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終業時間が過ぎても会社に残っている。出先から直帰すると思ったのに、遅くなって会社へ戻ってくる。休日にもかかわらず出社する――。こうした長時間労働や休日出勤に厳しい目が向けられ、奨励される「働き方改革」。そんな中、「会社にいづらくなってしまった」と困っている男性たちがいる。さっさと帰宅すればいいのに、その足取りは重い。なぜ、自宅に帰れないのか。夫婦問題カウンセラーの小林美智子さんが、実際の相談例をもとに解説する。
イクメンになるつもりだったのに
「妻はなんでも一生懸命やるタイプで、自分は少々大ざっぱな性格です。5年前に子供が生まれた頃から、妻がイライラするようになりました。初めての子育てで、いろいろ大変だろうと思い、家事や育児に協力するようにしていました。世に言う“イクメン”です」
先月、相談に訪れた結婚8年目の神奈川県在住Sさん(37)は、うつむきながら話し始めました。せっかく、イクメンになろうと意欲を燃やしていたのに、Sさんの熱意は空回りしてしまったからです。
「洗濯物のたたみ方が違う」
「食器をしまう場所が間違っている」
妻から、やることなすこと文句ばかり言われます。かえって妻の手をわずらわせることもありました。そこで、Sさんは考え方を切り替え、頼まれたこと以外はやらないようにしたそうです。
会社にもいられなくなった
すると今度は、「なんでも私がやるのが当たり前だと思っているんでしょ!」と怒りをぶつけられたそうです。
「自分が家にいることで、妻をイライラさせてしまっている」
負い目を感じたSさんは、遅くまで会社に残るようになりました。特に仕事があるわけでもないのに、休日も会社に顔を出すようになったそうです。
ところが、最近になって、会社は残業や休日出勤を厳しく管理するようになりました。また、「働き方改革」で定時退社が励行されるようになりました。休日出勤をする場合は、理由書を提出しなければいけなくなってしまったそうです。
仕方なく定時に退社するようになったものの、Sさんの足は自宅へ向かいません。駅のベンチに腰掛け、電車が行過ぎるのをぼーっと眺めます。近くの公園で缶コーヒーを飲みながら、スマホゲームで時間をつぶすこともあります。
自宅の明かりが消えるのを待ってから、そっと玄関を開けるそうです。「いつまでこんな生活が続くのだろう……」。Sさんは、ぼそっと漏らしました。
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