破壊屋ブログ

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敗北した敵ヒロインと浮気するスーパーヒーロー!『宇宙の法 黎明編』

幸福の科学は、そんじょそこらの右寄り映画よりもさらに右を行く保守映画を作ってきたはずですが、彼らの最新作『宇宙の法 黎明編』がまさかのリベラル路線のストーリー!右を向き続けた結果、半周回って左になったのでしょうか。



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↓はアメリカ版ポスターなんだけど、このふたりは悪役!
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解説の前に謝罪

というわけで例によって完全ネタバレ解説しますが、解説前に一つ謝罪を。『宇宙の法 黎明編(The Laws of The Universe - Part 1)』は『UFO学園の秘密(The Laws of The Universe - Part 0』の続編なのですが、『UFO学園の秘密』公開当時に俺は「絶対に続編できない」とバカにしてきました。でも本当に続編作ってしまった。これが彼らの信じる力か!俺の発言を撤回してお詫びします。

前作の主人公たちのその後


スーパーヒーローに変身した主人公。
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  • 『UFO学園の秘密』で高校生だった主人公たちチーム・フューチャーは、ナスカ大学で学生生活を送っていた。どうでもいいけど「ナスカ」ってペルーの地名が日本の学校名になっているのって変だよな。
  • 前作では超絶カッコ良かった主人公が進路を決めずに八つ当たりする男で、前作ではダメ人間だったエイスケが配信で一発大当してモテモテキャラになっているという逆転ネタが良い。
  • 彼らは大学の勉強や進路の準備に備える一方で、アメリカにテレポートしてヒーロー活動も行っていた。ここから映画はいきなりスーパーヒーローものになる。

スーパーヒーロー登場


ヒロインのファントム・イリュージョン。スカートを使わず、胸の谷間を見せないというポリコレデザインだけど、今作でミニスカ巨乳女にヒロインの座を奪われる。
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チーム・フューチャーたちはギャラクシーフォースという力を使ってヒーローに変身するのだ。ギャラクシーフォースって何だよ!?とツッコミたくなるが、劇中では「力を目覚めさせる力」と説明になっていない説明がある。あと彼らのヒーロー名がカッコ良すぎて恥ずかしい

  • 主人公は、獣人になるスペース・コマンダー
  • 主人公の恋人は、幻影を見せるファントム・イリュージョン
  • 主人公のライバルは、騎士の格好をしたホワイトナイト
  • テレポート能力のあるアブソリュート・サンクチュアリ
  • 姿を消せるインビジブル・スピア

敵を殺すのが楽しいヒーロー、大虐殺する


ホワイトナイトは闇落ちして、ポスターにも出てくるブラックナイトに変身する。
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  • だがヒーローとして敵を虐待することが楽しくなっていたホワイトナイトは、悪の少年:ダハールにそそのかされ、悪の騎士ブラックナイトに変身してしまった。
  • どうでもいいけど「悪のブラックナイト」はアメリカで公開した時に人種的な意味で大丈夫だったのか?かといって「ダークナイト」にしちゃうと別の映画だしなぁ。
  • ブラックナイトはダハールと共に3億3千万年前にタイムスリップする。何で3億3千万年前かというと、幸福の科学の教義に「3億3千万年前に大川隆法が地球に登場した」というのがあるからだ。
  • そこはレプタリアンたちの星だった。ブラックナイトの出身星プレアデウスはレプタリアンによって虐殺されていた。ブラックナイトはその恨みを晴らそうとする。
  • ブラックナイトはレプタリアンの星の天地を逆にすることで星を滅ぼす。このシーンは大迫力の良シーン!

宇宙最強の戦士ザムザ登場


ザムザ。途中しか出てこないにも関わらず主人公以上のインパクトを残す。宇宙最強の戦士でミニスカ巨乳で残虐だけど純情という夢のようなキャラ。
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  • レプタリアンはほとんど死んだ。生き残ったレプタリアンたちは船に載って地球へ脱出する。彼らを指揮するのは宇宙最強の戦士ザムザだ。ザムザは凶暴で傲慢な性格な女性である。イラつくと部下を殺したりする。
  • 主人公はブラックナイトを連れ戻すために、宇宙連合(幸福の科学の教義に出てくる異星人集団)の力を借りて3億3千万年前にタイムスリップする。
  • 主人公は3億3千万年前の地球でザムザと遭遇。アニメ版ゴジラ並に強いザムザにあっという間に負けたので、彼女の奴隷になる。
  • 主人公もザムザも標的はダハールとブラックナイトなので、一緒に旅に出ることになった。
  • ここでヒロイン交代が発生して、なんとザムザがヒロインになる!凶暴で傲慢な戦士ザムザが光堕ちしていくギャップを楽しむ物語なのだ。

