「月収が高い業界」ランキングTOP10

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産業別の月収ランキングで1位になったのは航空運輸業 (撮影:尾形文繁)

業界ごとの月収や賞与、勤続年数、残業時間などを調べるにはどうすればいいか――。

大学3年生や大学院1年生の中には、半年先に迫った就職・採用活動の解禁に備えて、業界研究や企業研究を始めた人も多いだろう。インターンシップなどの体験を通し、自分に合った職業や業界についてのイメージができてきた人もいると思う。そうなると、希望する企業や業界が現在どのような給与水準で、どの程度の残業時間なのか、という情報を知りたいと考える人もいるだろう。

産業別に給料から残業、平均勤続年数を一覧


業界ごとの賃金や労働環境を知る資料のひとつとして、厚生労働省が毎年発表している「賃金構造基本統計調査」がある。労働者の賃金の実態を把握するために作成している統計で、産業別、従業員数別、男女別、年齢別、学歴別の月収や賞与など賃金の状況が記載されている。これに加えて、労働者の労働時間や残業時間、平均勤続年数といった情報も記載されており、業界の給与水準や労働環境を類推することができる。

この賃金構造基本統計調査の中に、業界(産業)別の給与や労働時間をまとめたデータがあり、それを用いて作成したのが、「産業別の給料・勤続年数・労働時間ランキング」だ。

使用したデータは、「産業中分類別の給与額の状況」というデータ。企業規模10人以上の事業所の勤務者(男女計)が対象で、一般労働者(フルタイムで働く労働者で正社員か非正社員かは問わない)の数字となっている。産業分類は上から2番目の階層にあたる中分類を表記している(「民・公営合計」の分類は除外)。政府が作成した産業分類に基づいているため、少しイメージがつきにくい名称もあるが、90以上の産業に区分けされている。

これに全産業平均を1行追加したうえで、平均月収(控除前の金額で、残業代や休日出勤手当など所定内給与以外の額も含まれる)の多い順に並べたのが、今回のランキングである。なお、残業時間や平均勤続年数などについては、上位10位を赤字、下位10位を緑字で表記し、傾向を一目でわかるようにした。

なお、年収については、賃金構造基本統計調査には記載がないが、平均月収を12倍(12カ月分)し、それに「年間賞与等」を加えた数字を年収として記載している。ぜひ参考にしていただきたい。

その結果、月収ランキングの1位は、航空運輸業となった。平均年齢42.3歳で58.38万円。残業時間(超過労働時間)も6時間と少ない。

2位は金融商品取引業、商品先物取引業だ。文字どおり、金融商品や先物の取引を仕事とし、投資コンサルタントやファンドマネジャー、金融ディーラーなども該当する。月収の56.34万円に加えて、年間賞与が288.53万円と高額な数字であり、年収では最多となった。賞与がこれだけの高水準になるのは、成果報酬的なものも含まれている可能性があるためだろう。

3位は電気業(月収50.46万円)。電力会社などが該当する。4位の各種商品卸売業(48.34万円)は、主に商社であり、総合商社や貿易商社などもここに含まれる。

一方、下位を見てみると、下から洗濯・理容・美容・浴場業(24.11万円)、持ち帰り・配達飲食サービス業(24.17万円)、社会保険・社会福祉・介護事業(24.42万円)となっている。

福祉介護や教育、宗教関連は残業も少ない

所定内労働時間を見ていこう。ランキングを見ると、給与の多い産業ほど労働時間が少ない一方、給与が少ない産業ほど労働時間が多いことがわかる。つまり、賃金と労働時間は、逆相関になっている。賃金が低く労働時間が多い産業の多くは、労働集約的な産業であり、収益を確保するためには賃金を抑え、”拘束時間”を長めにする傾向があるようだ。

残業時間については、道路貨物運送業(33時間)、道路旅客運送業(28時間)が多い。トラックやバスのドライバーがほとんどを占めるこれらの業種は、所定内労働時間も170時間を超えており、かなり厳しい労働環境であるといっても過言ではない。

一方、残業が少ない産業としては、宗教(3時間)、社会保険・社会福祉・介護事業(4時間)、学校教育(4時間)など。ただ、あくまでも統計上の数字で、サービス残業などは含まれない。最近では、教員の部活動などの時間が労働時間に参入されていないという現状もあるので、学校教育で働く人の実態はもう少し残業時間が多いと思われる。

また平均年齢では、道路旅客運送業が54.3歳と、かなり高い数字となっている。タクシードライバーなどが中心だと思うが、かなり高齢化が進んでいる状況だ。

平均年齢が若い産業としては、インターネット附随サービス業(34.1歳)、職業紹介・労働者派遣業(38.3歳)など、平均年齢が30代の産業は12あり、ここには銀行業(39.4歳)も含まれる。銀行の行員はある程度の年数に達すると、融資先の企業に転職するケースが多く、そうした影響が平均年齢の低さに表れているのかもしれない。

他方、平均勤続年数の上位は、電気業(20.6年)、石油製品・石炭製品製造業(18.8年)など、比較的給料の高い産業が多い傾向がある。その反面、下位は職業紹介・労働者派遣業(4.1年)、インターネット附随サービス業(4.7年)など、平均年齢の若い産業が名を連ねている。ちなみに給与水準が低い産業は、平均勤続年数が低い傾向にあるようだ。こうした産業については、従業員の定着率を上げるためにも、給与水準の底上げが急務といえるだろう。

なお、産業全体の平均は、月収33.37万円、賞与89.42万円、年収489.9万円、平均年齢42.2歳、平均勤続年数11.9年、所定労働時間164時間、残業時間は13時間、となっている。自分が気になる産業と比較する参考にしてもらいたい。