日本サッカー協会の不都合な真実   赤牛にのったマーケットマン

以前2つの予言を書きましたが、一つはほぼ外れました。青山選手の怪我の影響か、テストの結果が良くなかったのか、森保式5バックは今のところ封印されたままです。いい判断だと思います。

ただNHKのワールドカップ中継を見ていると、ロシア・ワールドカップはやはりオリンピック世代推しなんだなというのがひしひしと伝わってきます。ワールドカップとオリンピックを同時に宣伝していきたいという日本サッカー協会の意図を組んで動いているのが、公共放送であるNHKというのもなんとも面白い現象です。

さて今回は、ハリルホジッチ解任についての残された課題に対して、また新しい見方を提案したいと思っています。本稿で明らかにしたいのは、以下の事柄です。

(1)田嶋会長はなぜあのタイミングで解任を行ったのか?

(2)「デンツウガー」「アディダスガー」という単純な陰謀論から離れて、どんな圧力が、日本サッカー協会にかかり、田嶋会長はあのような意思決定を行ったのかについても、できる限り明らかにしたいと思います。

かなり長くわかりにくい文章ですが、最後まで読んでいただけるとありがたいです。
(時間のない人や面倒な人は9から読んでください。)

1.なぜあの日、4月9日に監督解任が発表されたのか?

ハリルホジッチ氏はロシアワールドカップ後の退任を表明していました。たとえ会長が気に入らない監督でも2か月後にはさよならできるのに、JFAはお金を払ってまで首を切った。ワールドカップで勝ちたいので解任したと会長自身は会見で語りましたが、内容はだいぶ意味不明でした。


信頼やコミュニケーションが「なくなった」あるいは「問題化した」などの表現ならまだしも、『多少』薄れたなどという理由で、大事なワールドカップ本番2か月前に監督を解任するのは、いくらなんでもおかしな話です。手腕が疑問だというなら別ですが。

アギーレ監督の後任を探しているときに、原専務理事は監督の条件として5つのガイドラインを挙げていました。

A UEFAチャンピオンズリーグでの采配経験
B 代表監督経験は不問
C アジアの戦いは軽視しない
D 育成年代含めた課題である決定力のアップを図ること
E ACLの采配経験

CとDは就任後の課題です。なのでハリルホジッチ監督の評価基準として使うことは可能です。この2つの基準に基づいてハリルホジッチ監督の手腕に問題ありとして解任できるのに、なぜ「コミュニケーションや信頼関係」などといった曖昧な基準で解任しなければならなかったのか。この判断についての考察は既に書きました。


東京オリンピック圧力とスポーツ庁長官への野心が田嶋会長を動かしたという説です。

ハリルホジッチ解任の裏側にあるもの|Gori_Kong|note(ノート) https://note.mu/gori_kong2018/n/ne55c9dee0719

ただ残されている問題もあります。「時期」の問題です。もっと早く首を切ることも、さらに進んで(後任を西野監督にする予定なのであれば)ワールドカップ期間中でも監督交代をすることは可能でした。ただあのタイミングで解任が行われたのには、なんらかの理由があったからだと思います。

私はジャーナリストではありません。特殊な情報源をもっているわけでもありません。ただ表に出ている情報からの推論という形で、この「時期」と「圧力」の問題について迫りたいと思います。

2.赤牛にのったマーケットマン

2018年5月14日、「地域の指導者を主体としたスポーツエコシステム構築推進事業」(地域スポーツ資源活用モデル形成支援事業)の選定先がスポーツ庁から公表されました。

一社は株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所。

もう一社は、Now Do株式会社というあまり聞きなれない会社です。

スポーツマッチングサービス「Now Do (ナウ ドゥ)」への参画 | 2018年 | KDDI株式会社 http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/04/05/3060.html


Now Do株式会社は2017年9月14日に設立されたかなり新しい会社。資本金は1,000万円。代表取締役を務めるのはサッカー日本代表(2018年6月記)の本田圭佑氏です。
Now Do株式会社と共同運営を行うのは、スポーツメディア「SPORTS BULL(スポーツブル)」を運営する株式会社運動通信社です。スポーツブルは野球の中田翔、サッカー日本代表(2018年6月記)香川真司選手のCMでもおなじみだと思います。
株式会社運動通信社は、2016年11月10日に、株式会社朝日新聞社、KDDI株式会社、株式会社ABCフロンティアホールディングスからの出資を受け入れ、急成長している会社でもあります。

