SNS上で先日、「ソーシャルゲームで遊ぶ際に気を付けた方がよい4つのこと」が話題になりました。その4つは「束縛されない」「他人のスクリーンショットをうらやまない」「遊んでいて楽しいかどうかよく考える」「クレジットカードを使わない」というもの。投稿者の「全部守れなかった結果、楽しさより虚しさの方が大きい」との感慨に、「その通り」「もう手遅れ」などの声が寄せられました。

 この「4つのこと」は本当に有効なのでしょうか。オトナンサー編集部では、青少年とインターネットの関係に詳しい、作家でジャーナリストの石川結貴さんに聞きました。

生活が破綻した人たちの共通項?

Q.投稿された4つの注意点は実際に有効でしょうか。また、その理由は。

石川さん「有効です。この4つは、逆に言うとソシャゲで陥りやすい4つの問題なのです。つまり『束縛される』『他人をうらやむ』『遊んでいるうちだんだんつらくなり、義務感に苦しむ』『つぎ込んだお金を取り戻そうとさらにハマっていく』。投稿者は、これらを経験したからこそ、この4つを挙げたのでしょう。これまで、ソシャゲにのめり込んで、生活が破綻した人たちを取材してきましたが、彼らにはいくつかの共通項がありました。基本的にまじめ、責任感が強い、負けず嫌い、寂しがり屋、現実生活で何らかのコンプレックスがある。まじめで責任感の強い人がソシャゲを始めると『努力すればもっと強くなれる』と思い込んだり、『チームや仲間の役に立ちたい』とひたすら頑張ったりします。負けず嫌いの人は、力を見せつけようとランキングにこだわったり、レアアイテムや装備品を自慢して優位に立ちたがったりします。寂しがり屋の人は、一緒にソシャゲを進める仲間の評価がうれしく、チーム内で称賛されたり、頼られることで大きな喜びを感じたりします。最後に、何らかのコンプレックスや、学校や仕事でうまくいかないことを抱えている人にとって、ソシャゲの『成功体験』は自信になるのです。仲間ができ、目に見える評価が得られ、自己顕示欲も満たされます」

石川さん「これらは、最初のうちは興奮や快感を呼びます。仲間から『強いね』と称賛されれば誰だってうれしい。チームの仲間から『おまえがいるから勝てる』と頼られれば、もっと頑張ろうという意欲も湧きます。一方、責任感の強さや負けず嫌いな部分がリスクを招くことも多いのです。自分は止めたいと思っても仲間のために止められない。対戦に負けた悔しさや、ガチャを外し続けた怒りがたまりやすい。『こんなはずじゃなかった』『今度こそ取り返してやる』とさらに熱くなり、自分を見失ってしまいます。だからこそ『束縛されない』『遊んでいて楽しいかどうかよく考える』ことが大切なのです」

自覚があれば「手遅れ」ではない

Q.すでに「手遅れ」と思う人は、どのような対策が有効でしょうか。

石川さん「『手遅れ』という自覚がある時は、まだ手遅れではないのです。『もう自分はダメかもしれない』『手遅れ』と感じたら、それは自分を見直すチャンス。なぜ束縛されるのか、他人をうらやむのか、義務感に苦しむのか、課金してしまうのか。『手遅れ』と感じている人には、こうした状況を客観的に整理して考えることをオススメします。もしかしたら、個人の弱さや生活背景が要因かもしれません。仮にそうであれば、自分の不満やコンプレックスが本当にソシャゲで解決できるのか、一度立ち止まって考えましょう。また、ソシャゲがどのように作られているかという視点を持つことも大切です。そもそもソシャゲの多くは、プレーヤーに『集団化』『力関係』を与えるように作られています。たとえば『コミュニケーション』『コミュニティー』はプレーヤー同士がつながったり、ゲーム上でチームを組んだり、リーダーが率いる組織を作ったりすることです。組織を作って所属させ、評価や地位を明示して互いに競わせる。これは、現実世界の学校や会社に類似しています。一見、個人で楽しんでいるように思えても、ソシャゲの本質は現実の『同調社会』『競争社会』に似ているのです。だから、義務感に縛られたり、他人をうらやんだり、周囲に合わせようと頑張りすぎたり、負けたくないという思いからのめり込んでしまったりするのです。こうしたソシャゲの特性を知った上で、今の自分の状況を冷静に考えてみましょう。自分の意思でやっているように思えても、本当は『やらされている』のかもしれない、という視点を持ちましょう。自分の時間や生活、お金を注ぎ込むだけの価値があるのかどうか。自分の状況を振り返り、ソシャゲの特性や本質について考えてみるのが、『手遅れ』から脱出する第一歩です」

(オトナンサー編集部)