新ヒロイン誕生

  • 主人公とザムザは旅の道中で偶然怪物に襲われる村民を助ける。村民たちは当然ながら「ありがとう」という言葉を伝えるが、「ありがとう」という概念の無いザムザは戸惑う。
  • ザムザは村民たちの結婚式に出席することになった。主人公から「キス」という概念を説明され「愛って何だ?」と考えるようになるザムザ。
  • しかしザムザは村民たちにゴミ出しをお願いされたことで「私は宇宙最強の戦士だぞ!」と激怒。大暴れする。
  • 大暴れするザムザだが、そこに現れた地球の女神と戦って敗北、グルグルに縛られたザムザは「クッ、殺せ!」「だが部下の命だけは助けてやってくれ」と懇願する。
  • だがザムザの部下のレプタリアンたちは、敗北したザムザに興味を無くし裏切る。そしてザムザの代わりにもっと強い戦士であるブラックナイトの部下になる。えーと、レプタリアンたちは自分たちを虐殺したブラックナイトの味方になるっておかしくない?この映画の脚本はそれなりに良いけど、ここは大失敗だと思う。

幸福の科学の写輪眼発動


これが諸悪の根源ダハール。彼の正体はなんと…。
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  • ここからは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のソコヴィアみたいな展開なので、だいぶハショる。
  • 主人公はかつての親友だったブラックナイトに再会、戦いに勝利しブラックナイトを正気に戻す。
  • ブラックナイトをそそのかし、レプタリアンの星を滅ぼし地球征服を狙う少年:ダハール。彼の正体がついに明らかになった。ダハールの正体は宇宙の根源的な○であり彼の体は巨大な○○だったのだ!
  • ↑えーとこのオチって現在製作中の有名ハリウッド映画のオチと同じだよね?まさかまだ完成していない本家映画よりも先にこのネタをやるとは…。先にパクるというマンガ『NARUTO』でカカシが見せた写輪眼のような技だ。もしくは『スター・ウォーズ』が日本公開される前に大急ぎで作ったスター・ウォーズパクリ映画の『宇宙からのメッセージ』とか。ちなみにそのハリウッド映画とはコレです。

アルファ神が登場してリベラル演説

  • ダハールは主人公を殺そうとするが、実は主人公に惚れていたザムザが身代わりとなって死ぬ。ちなみに本当のヒロインであるファントム・イリュージョンは一度も出てきていない
  • ザムザは死ぬ前に「お前は奴隷で私が主人だ、お前を守るのは当たり前だ」とつぶやく。
  • ダハールを倒すために地球の神:アルファ神が登場する。アルファ神とは大川隆法が最初に地球に登場したときの形で超イケメン
  • ダハールとアルファ神の壮大な戦いの結果アルファ神が勝利し、ダハールは消える。
  • ここでアルファ神は地球に住む人々(3億年前に人は無いけどさ)に対して「自由に生きよう」「移民は受け入れよう」「移民受け入れは衝突が発生するけど、相手を尊重しよう」というリベラル演説をかます



追記:コメントで指摘されましたが、これはネオリベの意見ですね。

唐突にラストシーン

  • アルファ神はザムザを生き返らせる。
  • 生き返ったザムザを見て主人公は大喜び、思わず抱きつく。ザムザはビックリして「か、勘違いするんじゃない!」と慌ててかわいい。
  • 正気に戻ったホワイト・ナイトとザムザ。彼らはお互いがお互いに民族虐殺しているという仲だけど、「虐殺はどっちもどっち」ということで仲良く握手する。いいのか。
  • 主人公とホワイト・ナイトは3億3千年後に戻ることになった。永遠の別れとなるタイムスリップする直前、ザムザは「私はお前を夫にしても良かった」と主人公にキスする。
  • 映画はいきなりここで終了する!まあ続編作る予定なので、わざと尻切れトンボにしたのだろう。でも教祖が浮気して教義に変更があった宗教だけあって、別のヒロインと恋仲になる映画を作るとは…。