KDDIというと2016年08月25日から日本代表サポーティングカンパニーとなっており、田嶋会長・岩上事務局長(現副会長)体制一期目から新規参入したサポート企業です。

なぜ単なるスポーツ庁の一施策をここで取り上げたかというと、Now Do株式会社の設立された2017年9月14日という日付が気になったからです。

この前日、日本スポーツ界に大きな影響を与える一大スキャンダルが発覚しました。スポーツ界だけでなく、日本の政局にも大きな影響を与えるインパクトのある報道、東京オリンピックスキャンダルです。


3.2017年9月13日、東京オリンピックスキャンダル再報道

Now Do株式会社が設立される前日、9月13日付のイギリスの新聞社「ガーディアン」で、2016年リオデジャネイロオリンピックと2020年東京オリンピックの開催地決定に際して不正があったという報道がなされました。

以下はAFP記者のアンドレ・バンビーノ氏のコメント。
「元々、今回の疑惑はフランス検察が国際陸連(IAAF)の大規模汚職を捜査する過程で明らかになりました。東京五輪開催が決まった'13年当時、国際オリンピック委員会(IOC)委員でIAAF会長だったラミン・ディアク氏の息子が、日本と熾烈な招致争いを繰り広げたトルコの関係者に、『トルコはカネを払わなかったため、LD(ラミン・ディアク)の支持を失った。日本はきちんと支払ったのに』と語っていたことがわかったのです」
「検察が躍起になって調査しているのは、フランス国内で日本の裏金が使われた可能性があるからです。というのも、最近になり、パパマッサタが日本からカネを受け取った直後に、パリの宝飾店で高級時計や宝石を購入していたことがわかったのです。これは、フランスでは『国内での資金洗浄』に当たる犯罪行為。だからこそ、フランス検察は徹底的に事実関係を明らかにする構えを見せているわけです」

汚れた東京五輪、裏金疑惑の真相〜渦中の「キーマン」が核心を語った! http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48876 #現代ビジネス


2016年に一部が報道されてはいましたが、今回は、更に深く報道されました。誘致における不正行為が世界的に報じられたのは、日本政府、五輪組織委員会に大きなダメージを与えたのは想像に難くありません。
そして、この疑惑の報道の中で日本側のキーマンとされたのは、電通元専務、五輪組織委員会理事を務める(2018年6月現在)高橋治之氏です。高橋氏は賄賂性を明確に否定し、誘致に必要な行為だったと強く反論しました。この高橋治之氏は日本のスポーツ界では著名かつ重要な人物であり、サッカーとFIFAにも深く関与していた人物です。(詳しくは「電通とFIFA ~サッカーに群がる男たち~」を読んでください。)

この報道の次の日に設立されたのが、本田圭佑氏がCEOを務めるNow Do株式会社だということが、私にはとても興味深く感じます。
このスキャンダルはまだ完全に解決したわけではなく、2018年6月の今でも継続した案件となっています。私が確認できた最後の新聞報道を貼っておきます。

東京五輪招致疑惑でコンサル代表起訴 シンガポール、汚職捜査 - 産経ニュース https://www.sankei.com/sports/news/180216/spo1802160002-n1.html @Sankei_newsさんから


4.スポーツ庁とオリンピック、そして日本サッカー協会

東京オリンピックといえば触れないわけにいかないのが、スポーツ庁です。オリンピックのために発足した等と報道された組織も、日本サッカー協会に影響を与えました。

スポーツ庁の施策の目的は大きく分けると「国際競技力向上」と「医療費抑制」の二つになります。「国際競技力向上」はオリンピック強化、「医療費抑制」はスポーツ普及事業として考えるとわかりやすいかと思います。運動して健康になるので医療費が抑制されるということです。


オリンピック競技強化の資金源は大きく分けると下記の3つ。
・戦略的強化費はJSC(日本スポーツ振興センター)が配布
・主に財政基盤の弱い団体を中心に配分される基盤的強化費はJOC(日本オリンピック委員会)を通じて配分
・またこれらの強化費とは別にJSCがサッカーくじの収益などを原資として直接交付するアスリート助成金
(予算の受け取りは、14年度まではJOCが国から直接補助金を受け取っていましたが、15年度からはJSCに一元化されています。わかりやすく言うとスポーツ庁→JSCという仕組みです)

