2018.02.23
# 飲食店

一風堂ニューヨーク店の成功でわかった、日本人の「ヒドい勘違い」

日本ブームで何でも売れる、は大ウソ

「世界MBAランキング」で、直近2年連続で世界第1位、名実ともに世界最強の経営大学院「INSEAD(インシアード)」。世界80か国以上から学生が集まり、グローバル性、多様性を大きな特徴とするこの大学院、いったい何がそれほどすごいのか。

ビジネスパーソンのバイブルとも呼ばれる大ベストセラー『最強の働き方』『一流の育て方』最新刊『最強の生産性革命』竹中平蔵氏との共著)の著者で、自らインシアードの卒業生でもあるムーギー・キムさんをガイド役に、「世界最強の経営大学院」が生み出す人材たちの「最強の仕事術」に迫る。《これまでの連載はこちら

 

「ほっけの開き1枚40ドル」の世界もあるけれど

シンガポールや香港に住んでいると、日本食の人気と価格に驚かされる。

寿司の値段は3倍、味のクオリティは格段に落ちるが、行列のない日本料理屋は海外には存在しない。

最近、シンガポールのリバーバレー(日本人駐在員に人気の地域)にある和食チェーンで、ほっけの開きを注文してビックリ。小ぶりのほっけ一枚が、実に40ドルという恐ろしい値段で売っているのだ。

マンダリンオーチャード(シンガポールを代表する五つ星ホテル)の中にある最高級寿司店「はしだ」に行けば、二人でおまかせを食べて、軽く獺祭を一本入れるとその値段は1500ドル。それでも予約は途切れず、いつ行こうとしても予約で一杯である。

近年の世界的な和食ブームで、世界各国で日本料理店の進出が目立つようになっている。「いきなりステーキ」のニューヨークでの快進撃の話などを聞くと、我も我もと海外進出を考える飲食店が出てくるのもわからないではない。

しかしながら、メディアで取り上げられる成功例の陰には、数えきれないほどの死屍累々とした「海外進出失敗組」がいることを忘れてはならない。

今回のインシアード卒業生は、ニューヨークで飲食に限らず日本発サービスの海外進出をサポートする斎藤晃さん。「海外進出に失敗する日本人の残念な特徴」と「成功の秘訣」について、ニューヨークからの現地レポートを届けていただこう。

「自動車、ハイテク製品、寿司」は過去の話

「3か月以内に売上伸ばせなかったらクビ」と上司から宣告され、泣かず飛ばずの時期を何度も乗り越えて、ニューヨークを拠点にコンサルタントを5年以上やってきました。仲良くなった同僚が突然クビになるのを目の当たりにし、次は自分の番かと怯えながら、恥ずかしい失敗を何度も重ね、何とかいままで食いつないでいます。

サバイバルのためには、利益率の良いアメリカのコンサルティング案件だけやっていればいいものを、採算度外視でつい熱が入ってしまうのが、日本発の海外進出案件です。海外に住む日本人ビジネスマンとしては、日本のものが売れていくのは、ただ単純にうれしいものなのです。

日本と言えば、高品質な自動車、ハイテク製品に寿司……というのはもう10年、20年も前の話。いまニューヨークで一番勢いがあるのはラーメン、アニメにゲームです。日本発のオリジナリティとクリエイティビティが求められているのです。

日本を海外に売り込む可能性はまだまだあると思います。いくつもの案件に携わってきた経験から、日本人が海外で事業展開するときに陥りがちな失敗と、最低限これだけはやってほしいと思う秘訣を紹介したいと思います。海外進出を考えていない人にとっても、足もとのビジネスを見つめ直す役に立つのではないでしょうか。

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