10月1日、スタートトゥデイの前澤友作社長は自身のツイッターで送料を自由化すると発表した(写真:ZOZOTOWNホームページより)

0円から3000円まで、客が自由に送料を決められる――。ファッションECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」は10月1日から、「送料自由」という異例の取り組みを試験的に開始した。

ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイの前澤友作社長は10月1日、ツイッター上で「本日よりゾゾタウンの送料は、お客様のお気持ちやご都合で自由に決めていただけるようになりました」と投稿。前澤社長はこの数日前から、「通販・EC業界初の前代未聞の試み」となる送料変更を実施すると予告していた。

0円を選択した注文は全体の4割程度

送料はいくつかの選択肢から選ぶプルダウン式か、自由記入のどちらかで設定できる仕組み。プルダウン式の場合は100円から1500円まで100円刻みで選ぶことができ、自由記入の場合は0円から3000円までの間の金額を1円単位で指定できる。何も選択しなければ、自動的に400円の送料がかかる。

9月末までのゾゾタウンの送料は、購入代金が4999円以上の場合に送料が無料で、それ未満では399円かかっていた。それが今回の取り組みだと、購入金額が4999円未満でも送料無料で受け取ることができる。

送料無料も選択肢に入るのであれば、多くの人は「0円」を選ぶはず。そう思いがちだが、実際には「0円」を選択した注文は全体の38%にとどまった(10月2日12時〜19時の平均値)。

自由記入で0円を指定できると知らずに、プルダウン式で最安値の100円を選んだり、送料設定をしないままデフォルトの400円がかかったりした購入者が含まれる可能性もあるが、6割以上の注文で送料が支払われたというのは意外な結果といえる。

だが、話はそう単純ではない。実はスタートトゥデイが宅配を委託するヤマト運輸に支払う料金よりも、客が支払った送料の金額の方が高かった注文は、全体の0.2%にすぎなかった(同期間の平均値)。

つまり、99.8%の注文では、スタートトゥデイがヤマト運輸に支払う料金よりも、安いもしくは同等の金額の送料が選ばれたというのだ。送料「0円」は選ばなかったとしても、大半の客は100円など低めの金額を設定した可能性が高い。


スタートトゥディの前澤友作社長(写真:前澤友作社長のツイッターページより)

客の設定した送料と、スタートトゥデイが配送を委託するヤマトに支払う料金の差額については、スタートトゥデイ側がすべて負担する。今回の「送料自由」の取り組みはあくまで試験的なものと位置づけていることから、「業績への大きな影響は考えていない」(スタートトゥデイ広報)という。

試験運用とはいえ、なぜゾゾタウンは送料自由化を実施したのか。送料をめぐっては、ゾゾタウンにとって苦い思い出がある。2012年、ツイッター上でゾゾタウンの送料が高いと投稿した購入者に対し、前澤社長が「タダで商品が届くと思うな」などと反論。この件でツイッターが炎上し、前澤社長は謝罪する事態となった。

商戦期を前に送料見直しも

その後、いったん全品送料無料と方針転換したが、2014年10月に3000円未満は350円、2015年11月には4999円未満は399円と、送料変更を段階的に実施。少額商品の注文が増えて出荷単価が下がり、物流費の負担が増したことなどが背景にあったとみられる。

こうした経緯の中で、今回の送料自由化に至った。明確な導入理由は明かにされていないが、前澤社長はツイッターで「自由に価格を決めていただくことで、運ぶ人と受け取る人との間に、気持ちの交換が生まれれば素敵だなと思います」と投稿している。

ただ、いつまで送料自由化を続けられるかはわからない。ゾゾタウンの配送を一手に引き受けているヤマトは、10月1日から宅配便の値上げに踏み切った。ネット通販などを展開する大口の法人顧客とも運賃改定に向けた交渉を進めているが、多くの顧客は値上げを受け入れている状況だ。


ヤマト運輸はゾゾタウンの配送を一手に引き受けている(撮影:大澤 誠)

ヤマトに支払う運賃が値上げされれば、ゾゾタウンにとって影響は小さくない。これまでも同社は、ヤマトの方針に沿って当日配送や一部時間帯の指定配送を取りやめるなどの措置をとってきた。今後、運賃の値上げに伴い、送料見直しを行う可能性は十分考えられる。

一定期間の送料自由化を行えば、注文額に応じてどこまでの送料をためらいなく支払うか、などといった消費者の傾向を見極めることができる。それを踏まえてゾゾタウンがどのような判断を下すか。同社にとって商戦期である年末シーズンまで送料自由化を継続するかが、一つのポイントになりそうだ。