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この流れの中で日本サッカー協会は大きな存在感を持っています。
オリンピックの人気競技として参加するだけでなく、人的・財政的にも深く関係しているからです。サッカーくじである「toto」はJSCの主たる事業の一つですし、JSCの理事長も第4代Jリーグチェアマン、元日本サッカー協会副会長である大東和美氏が務めています(2108年6月現在)。
ただこの仕組みが、オリンピック強化の中で、少しづつ変容してきています。
スポーツ庁と日本サッカー協会の事業領域は、今後、重なり合い、競合する可能性が高くなっているからです。スポーツ庁のいう「総合型地域スポーツクラブの質的充実」は、Jリーグがこれまで目指してきたこととほぼ変わらない内容です。実際、湘南ベルマーレや横浜FCは、Jリーグに所属しつつ総合型地域スポーツクラブである形をとっています。

http://www.yokohamafc-sc.com/synthesis.html


他競技と一緒に運営するメリットは経営側とユーザー側の双方にありますが、統括団体である日本サッカー協会にとっては不安が強い仕組みになります。選手、およびスタッフともに外部に流出する可能性があるからです。
現況をざっと見ると、日本サッカー協会とスポーツ庁との関係は、人的あるいは財政的なつながりはなんとか担保されていますが、基本的には他の団体と同レベルであり、突出してよい関係だとは言えない状況です。日本サッカー協会は、2012年4月1日より公益財団法人となり、文部科学省から完全に独立したため、後発の組織であるスポーツ庁との関係は従前ほど密ではないからです。

5.連呼される「オールジャパン」の謎

他の団体と横並びになるということに、日本サッカー協会は、かなり危機感をいだいているはずです。


元々、岸体育館の中で、他の競技団体と同様に間借りして、細々と存続してきたJFAが、プロ化、ワールドカップ招致などで自分たちの力で、競技の普及を図り、自分たちのビルまで作り上げた歴史を失いかねない状況に追い込まれたとも言えます。東京オリンピックの中で自分たちの存在意義を主張し、これまでの体制を維持する必要が生じるきっかけになったことと思います。


またJFAにとってスポーツ庁はベストなパートナーとは見えません。省から派生して生まれた組織であるため、文部科学省以上に政局の影響を強く受けているように思えるからです。(人事異動も文部科学省とスポーツ庁の間で行われることが多く、一連の文部科学省のトラブルに巻き込まれている様子さえ伺えます。前川事務次官騒動、天下り問題などでスポーツ庁の人事が影響を受けている様子が新聞報道などからも把握できます。)人事が官庁の組織運営に与えるインパクトは大きく、スポーツ庁もその例外ではありません。

しかし新設官庁には、特有のメリットもあります。設立当初、他の省庁と調整しつつ人材を調達していくので、時として面白い人材が登用されることがあるからです。スポーツ庁にも興味深い人材を発見しました。

「特攻」が世界記憶遺産に⁉安倍ご執心、担当は籾井令嬢 https://facta.co.jp/article/201405025.html


競技スポーツ課長の籾井圭子氏です。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の記憶遺産への特攻隊資料の申請を担当したことで有名になった籾井氏は、元日本放送協会(NHK)会長、籾井勝人氏の娘であることでも知られています。(籾井勝人氏は、安倍晋三首相とも近い人物と言われており「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」と発言したことで物議をかもした人として記憶している方も多いかもしれません。)

競技スポーツ課は、国際競技力向上施策を担当し、東京オリンピックに向けて様々な施策を行っている部門です。東京オリンピックでは金メダル30個を目指す強化方針が出されており、各種競技の強化に本腰を入れている最中です。そんな部門を担当している課長が籾井氏というのは個人的には非常に興味深いです。もし日本サッカー協会がオリンピック行政に協力しないならば、スポーツ庁はどんな対応をするのでしょうか。想像しただけでも本当に面白いです。

このような状況下でオリンピック強化に邁進しているスポーツ庁ともうまくやっていくために、日本サッカー協会は「オールジャパン」の皮をかぶることにしたのではないでしょうか。横並び感を出しつつ実利を取る戦略かもしれません。