なぜリベラル路線になったのか

幸福の科学の映画は保守寄りだった。尖閣諸島に上陸して撮影して外交問題にまでなった『尖閣ロック』や、侵略から日本を取り戻す『ファイナル・ジャッジメント』などがある。そもそも前作の『UFO学園の秘密』のラストシーンは「真の悪は中国(レプタリアン)だった!続く!」という終わり方だった。しかし今作では保守思想は消え失せ、逆にレプタリアンを受け入れるという物語になっている。
まあ教祖はアレでも作っている人たちはマトモなアニメ作家たちなわけだし。とはいえやはりこの方針転換は衝撃的だ。どうしてこうなったのか?俺の憶測なんだけど…。

  1. 大川隆法が作った最初の原作があまりにも酷すぎて、使い物にならなかった(後述する)。
  2. それで大川隆法は別の原作を作ることにした。内容はザムザと呼ばれる男のレプタリアンが改心する物語。
  3. ザムザの設定が使えると判断した脚本家チーム(個人の名前は発表されていない)が、ザムザをヒロインに変更する。
  4. さらに最近のアメコミ映画(マイティ・ソー バトルロイヤルとかアベンジャーズとか)を参照した脚本を仕上げる。

今回リベラル路線になった最大の原因は、幸福の科学の敵であった「レプタリアン」を同じ地球の仲間として描いている点だ。さらにリベラル寄りのアメコミ映画の影響を受けて「敵と仲良くなる」「移民を受け入れる」というストーリーに仕上がったのだろう。アメコミ参照ネタもパクリにならないように上手く処理している。まあ『アバター』の影響がちょっと大きいけど、幸福の科学にとって『アバター』は重要な映画なので仕方ないかな(異星人との文明交流という映画の設定が教義とマッチしている)。
あと幸福の科学映画は毎回クライマックスで演説があるんだけど、今までの映画だと妄想系専門用語が一杯出てくるので眠いことこの上なし。でも今作はわかりやすい言葉しか使ってないのも特徴的。



追記:コメントで散々ツッコまれましたが、本作は移民政策を推し進めるネオリベ的見解で大川隆法が以前から主張していた内容と一致しています。今回の映画はレプタリアン(幸福の科学の敵)との和解を描いている点が斬新です。

大川隆法が作った最初の原作はどれくらい酷いのか

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手塚治虫の影響を受けたという原作買って読んだけど本当に酷い。

  • 地球にグレイ型宇宙人がやってきて地球人を誘拐する。その対策を金星人たちが会議で考える。
  • グレイ型宇宙人は地球人を誘拐するときに、無重力光線を発射する。だから無重量光線を無効化する警備ロボットを開発する。その警備ロボットは全長20メートルで透明になれる。
  • 唐突に東北に大震災が発生するが、偉大なる日本人(大川隆法)が千葉を襲った大津波を念力で跳ね返す
  • その日本人はアメリカ人の美女とコンビを組む。
  • 二人は世界から支持されて、全世界の権力を手に入れて防衛兵器を開発する

これはちょっと使えない…。というわけで大川隆法はもう一回原作を作り直す。それがレプタリアンの物語だ。映画はこれが下敷きになっている。


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地球の全権限を手に入れて兵器開発。中二でも思いつかないストーリーだ。

その他雑感

  • 幸福の科学映画としては間違いなく上位にくる良作だった。
  • 「え?何でここ1,2年のアメコミ映画の影響があるの?」と思ったけど、本作の製作が本格スタートしたのは2018年春という超過密スケジュール。そりゃ確かに最近の映画の影響を受けるのも可能だわ。
  • 過密スケジュールのせいか、アクションシーンはちょっと物足りなさがある。
  • 本職の声優たちを使っているだけあって声優演技は充実。ザムザの声優を担当した千眼美子は芸能人枠とはいえ彼女もノリノリの名演技!
  • 大川隆法は金髪の白人に過剰な思い入れがあるらしく、偉大な人はたいてい金髪の白人なのだ。大川隆法の著作でも「金髪の白人」と外見に言及ある。

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  • 二週連続ナンバー1という大ヒットとなった本作。でも俺は映画が始まる前に座席一覧をキャプチャして実際の映画館の中と比較したけど、埋まってるはずの連席に人がいなかった。

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(これは客が少ない横浜ムービルなので、これでも混んでいるほう。ただし実際の劇場はさらに人が少なかった)