直接InDesign(Adobe SystemsのDTPソフト)に入力すると、そのまま初校になるんです。それを校閲の方がチェックする。戻ってきた赤字や疑問点を参照し、僕がデータに手を入れ、同時に著者校までしてしまえば、そのデータが再校になるんです。これでかなりの工程を省略できる。ワークフローの簡略化により業務のリストラができるわけです。

 編集者も、入稿の際の作業や、赤字を転記したりする雑事がなくなる。そうすれば編集者本来の仕事ができますね。作品をきちんと吟味し、売り方見せ方を考えられます。そういうシステムを使うことで、職分をきちんとわきまえて、より良い製品をエンドユーザーに提供できるかもしれないわけでしょう。

マンガにおける「時間の流れ」

 絵本と絵物語、挿絵のある小説は、いずれも絵と文章で成立するものですが、創られ方も読み方もまったく違うものです。マンガも同様ですが、マンガの場合も見せ方にやはり大きな違いがあります。ということで、マンガをいくつか見てもらいましょう。

 最初は日本マンガ界の父、田河水泡先生の『のらくろ上等兵』の1ページです。よく見ると、背景が動いていませんね。ラストのカットで若干視点がずれている以外、全部同じ。舞台劇なんです。一つのコマの滞在時間は中にある吹き出しの文字を読む時間です。吹き出しを読み終わったら次のコマに行く。つまりコマとコマの間の時間はない。コマの中で一定の時間が流れるが、コマとコマの間の枠線の外の時間はゼロ。そういう構造になっています。

 次はマンガの神様、手塚治虫先生の『W3(ワンダースリー)』の1ページです。絵自体は止まっていますが、コマの流れと絵のつながりで、動いて見える。コマとコマの間に時間が流れているんです。ページの構成で、読者が物語を読み進める時間をコントロールしています。