6.Jリーグと日本サッカー協会の微妙な関係


「総合型地域スポーツクラブ」にところでも少し触れましたが、日本サッカー協会とJリーグの関係も、最近、微妙になってきています。運営母体の問題です。
Jクラブの運営を担うのが株式会社でなければいけないという規定はありません。Jリーグ参入基準によると、株式会社以外の法人格でも参入は認められます。入り口を多様化することでチーム数を増やしてきた事情もあるので、Jには多様な経営母体が存在します。ただ経営はなかなか大変で、株主配当をするほどの利益をあげているJクラブはわずかだと言われています。
そのためか、近年、Jクラブの運営会社として非営利法人を利用するケースが増えています。


公共スポーツ施設を利用せざるを得ないビジネスモデルであるJクラブにとって地方自治体の協力は欠かせません。地方自治体は、公共性の観点から、株式会社との付き合いには慎重になります。すなわち非営利法人を活用でクラブと地方自治体との距離を縮めることができます。またスポーツ振興くじ助成(toto)の申請対象団体は非営利法人であり、株式会社は申請できないため、助成金という面でもメリットがあります。メリットがあれば、当然、利用は増えていきます。


「総合型地域スポーツクラブ」はもちろん他の競技の運営も行います。サッカー以外の競技団体との交流の中で何か大きなメリットが生まれれば、JFAから離脱する可能性もないわけではありません。

加えて、総合型地域スポーツクラブを推進しているのは、サッカー関係者だけではありません。競合となる団体も同じ仕組みを推奨しているのです。

文部省「我が国の文教施策」(平成10年10月30日刊行)では以下のように記載されています。

「競技団体の中にも総合型地域スポーツクラブ育成の取組を行っているものもある。(社)日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)においては、百年構想の下、総合型地域スポーツクラブの育成に取り組んでおり、所属する各クラブはサッカー以外の競技の振興も行っており、バスケットボールやバレーボールの教室などを開催している。また、(財)日本体育協会においては、スポーツ少年団を核とした総合型地域スポーツクラブ育成への取組も行われている。」

この最後の一文にも、今回の「時期」の謎を解くヒントが隠されています。

7.最大のライバル「日本スポーツ協会」の誕生


1911年に大日本体育協会として創立した日本体育協会は、2018年4月1日付で組織名称を「日本スポーツ協会」へ改称しました(以下スポーツ協会と略)。

2018/03/30 日本体育協会名称変更記者発表を開催

http://www.japan-sports.or.jp/news/tabid92.html?itemid=3705

スポーツ協会は前述の岸体育館内にあり、日本オリンピック委員会(JOC)も同じ場所に存在しています。(JOCは、国内オリンピック委員会として日本体育協会内に置かれていましたが、1991年には財団法人日本体育協会から完全に独立しています。)


日本スポーツ協会には、野球・テニス・レスリングなど、他の団体と同様に日本サッカー協会も中央競技団体として加盟しています。団体の区分は難しく、時として混同してしまいますが、参加大会ごとに分かれていると思うと理解しやすいかと思います。


・オリンピック出場にはJOC加盟が条件。
・国体やアジア大会にはスポーツ協会加盟が条件。
・世界選手権やワールドカップ呼ばれる大会には、国際競技団体(陸上のIAAF、サッカーのFIFA、ラグビーのIRBなど)への加盟が条件。

サッカー協会をはじめとする各種競技団体は、この3つの組織に所属する形で、それぞれの大会に参加しています。

もしスポーツ庁がオリンピックを重視するのであればJOCを、普及的な側面を重視するならばスポーツ協会を支援する形になると思います。

スポーツ協会の活動に、日本サッカー協会は、いやおうなく影響を受けざるを得ません。スポーツ庁以上に意識してしまう存在が、オリンピックを控えて、前面に登場してきたとも言えます。日本サッカー協会としては、見過ごすことのできない状況に追い込まれました。

8.サッカーという枠をはみ出しはじめたマーケットマン

ここで唐突ですが「地域スポーツ資源活用モデル形成支援事業」に立ち返ってみましょう。
「地域スポーツ資源活用モデル形成支援事業」とは、地域の指導者を主体としたスポーツエコシステム構築推進事業としてスポーツ庁が支援する事業で、全国各地域が有するスポーツ指導者を、官民が一体となりスポーツの普及に向けて最大限活用し、スポーツ環境の充実、スポーツ人口の拡大につなげる自律的好循環(スポーツエコシステム)の創出を実現することを目的にしています。


