ニンテンドーeショップはいつまで魅力を保つことができるのか?Switchについに“困った実写ゲー”が来た

人気者にはいろんなヤツが近づいてくる

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Nintendo Switchではインディーゲームがよく売れているらしい。実際のところ私もそれを肌で感じており、PCではスルーしているゲームをNintendo Switchならば遊ぶということがしばしばある。さまざまなスタイルで遊ぶことができるというのは想像以上に価値があるし、今後は『Undertale』などの有名タイトルが出ることもあって期待も高まるばかりだ。

しかし、光が当たる市場というものには影ができるもの。既にさまざまな方面から言われていることだが、Nintendo SwitchのDL版タイトルを販売するニンテンドーeショップには不安がつきまとっている。タイトル数が少ないうちは各タイトルが注目される割合は高くなるが、数が増えれば増えるほど注目されづらくなるのではないか……、と。

実際、Steamのようなプラットフォームでもゲームの数が増えすぎて好みの新作を見つけるのは容易ではなくなってきているし、そこまで検索しやすいと言えないニンテンドーeショップが混雑するのは時間の問題だろう。何より、「Nintendo Switchが流行っているうえに小規模なタイトルも売れるらしい」という話が広まると困ったことになるのだ。今回はその困った一例を挙げようではないか。

Nintendo Switchに困った実写ゲーが現れた

2018年3月29日より、Nintendo Switchで『真・電愛「なにが欲しいの?」 ~北見えり~』が配信された。これの何が衝撃的だったかといえば、実写映像を使ったタイトルだったからに他ならない。とにかくニンテンドーeショップでは浮いているのだ。いや、浮いているのが見た目だけなら良かったのだが。

本作はスマートフォンで展開されている『電愛』シリーズの作品で、とある事情(詳しくは後述)があってNintendo Switchで配信されることになったらしい。内容としては2次元キャラクターやアイドルとの“疑似電話”が楽しめるものになっており、プレイヤーは自分が通話をしているような気分になって喜ぶというわけだ。

それはいいのだが、本作は本当に内容が薄い。プレイヤーは「はい」か「いいえ」を答えるだけであり、その選択によって会話内容が変化することはするのだが、1時間前にプレイしたのにもはや何を話してもらったかほとんど覚えていない。そもそも北見えりさんはモデルなので、会話の演技は期待できないし察してほしい。シナリオ(と呼べすらしないもの)もひどく、こちらから電話をかけたのに「もしも~し、キタエリだよ。いま猫耳と尻尾つけたラバースーツで撮影してるの」と早口で言われたときは「メリーさんの電話みてえだな……」とつぶやいてしまった。

明らかに低予算タイトルなのでBGMがないのは仕方がないとしても、会話を通じて送られてきた写真を拡大表示できないのはなんともひどいものだ。同じような電話を何度もしなければ写真のコンプリートもままならないし、動画もあるが画質はかなり悪くてどうしようもない。結局のところ、スマホ向けのものをいい加減に移植しただけである。だいたい本作はスマホで遊ばないと疑似電話の意味がないだろう。

しかしながら商魂はなかなかたくましく、追加コンテンツが大量に配信されている。私は2018年にもなって追加コンテンツそのものを否定するような無粋な人間ではないが、本作に関してはさすがにちょっとどうかしていると言いたくなった。

また、北見えりさんがTwitterでつぶやいていたNintendo Switch版の配信経緯も気になるところだ。彼女は「iosで許可が下りなかった()のでまさかのスイッチで配信になったそうです笑」と語っており、これが本当ならばメーカーであるドラスの志はマントルに到達するくらいに低いのだろう。

とはいえ、『真・電愛「なにが欲しいの?」 ~北見えり~』はこれまでNintendo Switchになかったタイトルであるし、北見えりさんのファンにとっては家庭用ゲーム機で発売されたというトロフィー的な意味合いにはなるかもしれない。まあ、レビュースコアをつけるとしたら地獄のような点数がつくと思われるが。

ところで、Nintendo Switchは最近やたらとDLタイトルが出まくっていることをご存知だろうか。ニンテンドーeショップでは毎週のようにたくさんのタイトルが配信されており、中には出来栄えが怪しいものもいくつかある。たとえばスマホの基本無料システムをそのまま持ってきてしまったパズルゲーム『BOOST BEAST』も問題作だと一部で騒がれているのだ。

なぜこんなことになっているのか。それは文頭にあるように、Nintendo Switchがかなりの人気を誇っており、そこでDLタイトルを販売するとよそのプラットフォーム以上に売れる可能性があるからだ。だからこそ今がチャンスと、いい加減すぎる移植作品もNintendo Switchに集結しつつある。

