こんな麺、初めて食べた…!蘭州拉麺の進化系「西北拉麺」は麺が未体験の弾力で驚きが詰まっていた

日本に上陸したばかりの「西北拉麺(シーベイラーメン)」(東京都中央区日本橋蛎殻町2-2-2)を紹介します。西北拉麺とは、中国の福建省厦門(アモイ)に何百店舗も暖簾分けされている蘭州ラーメンの人気店。もとはムスリム(回族)向けのお店で、牛肉を使っておりハラール対応です。主なメニューは牛肉拌麺(ばんめん)、牛骨薬膳拉麺、海老拌麺。そのほか日本独自メニュー&夜限定の牛肉トマト拉麺もあります。麺は注文を受けてから打つのですが、その作り方が独特。西北拉麺のもととなる蘭州ラーメンと同じで、生地をビヨーンと伸ばしては半分に折りたたみ、また伸ばしては折りたたみ…を繰り返して作るのです。さらに、ゆでるのはたった10秒。ゆでてあるにもかかわらず、食べてみるとビニョーンと伸びるほど麺に弾力があります。手作りラー油や柑橘の香りがするお店オリジナルの香酢、ニンニクを入れても美味しくいただけますよ。日本にはなかなかない食感の麺を味わえるのはもちろん、ビヨーンと麺を伸ばして手際よく作られていく様子を眺められるのも楽しいお店です。(人形町・小伝馬町のグルメ中華

こんな麺、初めて食べた…!蘭州拉麺の進化系「西北拉麺」は麺が未体験の弾力で驚きが詰まっていた

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福建省厦門の西北拉麺を日本で食べられる店がオープン!

中国からやってきた手延べ麺の蘭州拉麺が大人気だが、そこからさらに独自進化を遂げたラーメンが日本に初上陸した。その名も西北拉麺(シーベイラーメン)である。

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▲場所は東京都中央区日本橋。駅でいえば水天宮駅、人形町駅も徒歩圏内。

この西北拉麺は料理名ではなく、中国の福建省厦門(アモイ)に何百店舗も暖簾分けされている人気店の名前。日本でいうとラーメンの来々軒とか蕎麦の長寿庵みたいな感じだろうか。

厦門は中国の南東部、台湾から海を挟んだ隣あたりに位置するのだが、ルーツである甘粛省蘭州が厦門からみると西北にあるため、西北拉麺という名前になったそうだ。

 


▲青いピンが厦門、オレンジのピンが蘭州。日本でいえば鹿児島で独自進化した札幌ラーメンみたいな話でしょうか。

 

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▲原点である蘭州が西北にあるから西北拉麺。

西北拉麺の看板メニューは2つ。汁なし濃厚牛肉まぜそばの「牛肉拌麺(ばんめん)」と、澄んだスープの牛骨ラーメンである「牛骨薬膳拉麺」。

厦門のソウルフードとも呼べる麺料理で、どちらもイスラム教徒が食べられるハラール食材を使っているのが特徴。元々この西北拉麺は、イスラム教徒である回族の店なのだ。

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▲汁無しと汁有りがあって、現地では汁無しがスタンダートとのこと。

この店のオーナーである増渕さん(日本人)の本業は、なんと墓石屋さんであり、飲食店の経験は今までゼロ。墓石工場のあった厦門で、西北拉麺にハマってしまったのが出店させたきっかけだ。

どうしても日本で西北拉麺の店を出したいと思った増渕さんだが、イスラム教の回族とは部族も宗教も違うため、最初は当然門前払い。それでも現地の方を熱心に説得して日本出店の許可をどうにかもらうと、日本で働いていたベテラン中国人コックを雇って厦門へと半年間の研修に派遣し、ようやくオープンさせた店なのである。

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▲海老拌麺、牛肉トマト拉麺は日本オリジナルメニュー。友人と3人できたので全部食べます。

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▲紙エプロン、髪ゴムなどの用意もあり、ラーメン店ながら女性客も多い。

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▲どのメニューも普通サイズの並盛と麺1.5倍の大盛が同一料金。なにも考えずに並盛を購入したのだが、食券を出す時に店員さんが確認してくれて無事大盛にチェンジできた。

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▲ビールはうれしいおつまみ付き。

 