 その支援事業者として選ばれたのがNow DO株式会社でした。

この決定は日本サッカー界にも重要な影響を与える決定でした。これに従うと、仮に日本サッカー協会が、今後、「総合型地域スポーツクラブ」制度によってスポーツ協会に育成部門の予算や権限を奪われたとしても、個別の事業者が直接、プロジェクトを提案すればスポーツ庁から支援を得られることを意味します。

そしてこれは日本サッカー協会とはまた別の流れでサッカーの普及が行われる可能性が残ることも意味しています。本田選手は、ある意味、サッカー協会を超えた存在になりつつあると言えるかもしれません。もっともこれまでの本田選手の行動様式自体がそうだったので不思議はありませんが。

【本田圭佑選手ぶら下がり詳報】安倍首相と対談 政界進出に興味は「あったけど、今はない」 - 産経ニュース https://www.sankei.com/premium/news/160704/prm1607040009-n1.html

本田選手の出身校である石川県の星稜高等学校で教職にあった馳議員が登場している話です。ちなみに東京オリンピック招致の中心人物である森喜朗氏は石川県選出の議員であり、馳議員は「2020年東京五輪・パラリンピック大会推進議連」で行動を共にしています。

9.「総合的な判断」とは?


苦労して分かりやすく書いたのですが、かなりごちゃごちゃしているので、一度ここまでの流れを整理します。


日本サッカー協会に影響を与えた(と思われる)要因

①東京オリンピック(スキャンダル報道など)
②「日本スポーツ協会」の誕生
③スポーツ庁人事
④「地域スポーツ資源活用モデル形成支援事業」への現役選手である本田圭佑氏の参画


これらの要因が田嶋会長の判断に影響を与えたと思われます。これらの要因をふまえ「総合的な判断」で決断したのではないでしょうか。


もちろん巷で言われるような電通とアディダスが、スポンサー圧力で解任を迫ったという可能性も排除できません。ただ4月に行う必然性はあまり感じません。ハリルホジッチ監督を解任することで必ず勝つ見込みがあれば理解できるのですが、後任監督もはっきりしない中で2か月前に監督解任が勝率をあげるとは思えないのが常識的な反応だと思います。


田嶋会長が選挙を終え、電通出身の岩上副会長体制が出来たからという説もありますが、会見で会長自身が語ったように、結果の如何を問わず、会長職を辞任しないようです。であれば、ハリルホジッチ氏を解任などせずそのままロシアに行けばよかったはずです。負けても会長を辞めることはないのですから。次の監督を選び、スポンサーに根回しすればいいはず。(そもそもアディダスは契約を更新したばかりなので、挽回の機会は十分あるはず。)謝罪の理由は連れてきた原と霜田が悪いというだけで済むはずです。
つまり4月に辞めさせる理由・原因がなければ、解任は行われなかった。

ここでは先ほど挙げた4つの要因から、ここでは2つの仮説を提示したいと思います。


(仮説1)登録費など固定収入の減少を恐れ、スポーツ庁に忖度を行った
東京オリンピックのために生まれたスポーツ庁の判断次第で、日本サッカー協会は単なる競技団体の枠に押し込められ、育成部門を取り上げられる可能性が生まれた。ライバルは4月1日に誕生したスポーツ協会。そのためスポーツ庁の政策判断を忖度し、ハリルホジッチを解任した。オリンピックスキャンダルを追いかけているのがフランスの検察・新聞だというのもハリルホジッチ監督には不利な方向に働いた。


(仮説2)本田圭佑の事業を巡って何らかの力が働いた
ハリルホジッチ監督の選手選考において、不利な状況に追い込まれていた本田圭佑選手を選出させるべきという圧力が生まれた。スポーツ庁から「 地域スポーツ資源活用モデル形成支援事業」者として選定される際に、日本代表を外れていては話題にならない。本田選手の経営するNow Do株式会社、日本サッカー協会をともに支援しているKDDIにとってもマイナスになる。アディダスとは異なり、新しいスポンサーなので関係はまだ確立していないKDDIとの関係を悪化させたくないという判断が田嶋会長に働いた。ワールドカップ後の引退セレモニーからビジネス界への進出という演出が予定されており、選出されなければまた話題となることを逃すことになる。

(書き終えてから発見したのですが、同じ仮説にたどり着いた人がいたのでご報告します。しかも私より早い!!最初から引用したかった・・・)

ハリル解任,なぜ陰謀論は消えないのか~本田圭佑とKDDI=au - スポーツライター玉木正之氏の知的誠実さを問う http://gazinsai.blog.jp/archives/31170710.html

4月を重視するなら前者、5月を重視するなら後者が有力でしょう。もっとも「総合的に判断」したのなら両方だということになるでしょう。

結論は以上です。


(補遺)田嶋会長を解任するには?


