「人と恐竜は共存できる」科学的で確かな理由

恐竜を復活できる? すると何が起きる? 科学者に聞いてみた

2018.07.13
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ドイツ、ベルリンの国立自然史博物館で、ティラノサウルスの骨格を見る人々。トリスタンと名づけられたこの標本は、最も保存状態の良い大型恐竜の骨格のひとつだ。(PHOTOGRAPH BY SEAN GALLUP, GETTY IMAGES)
ドイツ、ベルリンの国立自然史博物館で、ティラノサウルスの骨格を見る人々。トリスタンと名づけられたこの標本は、最も保存状態の良い大型恐竜の骨格のひとつだ。(PHOTOGRAPH BY SEAN GALLUP, GETTY IMAGES)
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 このたび公開される映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』で、人はある道徳的なジレンマに直面する。孤島に閉じ込められた恐竜が、火山噴火によって絶滅の危機にさらされたとき、科学の力で恐竜を救うのか? それとも、再び絶滅させるのか?

 その前に、そもそも恐竜をよみがえらせることなど本当に可能なのだろうか? もし可能だとしたら、私たちは古代の動物と地球を共有することになる。すると、いったい何が起きるのだろう? 科学者たちに話を聞いてみた。

6600万年前のDNAを採取できるか

「ジュラシック・パーク」シリーズでは、科学者たちが琥珀に閉じ込められた蚊から、恐竜のDNAを採取する。現実の世界でも、昆虫などの無脊椎動物が琥珀の中から大量に発見されている。その一例が、白亜紀に生きていた吸血性のダニだ。

 だが、1993年にシリーズ1作目が公開されたときから比べると、科学は進歩し、現在はフィクションの一歩先を行っている。2016年後半、恐竜の尾が琥珀の中から発見されたのだ。しかも、極めて保存状態が良く、羽毛や皮膚も残されていた。(参考記事:「最新映画の恐竜は時代遅れ、専門家指摘」

 ただし、たとえ琥珀の中から化石化した恐竜の一部が発見されたり、有機物の痕跡がわかる恐竜の化石がほかに見つかったりしても、無傷のDNAが出てくる可能性は残念ながらほとんどない。

 小惑星が地球に衝突し、大量絶滅が起きたのは6600万年前。DNAはこれほど長く残らないと今のところ考えられている。

「化石記録に残っている最古のDNAは約100万年前のものです。そのため、ジュラシック・パークのようにDNAから恐竜を再生するのは不可能です」と、大英自然史博物館の古生物学者スージー・メイドメント氏は話す。

 しかしながら、メイドメント氏は次のように補足した。「タンパク質などの軟組織に関しては、もっと古い証拠がどんどん見つかっています。そのため、恐竜の化石からDNAを採取するのは完全に不可能だと言い切れないと思います」

【関連ギャラリー】奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点(写真クリックでギャラリーページへ)
【関連ギャラリー】奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点(写真クリックでギャラリーページへ)
公開されたノドサウルス類の新種恐竜の頭部右側。タイル状の骨が特徴的だ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC)

『The Rise and Fall of the Dinosaurs(恐竜の栄枯盛衰)』の著者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーのスティーブ・ブルサット氏によれば、ジュラシック・パークが公開されてからの25年間、世界中の古生物学者が恐竜のDNAを探し続けているという。

「もし最初に発見したら、将来が約束されます。そのため、皆が必死に探していますが、クローンの作成に必要な完全なゲノム、完全に近いゲノムはもちろん、DNAの断片すら見つかっていません」

「DNAは分解が早いため、たとえ100年しかたっていなくても、無意味な断片に分かれてしまいます」と英ブリストル大学の古生物学者マイク・ベントン氏は話す。「これらの断片をつなぎ合わせるには、とんでもない技術を必要とします。つまり、誰かが恐竜のDNAを発見しないかぎり、私たちは何もできません」

次ページ:飛躍的に進歩する遺伝子技術

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