プラットフォームは困ったゲームに制圧されかねない

ただ単にダメなゲームが出るのは仕方がない。ゲーム開発会社にだって都合があるだろうし、たまたまウケなかっただけかもしれないだろう。しかしながら、“そういうものが集う”という事態は本当に困ったものなのだ。

かつてXbox 360では、誰でもゲームを配信できるXbox Live Indie Games(XBLIG)という市場があった。開発者同士のピアレビューさえ通ることができれば、お父さんが赤ちゃんのために作ったゲームも、ユニコーンがちゅっちゅぺろぺろして戦う格闘ゲームも、制作者の性癖すべてが注ぎ込まれているアクションゲームも、国産なのに日本語が怪しくてそもそもルールが理解できないパズルゲームだってゲーム機向けに配信できたのである(こちらの記事を参考)。

 
Xbox 360『Rumble Massage』ゲーム画面。コントローラーの振動機能を使ってマッサージができる。ポルノ女優にも取り上げられて話題になった。

「誰もが好きなゲームを作ることができる」というのは素晴らしいものだ。しかし、XBLIGで最初に流行ったソフトは“コントローラーの振動をマッサージ機として使うソフト”である。これは最初の1本こそ話題になってよかったのだが、むやみに真似をする開発者が続出、そのうち市場には需要を無視してマッサージソフトがあふれるようになってしまった。

このような流行りの後追いはその後も何度か起こった。Xbox 360のアバターを使ったしょうもないミニゲーム、アバターを使ったシューター、『マインクラフト』のクローンなど。もちろん中には元の作品を進歩させてより良くしたものもあるのだが、残念なことに出来が悪い、あるいは悪質なタイトルも多く、悪評のほうが圧倒的に上回った。そして当然ながら、XBLIGからはどんどん人が離れていってしまったのだ。

おそらくこの話、Nintendo SwitchのDLタイトル市場にも同じことが言えるだろう。人気が高まってくると柳の下のドジョウを絶滅させるほど獲りつくそうと、怪しいタイトルもやってくるのである。

Nintendo Switchにもキュレーターが求められるようになるか

 
『真・電愛「なにが欲しいの?」 ~北見えり~』のギャラリー。「これを買うなら素直に北見えりさんの映像作品を買ったほうがいいのでは?」と思うことうけあい。

当然ながら低品質なゲームは市場にのせないという方針もあるだろうが、現状を見る限り任天堂はおおらかにタイトルを受け入れているようである。それに『真・電愛「なにが欲しいの?」 ~北見えり~』も喜ぶ人が一切いないということはないだろう。ただ、今後このシリーズが大量に出てきてしまったら? あるいは別種のスマホ向けタイトルがたくさん移植されたら? もはやNintendo SwitchでDLタイトルを楽しむことをやめるという人が出てもおかしくはない。ではどうするか、ひとまず先人に学ぼう。

Steamよりキュレーターのページ。単なるゲーマーのみならず、ゲームメディアもおすすめタイトルを掲載している。

たくさんのゲームタイトルを抱えるSteamには「キュレーター」というシステムが存在する。これはSteamにあるタイトルをおすすめしてくれる個人・団体のことで、要するにどんなゲームが面白いか教えてくれる存在なのだ。もはやSteamではカタログをひとつずつ眺めてゲームを買うということはありえないくらいにタイトルが増えているので、好みやジャンルに合わせたおすすめが必要なのである。

Nintendo Switchの現状を見る限り、ニンテンドーeショップが肥大化するのは時間の問題だ。となるとSteamと同じように、この市場にもレコメンドが求められていくようになっていくことだろう。

実をいうと、既にそういう形で動いている人々はいる。我らがIGN JAPANも「Nintendo Switchお手頃ダウンロードソフトオススメ10選!」という記事や、「Nintendo Switchの携帯モードで楽しめるコスパ最高なゲーム8選」といった携帯モードに焦点を当てたもの、そして「2000円以下で楽しめる!Nintendo Switchおすすめインディー10選」なんて記事を出している。これら記事はなかなか人気があったようだ。

またNintendo Switch内にあるゲームニュースでは、ゲームブロガーであるラー油氏によるオススメのゲーム紹介記事が公開されている。これはフライハイワークスによる配信で自社タイトルについて書かれているためレコメンドというよりは宣伝に近いが、いずれにせよ紹介であることには違いない。早い段階からNintendo SwitchでDLタイトルを展開し続けているフライハイワークスのような会社からすれば、ニンテンドーeショップで自社タイトルが埋もれてしまう危険性は既に理解しており動き出している段階なのだろう。

Nintendo Switchはとても良い調子を見せているし、ニンテンドーeショップも今のところはまだまだ魅力的な場所だ。しかしながら場所の制限がないデジタル販売というものは、タイトル数が増えすぎて困ることになるのが定め。はたしてインディーゲームや小規模なDLタイトルにとっての聖地は、いつまで魅力を保ち続けることができるだろうか。

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