プラズマバブルの正体を探るために用いられた人工衛星「GOCE(ゴーチェ)」。(画像:九州大学発表資料より)

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 九州大学などの国際研究グループは、GPS、全地球測位システム通信を阻害する「プラズマバブル」と呼ばれる現象が、中規模の重力波を発生源として生じるものである可能性が非常に高いということを、人工衛星を利用した観測によって明らかにした。

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 GPSは車や船、飛行機の位置情報を把握するためのシステムとして今日では必要不可欠のものとなっているが、地表から100キロメートル以上の上空において発生するプラズマバブルという現象が、その通信に大きな悪影響を及ぼすことが知られている。

 このプラズマバブルがどこから発生するのかについて、「100〜1000キロメートル上空の、電離圏F下部領域の大気重力波によるものではないか」との指摘が、以前から専門家の間では存在したが、それを裏付ける証拠はこれまでなかった。

 そこで今回、九州大学大学院理学研究員のリュウ・フイシン准教授らの研究グループが、欧州宇宙機関(ESA)の保有する人工衛星「GOCE(ゴーチェ)」を利用して、電離圏F領域における、波長150〜620キロメートルの中規模重力波を観測した。結果として、赤道域の高度250キロメートルにおいて、重力波が海よりも陸の上空において活発になっていることが、初めて明らかになった。

 また、重力波が活発な地域では、プラズマバブルの発生も多い、ということも分かった。総合すると、プラズマバブルの発生源は重力波である可能性は極めて高い、とのことである。

 研究の成果は、アメリカの科学雑誌誌「Geophysics Research Letters」の、オンライン速報版に紹介されており、近日中に確定版が掲載される予定となっている。

 フイシン准教授は、今回の研究成果によって電離圏プラズマバブルの発生機構の理解を高め、予測と監視システムに貢献させていきたい、とコメントしている。