みんなではじめるデザイン批評

デザインを批評するということ

この記事は2016年6月くらいに書籍「みんなではじめるデザイン批評」を読み、勤務している会社の社内メンバー共有ブログ的なものに綴った私のポエム書評に加筆修正を加え、どの組織にいっても再利用再布教できるように改めてインターネット上に乗っけさせていただいたものの、さらなるnote転載です。2018はnote書くぞ。

デザインを評価することは難しい。

なにが難しいって判断基準を明確にするのが難しい。

でも、意思決定する根拠となる判断基準を明確にしないと、いつまでも難しいままである。さらにはレビューする行為自体、面倒だと煙たがられかねない。デザインとは問題解決なのに、問題になるという本末転倒。

デザインとはなにか。それを評価することとはなんなのか。
「レビュー」と「批評」の違いは一体…!?

そんな悩みを抱える私が書籍「みんなではじめるデザイン批評」を手にとり、読み進めながら、この目の眩むほど崇高なテーマについて、浅はかながらもKIMOCHIだけは深く切り込んでみました。

Ⅰ. まず、レビューと批評を区別する

レビューと批評、我々日本人が利用する日本語だとどちらも同じような意味合いで使っている感覚があります。批評のほうが若干、身構えるといいますか、知的だし批判という字に近いので否定的な心理バイアスがかかる感もありますね。言語的視点でみると、英語では以下のワードにしっかり分かれています。

レビュー = Review
批評 = Critique

あらゆる組織で行われているであろうデザインレビュー同様、弊組織では「レビュー」と「批評」を混ぜてしまっています。
しかし、レビューと批評という行為とは分けて考えることが必要そうであり、弊組織で行われているデザインレビューも、批評を重ねて血と汗と涙で出来上がった成果物のステークホルダーへの共有・承認機関であるだけのことが望ましそうであります。

Ⅱ. それではデザイン批評とはなんなのか

デザイン批評とはデザインの、さらにいうとデザインした人の選んだ解決案の良し悪しをみるものではありません。
デザインをよりよくして目的を達成するために行うもので、個人の人格やデザインそのものを品定めするものではないんです!
製品をよりよくするために行うもので、文句が言いたいわけではない。そこんところをまず理解した上で、ポジティブなマインドセットのもと、和やかムードで行ってこそ、その効果性は増します。

Ⅲ. 批評と批判の違い

レビューと批評の違いはわかった。
では、批評と批判の違いについて考えてみよう。

批判とは?:批評とは?
批判は絶対的な判断をくだすもの:批評は質問を投げかけるもの
批判は欠点を見つけるもの:批評はチャンスや機会を見つけ出すもの
批判は個人的なもの:批評は客観的なもの
批判はあいまいなもの:批評は具体的なもの
批判は壊すもの:批評は積み上げるもの
批判は自己中心的なもの:批評は利他的なもの
批判は対立するもの:批評は協力的なもの
批判はデザイナーを軽視するもの:批評はデザインを改良するもの

批評の目的は、デザインのソリューションを進化させ、チームに勇気を与えること。批判にならないよう、気をつける必要があります。
また、もっと平たくゆうと批評とは目的に照らし合わせて何かを分析することです。
これは目的がなければ、批評成立しないことを意味しています。
必ず、目的を提供しないと批評という行為は不可能です。

Ⅳ. フィードバックには3つのタイプがある

デザイナーは日常的に、デザインについてフィードバックを求めることがあります。
フィードバックの種類は概ね以下3つに分類されます。

1. 反応型
2. 指示型
3. 批評

それではそれぞれがどんなフィードバックなのかみていきましょう。

1. 反応型フィードバックとは?

=「なんかダサい絶対こっちのほうがかっこいい」
=「クソ使いにくくなったクソ改修今すぐ戻せクソ運営!」

こういった類のものである。主に関係性の薄いクライアントやTwitter上で展開されるものです。が、気をつけないと私たちもよくやっちゃうフィードバックの類であります。
こういった反応型フィードバックはデザイナーを非情に落ち込ませるだけで、何も次のアクションにつながらないのが特徴です。下手すりゃデザイナーは組織から去ってしまいます。

2. 指示型フィードバックとは?

=「私ならここはリストにします、なぜなら…」
=「ここはカルーセルにした方が同時代的だしコンテンツ探しやすいと思うからここをカルーセルデザインに直して…」

こういった類のものである。一見、まっとうなフィードバックっぽいですが、巧妙に自分自身の見解を伝えようとしています。
実はこれだと担当デザイナー要らないですよね確かに。だったらあんたがやんなさいよ!ってゆう。

以上、反応型と指示型の2つのフィードバックは受けた後うまく活用ができるものではなかったりします。
ではどういったフィードバックが有益かといえば、次の批評です。

3. 批評とは?

=「目的が◯◯を見つけやすくすることだとすれば、このデザインの選択は目的に対して有効に機能しにくいのではないかと思います。なぜならこの◯◯の形状や大きさだとユーザーは周りの他の要素に目が行ってしまい、見逃す可能性が高いように思います」

批評とは目的に照らし合わせて何かを分析することでした。
デザイン批評とはデザインしたものに定められた目的や目標を実現するために機能するかを問う批評的思考による分析です。
批評を受ける側のデザイナーはそのデザインを選択した理由を、作ろうとしている製品の目的や目標と関連付けて批評する側に伝達する必要がありますね。
批評する側はそのデザインが目的にどう機能するのかどうかがわかってはじめて、判断基準が明確になりフィードバックが可能な状態になれるというわけです。

Ⅴ. 批評を構成する4ステップのプロセス

では、批評をもっと掘り下げて見ていきましょう。

批評とはデザインしたものに定められた目的や目標を実現するために機能するかを分析する思考でした。

しかし、それがわかったからといって一夜にして魔法のように身につくスキルではないのが、批評の難しいところであります。

楽器演奏に例えるならば、モード旋法を学び頭で理解できてるからといって、人間はすぐに楽器を用いてJAZZを演奏できるどころか、不慣れな楽器ではイオニアンモード(ドレミファソラシド〜♪)を奏でることすらままならないはずであるのと同じく、批評にも理解した上で肉体運動的な反復練習が必要である。と個人的には思います。

批評にとってその反復練習すべきドレミファソラシドに当たるフレームが、以下の4ステップの要素です。

1. デザインの目的は何か?
2. 目的に関連しているのはデザインのどの要素か?
3. そうした要素は目的を達成するのに効果的か?
4. それはなぜか?

