのを楽しみにしています。ジョジョの違う魅力を完成度高く描いてほしいと期待しています。

 ◇編集者とはバトルの積み重ね

 ――マンガを描くとき、作品作りの過程で編集者とバトルはありますか。

 バトルは……ありますよ(笑い)。ジョジョは「超能力をどうやって画にするか」から始まったマンガなんです。「(シリーズの)2部で、そろそろ波紋をやめようか」と担当者から言われて、プレッシャーがあったんです。やめたら連載が終わっちゃうじゃないですか。そこで追い詰められて生まれたのが(新超能力の)スタンドです。

 ――今だから明かせるエピソードは?

 「バリ」という描き文字があって、その「バ」の文字が(マンガのキャラクターの)顔にかかって、編集から「この書き文字が『バ』に見えない』と言われたことがあります。そこから直すとなると、全部顔を描き直さなくちゃいけなくなる。そこは「バ」に見えるでしょ? そんなに重要じゃないでしょ、と。そういうバトルの積み重ねです。こまかいんですよ(笑い)。

 ――ジョジョといえばポージングも話題ですが、どうやって考えるんですか。

 古代ローマ時代のポージングだったり、実際に不可能なポーズを研究していますね。それを考えることが面白くて。ヨガも見たり、やったりします。そしてポーズは、描くときに何となく想像できるんです。できないポーズにこそ、そこにファンタジーがあるので、追求しているんです。

 ――描き続けて30年。自身の画の変化は?

 ありますね。昔の画は未熟だったりするので、直したくなります。今だったらこう描くというのはあるんですが、当時の“日記”みたいなものなので、あえて直したいのをこらえるというか……。

 ――荒木さんにとって「ジョジョ」とは?

 ストーリーの善悪よりも、キャラクターを描くことですね。本当に存在しているように描きたい。だから僕はディオには憧れていて、実は悪役が本当のことを言っているのかな?と思ったりします。要は「きれいごとをぬぐい去ったら、俺の言っていることが正しいだろう?」という感じです。それを考え付くのは、事件が起きたとき。世の中の矛盾、おかしいと思うところから来ているのではないかと思います。

 ◇アニメとマンガは「当然違ってくる」

 ――10月から5部「黄金の風」がアニメ化されます。荒木さん自身、アニメのイメージは?

 パワーアップしていて、細部までこだわっているものですね。マンガとは当然違ってくるとは思うので、同じ、違うというのはこだわっていません。ただアニメの制作者からよく聞かれるのは「承太郎は何色ですか?」「ジョルノの頭は何色ですか?」ということですね。いやあ(色は)いっぱいあるので……。だから(アニメの制作者がどんな色にするか聞いてくることが)新鮮だし、そこは(自分では)こだわってないので……。世界観を統一していただければ、大丈夫です。

 ――アニメに期待していることは?

 5部は、主人公が約6人いるのですが、チームの完成度とファッションですね。音楽も期待しています。

 <プロフィル>

 あらき・ひろひこ 1960年生まれ、仙台市出身。1980年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)の第20回「手塚賞」に「武装ポーカー」で準入選してデビュー。1986年から連載を始めた「ジョジョの奇妙な冒険」が人気となり、コミックスの累計発行部数は1億部以上に達した。現在は「ウルトラジャンプ」(同)でシリーズ第8部の「ジョジョリオン」を連載している。

 *「荒木飛呂彦原画展」は荒木さんが描き下ろした縦2メートルの原画12枚などを展示する。東京は国立新美術館で8月24日~10月1日に開催される。大阪でも11月25日~2019年1月14日に大阪文化館・天保山(大阪市港区)で開催予定。

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