リチウムイオンバッテリーが「爆発」する5つの理由

消費者の期待に応えるべく、携帯電話をはじめとする各種のデヴァイスは薄く小さく、そしてバッテリーが長持ちするように進化してきた。だが実際のところ、そんなうまい話はないのだ。小型化を実現させたリチウムイオンバッテリーには、さまざまな危険性が潜んでいる。
リチウムイオン電池が「爆発」する5つの理由を詳しく解説!
PHOTO: GETTY IMAGES

リチウムイオンバッテリーがニュースの見出しを飾り続けている。最近注目を集めたのは、飛行機でヘッドホンが爆発した事件だった[訳註:2017年2月、国際線の機上で、女性が身につけていたノイズキャンセリングヘッドホンが突如爆発した]。そのほかにも、サムスン「Glaxy Note 7」の2度に及ぶリコールやホヴァーボードのバッテリーに関する深刻な問題が報じられている。

そもそも、リチウムイオンバッテリー自体が危険なものだということは知っておいた方がいい。バッテリー内部はデリケートで、異常発熱につながりやすく発火する可能性がある。酸素に触れることで実際に発火するし、内部の液体は人の肌を黒焦げにする危険性のある化合物も混ざっているのだ。

成熟していても「不安定」なテクノロジー

では、なぜそんな物を使うのだろう? それはリチウムイオンバッテリーのエネルギー効率が信じられないほど高いからだ。企業が膨大なエネルギーをその小さなパッケージに詰め込むことで、スマートフォンもノートPCも1日中使えるようになった。

初めて商用化された充電式リチウムイオンバッテリーは、約25年以上前にソニーのハンディカムで使われたものだという。現在では世界中に何十というバッテリーサプライヤーが存在する。リチウムイオン電池は非常に成熟したテクノロジーなのだ。

しかし、ほかの多くの成熟したテクノロジーとは違い、それらの不安定さは増している。人々が容量がより大きく、よりスリムなパッケージで、より安価なバッテリーを求めているのがその理由だ。

リチウムイオンバッテリーが不本意なスポットライトを浴びることになった要因は数多くあるが、そのうち最も一般的な5つを説明しよう。

理由1:製造上の欠陥

単純に考えれば、爆発したバッテリーはすべてその製造方法に何かしらの問題があるように思われる。確かに事実であることもあるが、サムスン「Galaxy Note 7」の事件が示しているように、特定の問題を突き止めるのはそれほど簡単なことではない。

サムスン自社製のバッテリーを搭載したスマートフォンに関する最初のリコールでは、バッテリーを保護するケースと内部の電極の間に十分なスペースがなかったことがわかった。圧迫された結果、一部のバッテリーの電極が曲がり、ショートを引き起こしたのだ。

しかし、それらの携帯電話がリコールされてすぐ、他社製の「より安全な」バッテリーを搭載した代替のデヴァイスにも別の問題が生じており、まったく異なる原因によるものだと考えられている。

理由2:設計上の不備

最近のガジェットのほとんどはできるかぎり薄く、軽量で、スマートなものになるように設計されている。それは特に小さな本体に大容量のバッテリーを搭載したものであれば、頑丈でなければ大きな被害をもたらす可能性がある。バッテリー周辺への物理的な圧力は電極やセパレーターにダメージを与え、ショートを引き起こすかもしれない。

通気や温度の管理が不十分だと、バッテリー内部の可燃性の電解質の発熱を引き起こす可能性がある。ひとたびそれが熱くなりすぎれば化学反応がさらなる発熱を引き起こし、手に負えない状態になるかもしれない。熱暴走と呼ばれるその状況はしばしば爆発か発火という結果を招く。そしてひとたび酸素に触れれば、さらに大きな爆発が起きるのだ。

理由3:ユーザーが与えたダメージ

ガジェットがきちんと設計されていたとしても、落としたり長時間使用したりすると、その不安定な電源にダメージを与える可能性がある。あなたのバッテリーがダメージを受けているかどうかを見分ける最善の方法は、それが膨らんでいるかどうかを見ることだ。それはバッテリー内で、本来は起こらないはずの化学反応によって、ガスが生成されている証拠なのである。

また、その膨張自体がカヴァーによって圧迫され、破裂や出火につながる可能性もある。残念なことに、最近のほとんどの携帯電話は内部にバッテリーが封印されており、調べるために分解すると保証の対象外になる。もし、あなたの携帯電話の外側のケースが押し広げられているか、触ると異常に熱い場合は、慎重に扱って点検に出すのが最善策だ。

理由4:充電器による問題

携帯電話を家に置いていきたいなら、安価なノーブランドの充電ケーブルを使う前によく考えたほうがよい。それらのケーブルや電源アダプタが安いのには理由がある。あり得ないほどの低価格を実現するために、メーカーはしばしば製品の絶縁体をけちり、安全に関する法律をすり抜け、電源管理機能を省いているのだ。それは感電死や充電器の爆発、携帯電話の大出火につながる可能性がある。

理由5:業界のプレッシャーと市場競争

もし企業がバッテリー1本ごとにわずかな金額を抑えられたら、それを何百万、何十億という利益に転換することができる。その結果、多くのリチウムイオンバッテリー製造業者が電池の価格を下げるために最も安易な方法を取る。絶縁体や品質管理のコストをけちるのである。その素材には、すでに薄いセパレーターにダメージを与えるような欠陥があるかもしれない。

それらはホヴァーボードの出火の主な原因であった可能性が高い。市販された最初のモデルは高価だったが、人気の高さゆえに安価で中身まで安物のコピー品が生み出された。 クラウドファンディングと手頃な価格の部品は、コンシューマエレクトロニクス業界を民主化したが、コストの低下はしばしば安全性を代償にして成り立つものなのだ。


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これまでよりはるかに長いバッテリー持続時間を訴求する製品が、2022年に入って次々に登場している。それらが謳い文句通りの性能になっているかどうかはまだわからないが、リチウムイオン電池の進化と電子機器のエネルギー効率の向上によってバッテリーの持続時間は着実に伸びている。

TEXT BY TIM MOYNIHAN