室内空間に重きを置く大衆車の場合FRは不利になる

クルマ好きのなかには「FRでなきゃ走りが楽しめない」と主張する人が一定数存在しているようだ。たしかに、かつてはFR(フロントエンジン・リヤドライブ)というのはクルマのパワートレインにおいては基本形だった。

大衆車の代名詞だったトヨタ・カローラだって1983年に登場した5代目で初めてFFを採用したし、そのときもスポーティクーペであり、AE86の型式で知られるるレビンはFRレイアウトとなっていたのは、ご存じのとおりだ。

こうして大衆車からFF駆動が増えていったのには理由がある。そもそもFRというのはエンジン出力を駆動輪に伝えるためのプロペラシャフトがキャビン部分の中心を通ってしまうために居住性にはネガティブなレイアウトなのだ。

そうした理由により、大衆車の合理的なレイアウトとしてRR(リヤエンジン・リヤドライブ)が主流だったこともある。その代表例がカブト虫の愛称で親しまれたフォルクスワーゲン・ビートルだろう。

また、現在はシンメトリカルAWDがコアテクノロジーとなっているスバル車だが、その始まりは水平対向エンジンをオーバーハングに積むFF(フロントエンジン・フロントドライブ)にある。このレイアウトも居住性を確保することにプライオリティを置いたものだ。

あくまでキャビンスペースなどパッケージへの要求でFFが増えた

前述のRRについては、空冷エンジンであれば合理的ではあるが、水冷式になるとラジエターの配置から徐々にパッケージングとしてのメリットを失っていく。フォルクスワーゲンがRRのビートルからFFのゴルフへと大転換したのは、まさに象徴的だろう。

つまりモビリティとして合理的に考えるとFFという結論に達するというわけだ。フロントタイヤが駆動と操舵を担うということは運動性能においては不利な面があるのは事実だが、移動手段として捉えたときに問題が起きるというほどではないのも、また事実である。

さらにいえばFRというのはプロペラシャフトの分だけ駆動系のロスが生まれてしまう。広さと燃費という要素からFRのクルマが減っていったのは自然な流れといえる。

そうした流れを加速させた要素としてタイヤの進化も見逃せない。ニュルブルクリンク北コースでFF最速タイムを記録した新型シビックタイプRの最高出力は320馬力に達するという。今や、それだけのパワーをフロントタイヤで受け止めることができる時代なのだ。

後輪駆動のクルマが減っているのは、あくまでもパッケージング面でのネガがあるだけで、FRやMR(ミッドシップ・リヤドライブ)のようにフロントタイヤが操舵、リヤタイヤが駆動を分担するレイアウトが持つ根本的なメリットが失われたわけではない。そうしたメリットよりも居住性などを優先する市場ニーズがFR車を減らしたといえるだろう。