米中貿易摩擦が独自動車大手を直撃、全世界巻き込む可能性も

[ワシントン/フランクフルト/北京 21日 ロイター] - 米中貿易摩擦の激化は、高関税の標的となった米農業生産者や中国の太陽光パネル、鉄鋼などの製造業者だけでなく、米国に生産拠点を持つドイツの自動車大手も直撃、世界的な貿易戦争に発展する様相を示している。
独自動車大手ダイムラーは20日、2018年の業績見通しを下方修正し、BMWは米中貿易摩擦を踏まえて「戦略的選択肢」を検討していると明らかにした。ダイムラーは米アラバマ州の工場でメルセデス・ベンツ車を生産し、中国を含めた世界各地に輸出しており、BMWの米サウスカロライナ州の工場は米国内の工場としては輸出台数が最も多い。
エコノミストの多くは米中間の高関税の報復について、世界経済の成長を阻害する事態にはならないと見込んでいるが、農業、自動車、ハイテクなど個別の業界は悪影響を免れないとみられる。
トランプ米大統領は知的財産権侵害を巡り、総額500億ドルの中国製品に対する輸入関税を計画しており、7月6日に予定通り第1弾を発動するかどうかが注目されている。大統領は中国の報復関税に対抗して追加関税を課す意向も示しており、これまでに総額4500億ドル規模の中国製品に対して関税適用を警告、中国の対米輸出額5000億ドルの大部分がターゲットになった。
米中双方がこれまで警告した通りに関税を導入すれば、全世界が巻き込まれ、1930年代以来の大規模な貿易戦争に発展する公算は大きい。
中国商務省の高峰報道官は21日、「米国が気まぐれに振る舞い、緊張を高め、貿易戦争を引き起こしたことは非常に遺憾」と非難。「米国は『強硬措置』を掲げて交渉に臨むのが常とう手段のようだが、中国には通用しない」と強調した。
一方、中国の習近平国家主席はこの日、北京で海外企業の幹部らと会合を開き、4月に約束した関税削減方針を推進すると言明した。「私は約束を実行してきた」と語った。
ただ、米中間の非難の応酬はエスカレートするばかりだ。ロス米商務長官はCNBCに対し「関税、非関税双方を含む大規模な障壁を設ける貿易相手国が一段と苦痛を味わう環境を整える必要がある」とし、「障壁を撤廃するよりも維持するほうが難しくなるようにすることが必要だ」と述べた。
貿易の緊張の高まりは株式市場にも波及。21日の米国株式市場では自動車大手が売られた。フォード・モーターが約1.4%、ゼネラル・モーターズ(GM)が2%近く、それぞれ下落。テスラは4%安となった。
中国の報復関税は米農業生産者に打撃を与えることになる。2016年の米大統領選でトランプ氏を支持した人たちも多く含まれる。
中国は4月2日に米国の鉄鋼・アルミニウム輸入関税に対抗し、米国産豚肉の大半の部位に25%の関税を発動、果物などには15%を課した。知財権侵害を巡り米国が導入する関税に対しては、7月6日に報復関税を発動する計画で、ここでも米国産豚肉が対象となる。2回にわたり対象品目リストに入ったのは豚肉のみで、中国財政省が前週ウェブサイトで公表した計算式によると、累計関税率(付加価値税含まず)は71%に上る。
中国は米製品659品目に対し25%の輸入関税を課す計画を明らかにしており、このうち545品目は7月6日から適用する。残る114品目には米国産原油などのエネルギーが含まれているが、中国はこれまで、発動時期を明らかにしていない。

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