Amebaクリエイティブディレクターが選ぶ!
今月のオススメアプリ5選(2017年9月版)

2017年10月4日
執筆:佐藤 洋介(株式会社サイバーエージェント)

■今月はiOS11のリリースで注目度がアップした”AR”にフォーカス!皆様こんにちは。先日約半年ぶりにバイクに乗りました。駐車場のシャッターを開けるためのリモコンのランプが赤く光っていたので、家に替えの電池を取りに戻ったのですが、電池を入れ替えてもランプは変わらず赤でガックリした佐藤です。
さてこの連載では、Ameba内でも話題になった気になるオススメアプリを、UIデザインの観点から紹介させていただきます。今月は、iOS11のリリースを皮切りに増えてきたAR系のツールアプリにフォーカスし、「便利」さと「分かりやすさ」について考察してみたいと思います。

▷【イメージ通りに描ける!!】曖昧なストレスを軽減

1.LightSpace - 3D painting in AR
価格:無料(2017年10月4日現在)
落書きしたくなる度:★★★★★

カメラを通した空間に3Dペイントができるアプリ「LightSpace - 3D painting in AR」。AR空間にオブジェクトを描写するペイント系のアプリは数多く存在するが、このアプリで特筆すべきはそのドローイングの仕方にある。多くのアプリが画面上で指を使ってドローイングするのに対し、このアプリでは画面に指を置いたままスマホを持った腕を動かすことで、スマホ自体が擬似的なブラシとなり、空間に対して自由にドローイングできるのである。

画面上に指で描く方法だと、どうしても位置関係や奥行きが曖昧になりがちだが、実際のスマホを現実世界と拡張世界のハブにすることで、思い通りの場所に立体的なドローイングができるようになり、AR特有の曖昧さに対するストレスが解消されている。

▷iPhone: LightSpace - 3D painting in AR


▷【室内から天気を俯瞰!?】現実世界に仮想世界をオーバーラップ

2.アメミル
価格:無料(2017年10月4日現在)
雨の日が待ち遠しくなる度:★★★★★

リアルタイムの降雨情報が確認できるアプリ「アメミル」。その名の通り急な雨雲の接近や、現在地の天気を見るのに最適なこのアプリだが、注目すべきはiOS11に対応した便利な新機能「サテライトアイ」だ。

従来のアプリでも、拡張モードにより部屋の中にいながら雨雲を確認することができたが、上空からの視点が加わり、さらにそこに仮想の気象情報をオーバーラップさせることで、箱庭のような感覚で雨雲や降水量を眺めることができる。情報をオーバーラップさせた現実世界を外側から見せることで「情報の所有感」を演出し、ユーザーが情報を俯瞰して多角的に見られるようにしているのである。

▷iPhone: アメミル
▷Android: アメミル

▷【生きてる天気予報!?】毎日チェックしたくなる工夫

3.CARROT Weather
価格:600円(2017年10月4日現在)
毎日会いたくなる度:★★★★★

CARROTと呼ばれる可愛いロボットが天気予報の確認をサポートしてくれる「CARROT Weather」。このアプリでは、CARROTを実際に現実世界にオーバーラップさせる「AR Mode」が面白い。部屋の中のスキャンが完了すると丸いロボットが現れて周囲に天気情報を表示してくれるのだが、別の場所をタップした際に追随する様子がまるでペットのようだ。

1時間ごとの天気を横スクロールで1週間分確認することができ、上部のイラストやCARROTがつぶやくセリフもまた印象的である。操作のサポートが音声で流れるため、次に何をして欲しいのかが明確にわかるのも使い勝手の向上に寄与している。

▷iPhone: CARROT Weather

▷【まるでジオラマ!】情報をワクワクに変える

4.Fitness AR
価格:360円(2017年10月4日現在)
ジオラマ度:★★★★★

ランニングコースを3Dで見ることができるアプリ「Fitness AR」。テーブルなどの上に仮想の3Dマップを置き、ラインの引かれたコースの高低差や距離感を箱庭的に見ることができるこのアプリだが、仮想マップにスマホを近づけることで、実際にマップに近寄ることができるUIが非常にわかりやすい。

このように、オブジェクトを現実世界に投影するメリットは、情報を俯瞰して眺めたり、360度自由な視点から内容をじっくりと見極めることができる点だ。また、手に持ったスマホをオブジェクトに近づけたり回り込んだりする直感的な操作が、仮想現実をより身近なものにしてくれるのである。

▷iPhone:Fitness AR

▷【ホームズくん大活躍!?】可愛さと分かりやすさの融合

5.LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)
価格:無料(2017年10月4日現在)
部屋以外も測れる度:★★★★★

賃貸物件や購入物件を探すことができる総合不動産情報アプリ「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」。物件探しがメインのこのアプリだが、物件見学時のために設けられている、iOS11のARkitに対応した「ARお部屋計測」という機能が面白い。

カメラを部屋の角に向けてぐるりと一周させると、それに合わせてホームズくんがトコトコと歩いて平面図を作成してくれるのだが、この歩く演出が「計測してくれている」という実感を与えてくれる。ARという仮想的な事象に対して操作の進捗を分かりやすく可視化し、親しみやすい演出で心的不安を軽減することは、ユーザーに安心感を与え、利用ハードルを大きく下げてくれるのである。

▷iPhone: LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)
▷Android: ライフルホームズアプリ

▷仮想世界と現実世界のオーバーラップが生み出す、新しいAR体験

今回紹介したアプリはどれもARという「仮想的な体験」をユーザーにとってより意味のあるものへと昇華させているが、その機能はいたってシンプルなものばかりであった。仮想という曖昧な事象に対し、ユーザーにその素晴らしさをダイレクトに伝えるためには余計な迷いがあってはならない。
現実世界とのオーバーラップは、普段から行う所作や、慣れ親しんだ行動にアプリ操作に紐づけることができるので、操作時の迷いを軽減すると同時に、曖昧な事象をユーザーにとっての明確な結果へと結びつけるインターフェースとなるのである。

[筆者プロフィール]
佐藤 洋介(さとう ようすけ)
クリエイティブ 執行役員|チーフ・クリエイティブディレクター

「Ameba」のクリエイティブ統括室 室長。インターネットテレビ局「Abema TV」や、音楽配信アプリ「AWA」、キュレーションメディア「Spotlight (スポットライト)」、無料ホームページサービス「Ameba Ownd」など、主にユーザー向けのメディアサービスのデザイナーを統括し、クリエイティブ責任者として各サービスのUIデザインを監修。

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