デッキチェアに伸ばしたつま先の投稿がInstagramに増える季節が近づいています。多くの人が、夏を心から愛しているようです。日光浴を楽しみ、暑さに耐え、水着に入った砂も目に入った日焼け止めも気にしない。それが7月と8月です。スイカ、ヨット、ビーチでバーベキューなどもお約束。

でも、そうでない人もいます。歩道にできたほんのわずかな日陰を歩き、スーパーではなるべく入口に近い駐車場を探し、ビーチにいるなんてまるで映画『シェルタリング・スカイ』の砂漠のシーンみたいだと感じるような人たちです。

筆者もその1人。ハッキリ言って、夏は苦痛です。とはいえ、まだ何とか対処できるレベル。いくつかライフスタイルを調整することで、7月と8月を楽しむことはできます。でも、夏が来るだけでひどいうつ症状になってしまう季節性感情障害、いわゆる夏季うつに苦しむ人も存在します。冬季うつと同様、程度は人それぞれで、少し落ち込むだけの人もいれば、自殺を考えるほどの人もいるのです。

そこで、夏季うつの特徴と対処法を知るため、『Winter Blues(夏の憂うつ)』の著者であり、ジョージタウン大学の精神科医Norman Rosenthal教授にお話を伺いました。

温度と光が重要

自明のようですが、涼しい状態を保ってください。水風呂やシャワーなど、方法はたくさんあります。カーテンやブラインドを使って、室内が温室効果で暑くならないようにしましょう。

熱いとイライラしてストレスになる、あるいはうつになるという人は、冷房の効いた場所にいることを優先しましょう。夏季うつを持つ人の中には、保冷材や氷枕を使って寝ている人もいます。私は、6月上旬から寝室を極寒に保っています。うつ症状のある人は、ない人にくらべて、夜の体温が高くなる傾向があります。その場合、冷却ブランケットにくるまって寝ることで症状が緩和されるとRosenthal教授は言います。

2つ目のアドバイスは、日陰にいること。

夏季うつの一部は、光が原因です。完全には明らかにされていませんが、私の経験上、光が重大な要素であると確信できる症例をいくつも見てきました。

日照時間の長さがメラトニンの生成や気分に影響すると考える医師もいれば、日照時間の長さがサーカディアンリズムを崩し、睡眠サイクルを乱すと考える医師もいます。

また、夏季うつに苦しむ人の一部には、興味深い共通点があります。明るい日射しを「急襲」や「攻撃」のように感じると言うのです。実は私も、玄関を出て明るい屋外に出ると、まさにそう思う1人です。何とか、つばの大きい帽子と大きなサングラスでしのいでいますが。また、寝室には遮光カーテンをつけ、空が明るいうちからでも寝られるようにしています(これで朝5時の日の出にも起こされません)。

でも、日光を完全に避けてはダメ

Rosenthal教授によると、日光に当たることでいい結果が得られた患者もいるそうです。その患者は、毎朝ほんの10から15秒、外出して光を浴びることにしました。もちろん、帽子などの防御対策をしたうえでですが、それでも健康の役に立ったというのです。外出好きの人は、早朝や夕方の比較的気温が低く日射しもそれほど強くない時間帯の外出を心がけましょう。私は早朝にランニングをし、夜にはポーチでカクテルを飲みます。でも、日射しの強い時間帯はなるべく外に出ないようにしています。

旅に出る

大人としての私の優先事項の1つが、ジメジメして蚊の多いニューヨークの夏をできるだけ避け、涼しい山で過ごすことです。これは在宅勤務だからできることですが、夏季うつに苦しめられているのであれば、夏休みを取ってでも涼しい場所に行く価値があります。

行き先は、戦略的に選んでください。

赤道から離れる方向に出かけましょう。

ある患者は夏休みを取ってニューヨーク州北部に出かけ、フィンガー湖の冷たい水で泳いだら、すぐに症状が緩和されたそうです。

「自分だけ取り残されちゃった感」を乗り越える

夏季うつの何が困るって、夏は楽しいイベントであふれていること。水上スキー、ビーチ遊び、庭でのバーベキュー。どれもこれも楽しそうで、自分が嫌いな暑さと強い日射しに折り合いを付けるまで時間がかかってしまいます。

多くの人がカーニバルに浮かれているのに、自分だけ取り残された感があります。このように、夏にまつわるイベントは、対応が非常に困難です。

皆が素晴らしい時間を過ごしているというのに、自分だけ日陰で犬のようにうずくまっていると思うと、ただでさえ落ち込んでいる気分がさらに落ち込んでしまう、二重苦の状態に陥ります。

とにかく、自分という人物を理解することが大事です。それが自分なら、そのままでいいのです。そう考えることが、ありのままの自分の生態と心理を受け入れてハッピーになるための秘訣です。こればかりは、変えようがないのですから。

私の場合、焼けるようなビーチにいることがワクワクと言うよりはパニックに近い感情を引き起こすことに気がついたのは、大人になってからでした。先日友達にビーチクラブに誘われたときも、最初に聞いた質問は「日陰はたっぷりある?」でした。でも、最近ついに、そんな自分に納得できるようになったのです。これが私の神経学なのだと。それに、悪いことばかりではありません。10月には目が回るほどに気分が高まり、それが3月まで続くのです。たとえ映画『ファーゴ』のような上着を着ていても、身を刺すような風に向かっているときでも、フットボールの試合の音や、ストーブの上に置かれた心温まるシチューの匂いが、文字通り私の心を躍らせるのです。

運動する(ただし屋内で)

運動で気分が高まることは知られていますが、夏季うつの人に湿度の高い日中に汗をかいてジョギングしろというのは酷です。そこでRosenthal教授に水泳について聞いたところ、水泳が好きなら効果的とのこと。でも、水泳にまつわるあれやこれや、具体的にはプールに行って、着替えて、シャワーを浴びて、またシャワーを浴びて、また着替えてといった行為が面倒で実行に移せない人は多くいます。そこでRosenthal教授は、自宅で使える機器への投資を勧めています。たとえばエクササイズバイクのように、暑さや強い日射しにさらされることなく有酸素運動ができるものがいいでしょう。私は、サングラスで日射しを何とかしのげる早朝のうちにランニングをすることで、1日中安定した気分を維持できています。

病院に行く

夏季うつは、気分が落ち込む冬季うつと異なり、不眠や動揺の形で現れることが多いようです。動揺は自殺思考につながることもあります。その場合、医師に相談しましょう。Rosenthal教授によると、夏季うつの患者は2月か3月から、冬季うつの患者は秋から、循環的に治療を受けるといいそうです。大きな帽子をかぶっても北に旅行しても症状が改善しないなら、医療のプロによる介入を考えてみてもいいかもしれません。

え、私ですか? 私は、7月はじめから日陰でじっとしてるつもりです。また、フットボールシーズンに会いましょう!