茹で時間は驚異の10秒!これが西北拉麺の作り方だ

料理の注文を受けてから麺を打つのは、蘭州拉麺と同じスタイル。ただその作業工程は、私が食べたことのある蘭州拉麺の店とは少し違った。

ここから先はプロレスの実況風に早口な文字で説明をさせていただこう。どうぞ、お好きなアナウンサーの声で脳内再生してください。

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▲麺を打つのは劉日波(リュウ リーボウ)さん。

「全国1億2000万人の麺類ファンの皆様、こんばんは。さあ西北拉麺の厨房に食券という名のゴングが鳴らされました。注文は一番人気の牛肉拌麺大盛りであります。はるばる本場福建省厦門の西北拉麺で半年間の修行を終えた劉選手が持つ生地は、小麦粉に水だけを加えて攪拌機で捏ねて一晩寝かせたものだ。なんでも日本で手に入る小麦粉を使って西北拉麺独特の麺となる生地を作るために、何種類もの粉を試し、複数の粉を混ぜることで完成させたジャパンオリジナルブレンドだという情報が入っております」

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▲粉と水を混ぜる、ミキサーと呼ばれる攪拌機。

「ここで劉選手が手にしたのは、中国から運ばれてきたベージュ色の強力な機械だ。向かい合って回転する2つのローラーの間に何度も生地を通しつつ、西北拉麺のために配合された本場のかんすい(中華麺に入るアルカリ性の食品添加物)を練り込んでいきます。人間の力を楽々と超えたパワーで生地を鍛えに鍛えまくるこの機械、これはまさに西北流スーパーストロングマシンだ!」

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▲生地を入れる滑り台みたいなところに液体のかんすいを掛けて生地に練り込んでいく。

「おおーっと、充分にグルテンを鍛え上げた生地が、ここで油を塗られた作業台にリングインしました。まさかのオイルデスマッチに突入であります。さあ生地の表面に油を行き渡らせると、掌でゴロゴロと転がして棒状に丸め、それをやすやすと3倍の長さに伸ばしてみせた! 生地をの変幻自在に操る姿は、さながら製麺界の金太郎飴職人か!」

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▲油を引いた作業台でコロコロと棒状にする。

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▲ビヨーンと伸びた!

「この滑らかに伸ばした生地をスケッパーでギロチンドロップ。一人前の分量にカットすると、おっとここで目つぶしならぬ、くっつき防止のパウダー攻撃だ。打粉の小麦粉を生地全体にまぶしたぞ。そして一気に両手いっぱいまで伸ばす! でました、厦門と日本の長すぎる架け橋!麺生地が美しいブリッジを描いた!」

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▲見ただけでわかる生地の滑らかさがすごい。

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▲打粉を全体にまぶす。

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▲ビニョーン。

「この両手いっぱいに伸ばした生地を、今度はラ・マヒストラルも真っ青の丸め込みをして、右手の指一本で伸ばしてみせた! これぞゴールドフィンガー2018! こうして2本となった生地が、圧倒的なスピードと的確な技術で次々と伸ばされていきます。2本が4本、4本が8本、8本が16本、16本が32本、32本が64本、でました驚異の6回連続64本伸ばし! そしてそのまま熱湯へボイルドウォーダースープレックス! これは決まった―!」

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▲伸ばした生地を左手で束ね、右手で伸ばしていく。

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▲簡単そうに見えるけど、絶対にできないやつだ。

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▲あっというまに64本に!

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▲そのまま熱湯へ。

「さあボイルカウントが入ります! 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10! カンカンカン! 茹で時間は僅か10秒! 博多ラーメンのバリカタも真っ青の10秒チャージが完了。生地が作業台へとリングインしてから茹であがりまで、僅か1分の早業、いや神業であります! これが日本初上陸、西北拉麺の実力なのかー!」

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▲なんと麺の茹で時間は10秒!

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▲チャンピオンベルトではなく、特製ソースと具がその腰に掛けられました。

以上、実況は終了です。ありがとうございました。

はい、満足しました。

 

麺の弾力がものすごい!

