アングル:ペット残しての避難拒否、ハリケーン被害の米住民

Marianna Parraga
[ヒューストン(米テキサス州) 28日 ロイター] - 米南部テキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」が引き起こした洪水によって避難を強いられた住民の多くは、貴重品だけではなく、犬や猫、鳥などのペットを連れて逃げていた。
「救助ボートから降りる人はみな、犬か猫を抱いていたようだった」。ヒューストン動物愛護協会のモニカ・シュミットさんはそう語る。
ハリケーン「カトリーナ」が南部ニューオーリンズに大きな被害をもたらした2005年には、ペットを残しての避難を拒否する住民がいた。災害対応の専門家はそれ以来、ペットを連れて避難する重要性を強調している。アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)によると、災害対応の連邦政府ガイドラインには、ペットも含まれている。
だが、大規模避難所となったヒューストンのコンベンションセンターでは27日、ペットを巡る対応について混乱と怒りが広がっていた。
犬を連れた住民数十人が、避難所の中にペットは入れないと告げられたり、動物向けサービスは提供していないと言われたりした。ロサナ・ナゲラさん(27)もその1人で、夫と交代で、雨のなか震える飼い犬の世話をしていたという。
28日朝には、コンベンションセンター内の指定された場所にペットが入れるようになり、飼い主の折り畳み式ベッドの横で丸くなる犬の姿がみられた。赤十字の担当者によれば、赤十字の施設ではペットを連れた避難住民を歓迎している。そこではペットを檻に入れたり、外部組織に預けられたりしているという。
ヒューストンの動物シェルター「BARC」はフェイスブックで、ペット禁止の避難所に脇にペット用のトレイラーを設置したと発表した。
当局がペット連れで到着する避難住民の対応に追われる間にも、ハービーは無数のペットを危険にさらしている。
洪水や通行止めのため、動物救助グループの多くは被害を受けた地域に行くことができず、被害の全貌が判明するまでに相当の時間がかかるとみている。カトリーナの場合は、25万匹の犬や猫が死んだり避難したりしたとASPCAは推定している。
「水が引いたら、大きな被害があったことがわかるだろう」と、テキサス州の馬愛護団体のジェニファー・ウィリアムスさんは28日語った。「フェイスブックでは、避難できずにいる馬や、浸水した馬小屋の中から救助された馬の話が出ている」
テキサス州の複数の動物シェルターには、ハリケーンの襲来前に数百の動物が預けられ、中にはジョージア州アトランタのシェルターに送られたものもいた。
ヒューストン動物愛護協会のシェルターは300匹を収容できるが、水が引き次第、現在預かっている動物を別の施設に移し、今後急増するとみられる迷子となったペットの到着に備えるという。
米国動物愛護協会は28日、被害の大きかったテキサスシティに救助隊を派遣した。
「動物救助の要請が多数きている。ペットと一緒に自宅に留まった人や、ペットを置いて避難したが誰かに様子を見に行って欲しいというもの、また、裏庭に繋がれた動物についてなど、さまざまだ」と米国動物愛護協会のテキサス支部のケイティ・ヤールさんは言う。
ソーシャル・メディアやテレビでは、保冷クーラーに2匹の子犬を入れて洪水のなかを避難した男性の話や、水に囲まれた場所でポールに繋がれて置き去りにされた犬の話など、動物の被害状況が大きく伝えられている。
医療センターの近くにあるヒューストン動物園では、動物舎の堀が溢れるなどしたが、動物はすべて屋内にいて無事だという。スタッフ30人が動物園に残り、6000頭の動物の安全確保にあたった。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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