今回の一連の騒動で、田嶋会長を解任すべきという声がネット上にあふれています。私が自分で蒔いた種でもありそうなので、どうやったら解任できるか調べてみました。

田嶋会長に誘われ、JFA専務理事になった岡島さんの本です。

JFA田嶋体制始動で懸念される協会内分裂 https://www.tokyo-sports.co.jp/sports/soccer/523468/ #tospo


サッカーファミリーへの中間報告 サッカー歴ゼロ専務理事の独白 岡島正明 https://www.amazon.co.jp/dp/B06XWBGXN9/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_4KXlBbR944YNW @amazonJPさんから

この本によると、「会長が不祥事を起こした場合にどの機関が解任すべきか」明確でないようです。どのように解任すべきか決まっていないことからもわかるように、田嶋会長を辞めさせるのはなかなか困難な作業なようです。

なぜこうなっているかというと、原因は2014年に行われたJFAリフォームにあります。JFAリフォームは、国際団体であるFIFAから日本サッカー協会の組織運営が透明性や民主性に欠けるとの指導を受け、行われることになった改革です。ただし、選挙を行うには大きな問題が残されたまま組織が運営されています。会長の選任機関と承認機関が異なる事態が生じたままなのです。


FIFAの要請で会長選挙は評議員によって選ばれ、承認されるべきとされています。結果、改革後、日本サッカー協会会長になるには、評議員によって理事として選ばれ、理事会で代表理事となるという手続きを得ないと会長になれないことになりました。
国内法に従えば、財団法人の規定に従わねばならず、理事による承認が必要となります。FIFAは腐敗の温床として間接選挙の形は明確に否定しています。


会長選挙には、このねじれ現象が生じたまま放置されています。(*岡田氏がFIFAにワイズマンによる間接選挙での解決の交渉を行ったのは、この国内法の問題があったからだと思われます)評議員の推薦した会長を理事が否認した場合、誰が就任できるのかという問題や、会長を解任するにはどの会議で決議を行うべきなのかも不明なのはこのねじれが原因です。

選挙制度の改正後、田嶋会長は以前よりも不安定な地位にいるといってもいいかもしれません。ワイズマンともいうべき理事は、そもそもが会長の身内に近い存在であり、ある意味仲間でした。しかし評議員は、都道府県代表とJリーグ代表という異質なメンバーで構成されます。評議員の票の意向で選挙結果が決まるので、どうしても内向きの発想になります。日本サッカー協会会長は、国内勢力からの影響を以前より受けやすくなったと考えることができます。
*会長選挙改革については、下記の清水英斗さんの記事が分かりやすいです。

サッカー日本代表、後任監督よりも注目するべき会長選挙(清水英斗) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/shimizuhideto/20150222-00043257/


*日本サッカー協会のスタンスは、以下の「9.JFAの改革」を参照してください
http://www.jfa.jp/about_jfa/president/


加えて、国内団体でどこに気を使うかといえば、JFAリフォームによって新たに追加されたJリーグ団体になるでしょう。日本サッカー協会会長の権力は従来よりも弱まりつつあります。

ここまで散々たたかれている田島会長ですが、育成にかける情熱は本物だと私は思っています。

下記の文章の一番最後に出てくる姿が真の姿だと私は思っています。


現場のサッカーコーチから、田嶋会長へ ① - Neutral football http://neutralfootball.hatenablog.com/entry/2018/04/20/220538


田嶋会長がハリルホジッチ監督についた嘘は許されるものではありません。ただ会長の判断としては、微妙な悲哀も感じます。

川渕三郎ぐらいアクが強い人物なら切り抜けられたかもしれませんが、実際にあったいろんな人がいい人だと言っているように、田嶋会長は普通の人です。普通のまじめな人が会長をやった結果がこの事態を引き起こしたというのが私の総括です。

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