“人生最後の20年”に泣く人の財布の習慣

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なりゆき任せで日々を漫然と生きていれば、老後にはゆとりのない厳しい生活が待っています。ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんは「20代のうちからクレジットカードで分割払いを選ぶような人は危ない」といいます。その理由とは?

■「お金の生存戦略」が求められる時代

読者の皆さんは、自分の「生き方」とお金の「活かし方」に戦略はあるか自問したことはありますか。流れに乗っていればなんとかなる、というのは残念ながら戦略とはいえません。また、流れに乗っていればなんとかなるというのは、言い方がちょっと厳しいですが、バブル崩壊で終わった発想、いわゆるオワコンと言わざるをえません。

21世紀の日本を生きていくのであれば、自分なりに自分のたどり着きたい場所を設定し、自分をその目的地に導く生存戦略を持つことが必要です。これは、たとえではありません。戦略の有無が人の生存を左右するくらいの時代が来ているのです。特に、お金の問題ほど生存戦略が重要だと私は考えます。

▼貯められない人は「滅びの道」を進むのか?

その戦略は、ただ考えればいいわけではありません。時代に合ったものとなっているでしょうか。賃金が自動的に増え、地価が一直線に上がり、株価もただ右肩上がりであったような高度経済成長時代に採用できたお金の戦略はもはや通用しません。これから始まる人口減少時代、国内経済が低成長である時代、そういった「新しい所与条件」に即した生き方やお金の戦略を考える必要があります。

それは「あなた自身」と「お金」の両方の観点で考えていく必要があります。「お金」の問題だけクリアすれば人は幸せになれるわけではないからです。まさに「あなた“と”お金の生存戦略」が必要なのです。

さて、前置きはこれくらいにして、今回のコラムのテーマは「貯蓄体質」です。

太りにくい体質や太りやすい体質があるように、「自然と貯められる体質の家計」と「意識しないと貯められない体質の家計」があります。しかし、貯められない家計を放置することは先ほど申し上げた生存戦略的な考え方からすれば明らかに「滅びの道」を選んでいることになります。

■「貯められない人生は最後に詰む」のか?

生きて働くことができるうちは、常に「稼いでは貯める」を考えていかなければなりません。これは借金に人生を邪魔されないように生きていく、ということでもあります。

言うまでもなく、借金(クレジットカードの分割払いやリボルビング払いも借金の一部)を減らせば減らすほど、自由に使えるお金は増えます。

たとえば、頭金なしで4000万円の住宅ローンを借りることは基本的に6000万円の総返済額(利息や諸経費を含む)を覚悟する必要がありますが、頭金が700万円あった人は3300万円のローンに切り代えられ、それだけで総返済額が5000万円に下がる計算になります。

頭金がない場合とある場合とで総返済額の中の利息額を比べると、片や2000万円(6000万円−4000万円)、片や1700万円(5000万円−3300万円)。両者には300万円の差があります。後者の場合は、これを老後のための貯金に回すことができ、老後が300万円分豊かになります。

そもそも家を買う前は家賃を払いつつ、頭金を貯めなければなりません。もし頭金を700万円貯めたいと思えば、ムダな支出を700万円削るしかありません。しかし、日常的に借金の利息を払っているのであれば、そもそも頭金を貯める場所にたどり着けません。

▼安易なクレカのリボ払いが人生を暗転させる

たとえば、20代の人でリボ払いやパーソナルローンの残高が100万円あるケース。そうしたビジネスパーソンは少なくありません。年15%の利息がかかるとすれば、年15万円の貯蓄余力が何もせずに消えていくのと同等です(実際には月利で計算)。

20代の間に、クレカのリボ払いを上限近く利用し、銀行のパーソナルローンや銀行系カードローン、あるいは消費者金融のカードを2〜3枚もって上限近く利用すれば、その借金を消すだけでも30代が終わります。

さらに、悲惨なのは、その間に利息を払い続けるライフスタイルがあなたを貯蓄体質から遠ざけてしまうといことです。住宅ローンを組むステージから遠ざかるか、住宅ローンを組んだとしても頭金なしのローン設定になり、老後の資産形成からはもっと遠ざかることになります。

かくして「多く借りてしまった人」「借金しては返済のループに入る人」は、「借金を回避して貯金を続ける人」とのあいだに圧倒的な差が開き続けます。生存戦略として考えたとき、どちらが正しいかは明らかです。

■貯蓄体質ゼロの人は「人生最後の20年」に泣く

「金利を払うか貯金をするか」の体質を獲得できなかった人は、人生の最後の20年で後悔をすることになります。65歳の男性は19年、女性は24年の老後が待ち構えているからです。

仕事を辞めて年金生活に入った場合、貯めたお金があった人はこれを崩して公的年金との不足を埋めることができます。退職金プラス1000万円でも貯金をできた人は、毎月5万〜6万円の取り崩しができますので、公的年金の不足を補い、老後のささやかな豊かさを確保できます。

それに対して、お金を貯めることもできなかったまま60歳を迎えた人は、残していた借金をなんとか退職金で返すことになります(返せなかった場合はアルバイトをしなければならない)。ようやく定年を迎えて借金ゼロになれたとしても、それから20年を過ごすための余裕資金はなくなります。働くこともできなければ、公的年金額だけを望みに老後の生活をすべてやりくりしなければなりません。

現在、年金生活にある人たちの日常生活費はなんとか公的年金収入でまかなえていますが、「交際費・娯楽費」の合計、つまり老後のちょっとした楽しみの予算はありません。それは月5.6万円ほどです(総務省「家計調査年報(2016年)」)。しかし、その金額を個人の財産として老後までに蓄えられなければ、20年間は毎日倹約して「ただ生きていくだけ」の長すぎる期間になってしまうわけです。

現役時代に、貯蓄体質を身につけるという生存戦略を採らなかったツケは、人生の最後にあまりにも大きくのしかかってくることになるのです。

次回は、戦略的に貯蓄体質になるための具体的な方法をお伝えします。

(企業年金コンサルタント/ファイナンシャル・プランナー 山崎 俊輔)