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先発か抑えか 「最高の投手」に任せるべきは…

野球データアナリスト 岡田友輔

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先発投手に続き、今回は救援投手にスポットを当てたい。昨季のソフトバンクは六回終了時にリードしていれば76勝3敗という盤石のブルペンを誇り、日本一に輝いた。ところがプロ野球新記録の54セーブを挙げ、最優秀選手にも選ばれた抑えのデニス・サファテらが離脱している今季は強さが影を潜めている。一方、昨季最下位に沈んだヤクルトは先日の交流戦でリリーフ陣が奮闘し、最高勝率を獲得した。昨今の野球ではブルペンがチームの浮沈を左右する。野球の統計学「セイバーメトリクス」では救援投手をどのように評価するのか。その概要を紹介したい。

基本的な手法は先発投手と変わらない。詳しくは前回の6月3日付「安打は投手の責任か 防御率では測れぬ能力」を参照いただきたいが、野手が介在しない部分だけを投手の責任範囲として定義したうえで、球場の広さや守備のレベル、ツキなどのノイズを極力排除した理論上の失点率「tRA(true Runs Average)」が投手としての能力を示す。三振が取れて四球が少なく、ゴロの比率が高いほどtRAは優れた数値となる。とはいえ、先発とリリーフでは投げるイニング数も求められる役割も違う。そこをどのように評価すればいいか。先人たちは様々な工夫を凝らしてきた。

救援の役割や難易度、局面で変化

長いイニングを最少失点でまとめることが求められる先発に対し、リリーフの役割や難易度は局面ごとに大きく変わる。同じセーブがつく九回のマウンドでも3点差なら2失点でも構わないが、1点差ならゼロでなければ失敗だ。1点リードの九回2死満塁で取る1つのアウトには、敗戦処理で複数イニングをゼロに抑える以上の価値がある。リードを守れなかった抑え投手にサヨナラ勝ちで白星がつくこともあるが、これは素直に喜べない。勝ち星やホールド数、セーブ数だけで救援投手の価値を測れないのはいうまでもないだろう。

そこで役に立つのが「RE24(Run Expectancy based on the 24base-out states)」と呼ばれる指標だ。アウトカウントと走者の状況に応じた「得点期待値」を踏まえ、投手が潜在的な失点をどれだけ防いだかを示す。たとえば、日本のプロ野球における2014~16年のデータに基づくと「無死走者なし」から回の終わりまでに入った得点の平均は0.441だった。これを「得点期待値」と呼ぶ。毎年、似たような値に落ち着く。

イニングのアタマから登板した投手が1イニングを無失点に抑えた場合、その投手は0.441点を防いだことになる。逆に1失点してしまうと、期待値との差分の-0.559がRE24として計上される。無死満塁で登板して抑えたときのRE24は2.079だ。この物差しで17年の救援投手を測るとトップはサファテ。66登板で20.1点を防いだ。それに次ぐのがソフトバンクの八回を担った岩崎翔と中崎翔太(広島)の17.7だった。

ここにイニングや点差の要素を加えた「勝利への貢献度」という視点からの評価も可能だ。「WPA(Win Probability Added)」と呼ばれる指標で、登板した状況からマウンドを降りるまでに、自軍の勝利の確率をどれだけ増減させたかを測る。

たとえば1点リードの九回裏、無死走者なしで登板した抑え投手のチームの勝利確率は0.818(81.8%)だ。ここから無失点で試合を終わらせた場合、勝利を意味する「1」から0.818を引いた0.182がこの投手の勝利への貢献度となる。反対に1点リードからの逆転サヨナラ負けなら、勝利確率をゼロにしてしまったわけだから、-0.818となる。九回裏無死満塁で登板して1点リードを守り切った場合のWPAは0.686になる半面、無死走者なしの3点差から逃げ切っても0.036にしかならない。場面の重要性が反映されているのがわかるだろう。

WPAで救援投手を測ってもトップはサファテで4.953。終盤のアウト1つは試合の前半以上に勝利に直結しやすいため、WPAの上昇度でも「レバレッジ」が利く。抑え投手の数字は上がりやすいものだが、33セーブを挙げた次点の松井裕樹(楽天)は2.93。サファテの数値が別次元なのは、僅差での登板がそれだけ多かったことを物語っている。

サファテ、1人で10勝分の貢献度

WPAは0.5をもって1勝分の貢献度となるから、サファテは1人で約10勝分をもたらしたことになる。WPA2.743を記録した岩崎とそろって不在の今季、ソフトバンクが苦労しているのも無理はない。なお、今季は増井浩俊(2.758)、山本由伸(2.064)のオリックス勢がWPA上位につけ、RA24では2人を抑えてロッテの松永昂大(13.5)がトップに立っている(7月4日終了時点)。

ブルペンの重要性が増している昨今、投手の役割分担はどうあるべきだろうか。勝利に近づくための投手の配置を考えてみよう。

チームで最も優れた投手は先発と抑え、どちらをすべきか。本人の希望や適性を横におき、セイバーの視点に立った一般論からいえば、これは先発をする方が理にかなっている。理由は明白だ。どんな好投手でも、抑えとして力を発揮するにはチームメートに終盤までリードした場面をつくってもらわなければならない。つまり、抑え投手はお膳立てがなければ仕事ができず、1人でチームを勝たせることはできない。一方、プレーボールから試合をつくっていく先発は、ほぼ1人でチームを勝利に導くことも可能だ。昨季、沢村賞を獲得した菅野智之(巨人)のWPAは5.54とサファテよりも上だった。

実は、ブルペンで最高の投手を抑えに使うのが合理的かどうかも、一概にはいえない。なぜなら試合のヤマ場は七、八回あたりにくることも多く、九回には既に大勢が決していることも少なくないからだ。1番手を抑えとして九回に固定してしまうと、最も大事な場面で切り札を投入する柔軟性を欠くことになる。ブルペンで最も安定感のあるスコット・マシソンを抑えでなくセットアッパーとして柔軟に使ってきた巨人の戦術には、実はかなりの合理性がある。あるいは、かつての阪神で一時代を築いた「JFK」を思い出してほしい。抑えは藤川球児のイメージが強いかもしれないが、当初はジェフ・ウィリアムスと藤川球児を臨機応変に使いながら、九回は3番手の久保田智之が担った。

しかし先発、抑え、中継ぎといった序列もいずれは大して意味をなさなくなるのかもしれない。今年5月、米大リーグのレイズは2試合続けてリリーフ投手に初回を投げさせ、本来の先発投手を二回からマウンドに上げた。手ごわい上位打線に立ち向かう初回は緊張感のある場面で投げ慣れているリリーフで切り抜け、"先発"には打線が下位に向かい、負荷が減る二回から長いイニングを投げてもらおうという意図だ。

結果は1勝1敗だったが、個人的には感慨深いものがあった。実はこの戦術、13年に「Beyond the Box Score」というセイバーメトリクスの分析サイトで提唱されたもの。セイバーの誕生から米大リーグで市民権を得るまでには約30年を要した。それがいまでは5年で採用される。セイバーも遠くまできたものである。

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