こうしてあっという間にできあがったのが、一番人気の牛肉拌麺の大盛り。具は牛肉のソース、細ネギ、ザーサイ、パクチー(抜きも可)で、牛骨薬膳拉麺と共通のスープがついているのがうれしい。

ちなみに日本向けのアレンジは一切しておらず、オーナーが惚れこんだ本場の味そのままとのこと。

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▲盛り付けがかわいい。

この料理をおいしく食べるコツは、出てきたらとにかく早くかき混ぜること。拌麺の「拌」は撹拌(かくはん)の拌。麺同士がすぐにくっついてしまうので、牛肉ソースを手早くかき混ぜないと一塊になってしまうのだ。

もし写真を撮りたい場合は、カメラの電源を入れてあとはシャッターを押すだけという状態で待ち、一気に撮ってさっさと食べよう。もし出されてから10秒でも経てば本来の料理ではなくなってしまうということは、私の経験として断言できる。

ということで、上の写真撮影後に別途作ってもらったもの(すみません)をいただきます。

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▲出されたらすぐに混ぜましょう。

それではいただきまーす!と箸で麺を持ち上げたのだが、これが長い。

麺作りの作業で麺を切るという工程がないため、繋がった一本の麺になっているようだ。

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▲長いなー。

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▲なので麺を切るハサミなんていうのも用意されています。

こりゃおもしろい麺だなと思いつつ口に運ぶと、その食感にびっくり仰天。目の前で劉さんが麺を伸ばしていたのと同じ現象が、口と箸の間で起きたのである。

そう、麺がビニョーンと伸びたのだ!

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▲ビニョーン。

もちろん茹でてある麺なので、倍の長さに伸びるという訳ではないのだが、引っ張ればどこまでも伸びるんじゃないかと思ってしまう弾力なのである。今までに様々な麺料理を食べて来たけれど、これには心から驚いた。

どっちが優れているという話ではないが、これは私が知っている蘭州拉麺の麺とは全く違う種類のものだ。日本でもラーメンの麺がいろいろあるように、中国の手延べラーメンにも様々な種類があるんだなと感心させていただいた。

小麦粉とかんすいと水という、一般的な中華麺の材料と同じものを使い、その製法や配合の妙技によって、ここまで個性的な麺を食べさせるとは。恐るべし、中国粉もの文化の奥深さである。

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▲手作りの辣油やニンニク油、この店独特だという香酢などで味を変えるのもオススメだそうです。

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▲この辣油がまたうまいんだ。

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▲この店オリジナルだという香酢は、柑橘のようなマイルドな酸味で、そのままでも飲めそうな味。

牛肉拌麺のソースはしっかりと血抜きがされた牛肉をメインに、花椒などの香辛料、草果といった漢方でも使われる食材、そしてたっぷりのショウガが入ったもの。あっさりとした味のため、大盛りでもペロリと食べられる。途中からサービスのスープを有効活用し、つけ麺にして食べる人も多いとか。

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▲香辛料や漢方の食材をたっぷりと使うのが西北拉麺の特徴だ。

 

牛骨薬膳拉麺、海老拌麺、牛肉トマト拉麺もうまい!

せっかくの機会なのだからと、残る3種類の麺料理も試したのだが、どれも個性的でおいしかった。

牛骨と牛肉をベースにして、香辛料や漢方の食材を加えて長時間煮込んだスープの牛骨薬膳拉麺は、うれしい角切りの牛肉入り。牛肉拌麺と同じ麺でも、その印象はかなり変わるかも。

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▲汁がある麺もうまいよねー。

中華料理で珍重される干し海老をたっぷりと使った海老拌麺は、生ではなく干した海老だからこその香りがしっかりと堪能できる。乾物の深い味わいが好きなら超オススメ。

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▲干し海老ってこんなに味と香りが濃いのかと驚いた。

そして夜限定の牛肉トマト拉麺は、まさに西北拉麺の進化系。日本オリジナルのメニューであり、トマトの旨味が加わった濃厚な味は、本場の厦門でも食べられない一杯だ。

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▲同行いただいた麺好きの友人はこれが一番好きとのこと。

もちろん味付けを含めて楽しませていただいたのだが、この店の主役はあくまで作り置きのできない手延べの麺にあると思う。

目の前で手際よく作られていく様子を楽しみ、そして経験したことのない弾力を味わうという贅沢が堪らない。

西北拉麺、はるばる福建省から来てくれてありがとう。

 

紹介したお店

西北拉麺
住所:東京都中央区日本橋蛎殻町2-2-2
お店の公式Twitter:西北拉麺 (@shiibei_ramen) | Twitter

 

著者プロフィール

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著者 玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。

ツイッター:@hyouhon
ホームページ:私的標本
製麺活動:趣味の製麺

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