AIによる侵害を懸念するイーロン・マスクと楽観的なマーク・ザッカーバーグがSNSでバトル。でもホントに心配すべきは…?

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AIによる侵害を懸念するイーロン・マスクと楽観的なマーク・ザッカーバーグがSNSでバトル。でもホントに心配すべきは…?
Image: Scott Olson/Getty Images

テック界の2大巨頭が、人工知能に関して一家言があるようです。

SpaceX(スペースX)のCEOイーロン・マスクは、いつかAI制御されたロボットたちが「人間に戦争を仕掛け終焉をもたらすだろう」と警告しているのに対して、Facebook(フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグはテクノロジーが「人の生活を助ける黄金期になるであろう」と楽観視しています。

ザッカーバーグはイーロン・マスクの破滅的な物言いを「とても無責任だ」と言い、イーロン・マスクはザッカーバーグに対し「ことの重大さを理解していない」とツイート。どちらもインターネットや科学技術の世界を牽引する人物で、AIの恩恵を真っ先に受けられる人々なのに…。こんなにSNSで火花が散ってしまうのにはオドロキです。

でもホントに心配すべきは……?

ですがAIの専門家によるご意見では、ふたりのバトルはどうもピントがズレているようなんですよね。

ここでもうひとり。オンラインで大学教育コースを提供している、営利団体コーセラの共同出資者アンドリュー・エン氏のお話をします。彼はかつて百度(バイドゥ)で首席科学官として勤めていたAIにとても詳しい人物。VentureBeatによると、彼はハーバードのイベントにて以下のコメントを出しています。

たくさんのAI製品を製造/搬出してきた身から言うと、AIはまだ人間レベルの知能を持つまでの道のりが不明瞭なのです。私は人間とロボットとの仕事の入れ替えはとても大きな問題だと思っています。SFっぽいディストピアな発想よりも注目したいのはそっちなんですよ。

そしてこれまで、AI業界を牽引する多くの会社経営者などと話してきた経験から、「これから機械に職を奪われる人たちは、それが我が身に起こることと理解していない」とも言います。

FINANCIAL TIMESの調査によると、アメリカの製造業界では、2000年から10年間で560万の業種が消滅しました。しかもその85%が、テクノロジーの変換によるもの。そしてこれからも、同じ理由で38~47%の雇用が危機に面するだろうといいます。

このことからもエン氏の指摘は的を射ており、今後も人類の仕事は少しずつ機械に奪われ続けると考えられます。それは単純作業のようなものだけではなく、交通技師や医療機関の記録技師、融資担当者、原子炉操作技師など高い技術を要する職業も危ういと2013年のオックスフォード大学の調査で言われています。

しかし最近では、最新の機械よりも人間の賃金のほうが安いとあって、失業率の速度はかつて危惧されていたほど速くはない模様。

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いずれにせよ二大巨塔がバトルするまでもなく、スカイネットがT800を送り込むのもアンドリューNDR114が人間を楽にしてくれるのも、まだまだ先の時代のようです。

Image: Scott Olson/Getty Images

Source: VentureBeatFINANCIAL TIMESOXFORDMARTIN

Tom McKay - Gizmodo US[原文

岡本玄介