この4ステップを利用してみることで、批評を受ける側にとってはよい練習になりそうです。ドレミファソラシドは7つですけど、4つならもっと楽なはずです。

Ⅵ. 効果的な共通の基盤をつくる4つの要素

また、より強固な基盤を批評される側と批評する側で持つのに有効な要素が以下の4つです。

1. ペルソナ
2. ストーリー
3. 目標
4. 原則

特にペルソナとストーリー、これはもう批評を受ける前に、想像力を働かせて勢いで設定してしまうほうが、何もないよりは伝えやすいです。

Ⅶ. デザイン批評の頻度とタイミング

批評を構成する4STEPと、効果的な基盤をつくる4つの要素さえ揃っていれば、いつだってどこでだって批評を行って有効なフィードバックを得ることができます。
同僚と隣のデスク同士で。すれ違う廊下で。弊スタジオでいうところのデザインレビューが、デザイン批評の場ではなく、その前の段階で、協働するチームメイトと、プロダクトオーナーと日常的に批評を繰り返し、その中で目的を磨き上げたうえでどんどんデザインをよくすることができます。

Ⅷ. 役に立たないフィードバックの特徴

批評を行う上で、批評する側のフィードバックで役に立たない類のものも、理解しておくとやっちゃわなくていいです。

・個人的な目標の影響を受けている
・タイミングが悪い
・説明が足りない
・自分の好みに基いている

この手のフィードバックは次のアクションにつながりにくい。それどころか、ストレッサーとなって批評を受ける側に心的ダメージを与えかねない。とくに『デザイン=どのように見えるか』、という理解で留まっているような場合のフィードバックは要注意です。スティーブ・ジョブズは『デザイン=どのように見えるか。ではなく、どう機能するか、だ。』といっています。

Ⅸ. フィードバックを有益なものにするためには

批評する側がフィードバックを有益なものにするには、以下の点に気をつけると良いです。

・質問で始める
・フィルターを通す
・思い込みをしない
・押しつけない
・長所について話す
・視点について考える。誰の視点から?

Ⅹ. 批評される側がやっちゃいけないこと

うっかりやりがちだけど以下の状況に近い場合、無駄に疲れるだけなのでいっそやめてしまいましょう。

・聴く気がないのに頼んじゃう
・賞賛や承認が欲しいだけで頼む
・どうや!とデザインだけみせる

どんな種類のフィードバックでも素直に聴く、というマインドが大切です。
そして目的を語らずにデザインだけみせることは、批評に発展せず反応的フィードバックが返却されるのが落ちなのでなにも活かせません。

Ⅺ. 批評する側が持つべきマインド

とはいえなかなか難しいのが批評です。
批評される側だけでなく、批評する側も、お手並み拝見的な態度で挑むことなく以下を意識して臨むマインドが大切です。

・目的を忘れない
・聴いて、考えてから反応する
・基本に戻る
・参加する

肝に銘じても、忘れるぐらい忘れるので定期的に振り返り気をつけたいところ。

Ⅻ. まとめ

繰り返しますが批評とは目的に照らし合わせて何かを分析することです。
目的が明確に批評を受ける側に理解されていて、それを批評をする側にも伝わっていないかぎり、判断基準を持てず批評することは不可能です。

その結果、次の行動に移せない反応的フィードバックや指示的フィードバックをうけてしまう悲劇のスパイラルの入り口になりかねません。

そんな事態にならないように、今一度、デザイン批評におけるドレミファソラシドである、

1. デザインの目的は何か?
2. 目的に関連しているのはデザインのどの要素か?
3. そうした要素は目的を達成するのに効果的か?
4. それはなぜか?

この4STEPからみんなで意識してデザイン批評をはじめてみるのが良さそうかと思います。

さらにいえば、デザイン批評とはデザイナーだけが持つ固有のスキルではなく、組織で協働することにおいてディレクターやエンジニア、プロダクトオーナーやあらゆる意思決定者、まさに全職能のみんなとともに身に付けて成長していくべき大切なスキルであると感じております。

さらにさらにいえば、批評的思考を身につけるということは、職務においてのみならず、個々人がこれから先の人生で遭遇する困難な岐路においてもきっと役に立つライフスキルにもなりえると思います。

無限の音から音を組み合わせると思うと果てしない。
そして18世紀にJ・S・バッハはドからドまでの音を12個の音に分割しました。

そこには現代ポップミュージックの萌芽がありまして、300年以上たった21世紀現在においても未だそのドレミのフレームの組み合わせから無限の音楽へと広がっております。

今回紹介した批評のドレミ的フォーマットに則り、組織に在る一人ひとりが繰り返し繰り返し批評を実行いくことで、個の力だけでなくみんなで批評のスキルを上げ、批評の基盤を築きあげることで、デザインの、果てはサービスの可能性も無限に広がるのではないでしょうか!

書籍:みんなではじめるデザイン批評(超オススメ!)


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