2012.02.02
# 雑誌

知っておくだけで全然違います!M8M9大地震そのとき最悪の場所にいても「生き延びる」方法を教えます

 地下鉄に水が入ってきたら、高層ビルのエレベーターに閉じ込められたら、モノレールが海の上で止まったら・・・・・・ほか

 近い将来、首都圏を襲うM8M9大地震。そのとき、どんな場所で揺れに襲われるかは誰にも選べない。「ここでだけは地震に遭いたくない」と思うような状況で被災したら、どうすればよいのか。

水の少ないうちに上を目指す

■地下鉄に水が入ってきたら

 首都圏大地震の際、地下鉄では、ゼロメートル地帯にある地表の換気口などから津波の水が浸入する可能性があることは、これまでも取り上げてきた。

 だが、換気口以外にも地下鉄に水が入る可能性のある経路は複数ある。

 実は、3・11の際には、東京メトロ飯田橋駅につながる地下道に水が流れ出すという事態が発生していた。現場は東西線と南北線・有楽町線の改札間を結ぶ地下通路と商業施設「ラムラ」の入るビル、飯田橋セントラルプラザの接続口だ。同ビル管理部によると、

「このあたりでは四谷方面から来ている水路が地下を通っているので、基本的に水気があるのです。原因は特定できていないのですが、地震の影響でその水路からの水が溢れ出た可能性が一番高いと思われます」。

 首都圏の地下鉄は、皇居の堀や道路の下に隠れている河川、水路の下を通っている。大震災時に、これらの場所で大規模な水漏れが起こる可能性は否定できない。

 危険なポイントはほかにもある。都市防災の専門家でまちづくり計画研究所所長の渡辺実氏は指摘する。

「地下鉄が地上に出る場所から水が入る可能性があります。特にそれがゼロメートル地帯や河川のそばにある所は危険性が高いでしょう。たとえば東西線の東陽町駅近くの地上車庫への出入り口や、南砂町駅の東にある荒川中川橋梁に向かう出入り口。満潮時などにこの近くの堤防が崩れれば、津波が来なくても地下鉄に簡単に水が入ってしまう。川の近くのトンネル内には防水扉が設けられていますが、水を100%遮断できるわけではありません」

 政府の中央防災会議は台風や集中豪雨による荒川の決壊を想定して、地下鉄の浸水シミュレーションを行っている。それを参考に本誌が作成したのが次ページの図だ。グラフは各路線の線路の標高を表している。

 もし荒川の堤防の一部が地震で崩れ、南砂町・東陽町付近から東西線が浸水したらどうなるのか、シミュレーションしてみよう。まずトンネルが深くなる木場駅近辺に水が溜まり始める。東陽町駅が水没する頃には、ほぼ同じ深さにある門前仲町駅が浸水。さらに東西線の下を走る大江戸線に水が浸入する。

 ここから水はより低い月島駅方面に流れて行き、有楽町線へと進んで、豊洲・辰巳駅方面まで水が到達する可能性も考えられる。

 では、もし自分の乗った地下鉄の車両が、浸水の始まったトンネルの駅と駅の間で止まってしまったら、どうすればよいのか。

 災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は「あるレベルまで水かさが増せば、駅に到達することは困難になります。ただ、そうなるまでには相当の時間があるはず」という。

 万が一、乗務員の指示誘導が受けられない最悪の状況で浸水が始まったら、水かさが増す前に線路に降り、とにかく高い方向目指して逃げることだ。図からもわかるとおり、トンネル内にはエリアによって、かなりの高低差がある。低い駅から高い駅に1駅移動するだけで被害を免れる可能性は高くなる。いつも自分が利用している駅周辺の高低差を確認しておくだけでも、助かる確率はグンと上がるはずだ。

 高低差のチェックには、内閣府ホームページの防災情報のページにある「大規模水害対策に関する専門調査会」内の「地下鉄等の浸水シミュレーション」なども参考になるだろう。

 ちなみに地下鉄トンネル内には「避難口はない」(東京メトロ広報部)ため、地下から脱出するには、とにかく駅を目指すしかない。トンネル内には、足元の壁面に最寄り駅の方向と距離を書いたプレートが貼られている。最寄り駅が近い場合は、水量の少ないうちに急いでそちらを目指し、駅から地上に出るとよい。

 駅に着いても安心してはいけない。地上までは階段か、停電で止まったエスカレーターを歩いて登る必要があるが、多くの人が殺到すると、将棋倒しが起こり、圧死者が出る恐れもある。特にエスカレーターは、階段に比べて一段の段差が高いため転倒する可能性が増す。階段を使ったほうが安全度は高いだろう。

■モノレールが海の上で止まったら

 東京モノレール広報は、

「震度5強以上の場合は緊急停止し、作業員が車両とレールを点検します。それで異常がなければ、次の駅まで徐行します」

 と話しており、3・11でもこうした対応が取られた。だが、これは設備に大きな損傷がなかったためにできたことだ。震災の約1ヵ月前、2月4日に品川変電所でボヤ騒ぎがあった際には約2時間にわたって送電を回復できず、乗客が車内に閉じ込められる事態が起きている。首都圏が大地震に見舞われれば、さらに長時間の閉じ込めを覚悟しなければならない。

 車体がレールから吊り下げられた懸垂式の千葉モノレールでは、先頭の運転席前部にある扉から布製スロープを下ろして脱出する方法も用意されている。

 一方、車体がレールの上を跨ぐ跨座式の東京モノレールの場合は、隣の線路が使えれば、別の車両を横付けして橋渡しして乗り移る。もしそれが無理ならば、駅係員が人力で動かす手押し工作車が来るのを待って、車両の前後端にある扉から数人ずつが乗り移り、最寄り駅に移動するか、地上から消防のはしご車などで救助してもらうしかない。

 だが、東京モノレールは複数の運河の上を通っている。もし海の上で車両が停止すれば、地上からの救助も期待できない。モノレールで被災すれば持久戦になることは避けられないのだ。まずは慌てず、じっと座って体力を温存することが重要だ。前出の和田氏も、自分でできることは少ないという。

「夏場にモノレールに乗るならば、熱中症対策もかねて、ふだんからペットボトルを持ち歩く習慣をつけておくとよいでしょう」

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