小さい頃に、いろんなカードやボードゲームで遊んだ思い出が誰にでもあると思います。UNOやトランプ、人生ゲームにオセロ、将棋、花札…数あるおもちゃの中でも僕がとくに大好きだったのは「ドンジャラ」です。
家族で机を囲んで白熱した戦いを繰り広げたのが懐かしい。うちの家族はドンジャラが本当に好きで、雷で停電したときでもロウソク立ててドンジャラをやるほどでした。だから、ドンジャラの強さには絶対の自信があるんです。
要は子供でもできる麻雀といったところ
一応説明しておくと、ドンジャラとは牌を引いていって絵柄を合わせていくゲーム。簡単にいうと、子供にもできる麻雀のようなゲームです(ドンジャラでは牌のことをパイと呼ぶなど、いろいろと違いはアリ)。
ドンジャラって今の10代の若者とか知っているのかな…? 「そんなもん知らねーよ!」って感じだったら時代の流れを感じて怖い!!
人気のキャラクターを使っているのも魅力
ドンジャラは子供からお年寄りまで一緒に遊べるので、世代を超えて人気があります。絵柄もドラえもんや妖怪ウォッチなど、そのときどきに人気があるキャラを使用しているのも魅力。1970年代ころにはすでに発売されていたらしいので、その歴史は長いんです。
ドンジャラにそっくりな大人のゲーム、麻雀も好き
大人になってからは、大人版のドンジャラともいえる麻雀をやっていたのですが、ある日ふと疑問に思いました。これだけ麻雀とドンジャラが似ているものであれば、もしかしたら麻雀のプロはドンジャラ最強なんじゃないだろうか? だってこれだけ似ているゲームなんですから。
ということで、今回はその疑問を解消するために麻雀のプロを実際に呼んでドンジャラを一緒にやることにしました。
ちなみに今回はおそらくドンジャラの中で一番有名であろう「ドラえもんドンジャラ」を使用して対戦をしたいと思います。
ということで、今回「麻雀のプロはドンジャラも強いの?」という疑問を解消するために、日本プロ麻雀協会に所属している水口美香さんに来ていただきました。
某掲示板で「最近の麻雀のプロかわいすぎw」みたいなスレを見たことがあったのだけど、麻雀のプロって本当にかわいいんだな…!
出場者@:水口美香さん
水口美香
日本プロ麻雀協会に所属する女性プロ雀士。福本伸行の『賭博黙示録カイジ』を見たことがきっかけで、麻雀を始めた。 愛称は「氷の微笑」。AbemaTVで放送中の「フリースタイル雀ジョン」にレギュラー出演しているなど活動の幅も広い。
【主なタイトル歴】
第4回 μレディースオープン2位
第1期 しゃるうぃ〜てんほう優勝
Twitter:@mikamizuguchi
水口さんはなんとドンジャラは初めてとのこと。ということは純粋に「麻雀プロ=ドンジャラが強い」説が検証できるわけですね。
ただ麻雀のプロに来てもらったからといって、こっちだってわざと負けるわけにはいかない。企画だからといって手を抜いて「やっぱり麻雀のプロはドンジャラも強かった!」とわざとしたくないんです。本気でやってこそ検証になる。
ということで麻雀のプロに勝つために、ドンジャラが強そうなメンバーを集めました。真剣勝負で勝ちにいく!
出場者A:北村ヂンさん
北村ヂン
ライター&イラストレーター。フジテレビ『めざましテレビ』で放送していた「1分でわかる○○」コーナー担当。県民あるある本『○○のおきて』シリーズ漫画&シリーズ監修。
Twitter: @punxjk
キン肉マン、ガンダム、アラレちゃん、マリオ…などなど何種類ものドンジャラを持っているドンジャラマスター。麻雀のプロが参加するということで、こちらもドンジャラのプロといっても過言ではない北村さんに来ていただきました。
さらに今回はドラえもんドンジャラを使用するのですが、北村さんはドラえもんの同人誌などを手がけており、ドラえもんへの愛も強い。最終的に勝負ごとは「愛は勝つ」と僕は思っている。今日の紛れもない優勝候補です。
出場者B:カニ巫女さん
カニ巫女
ゆるキャライラストレーター。キャラクターのプロデュースやグッズ販売を行っている。
Twitter: @yudashio
小学生のときに遊ぶ人がおらず、先生がひとりぼっちを集めて開催したドンジャラ大会に参加したことがある悲しきドンジャラモンスター。ただルールはもうほとんど覚えていないもよう。今大会のダークホース的存在。台風の目となるのでしょうか。
というより読んでいる人からしたら、いきなりコスプレした女性がでてきて困惑しているかもしれませんが、ゆるキャラがドンジャラの大会に参加していると思ってください。
出場者C:megaya
megaya
本業はプログラマーでたまにライター活動をする。この大会を企画して記事を書いている人。
幼少時にフリーマーケットにて50円で売っていたマリオのドンジャラを買ってきて、親戚から「平成の買い物王」と大絶賛される。それ以来、幼少期はお正月にドンジャラをやるのが恒例となっていた生粋のドンジャラー。
以上3人。ドンジャラを何種類も持っているマニア、ゆるキャラ、そして幼少期にドンジャラに明け暮れた僕と、個性豊かなメンバーで水口さんという麻雀のプロに挑みます。
ちなみに僕はガチで負けたくなかったので、前日に家でめちゃくちゃ研究してきました
ドンジャラをひと言で表すなら、絵柄を揃えるゲーム。1つずつ牌を引いていきながら、3つ同じ種類の牌を集めてそれを9セット揃えます。ただしドンジャラの種類によって違いもあるので、今回使うドラえもんドンジャラのルールをご説明しましょう。
たとえば、ドラえもんドンジャラの場合は、「ドラえもん/ドラえもん/ドラえもん」・「のび太/のび太/のび太」・「ジャイアン/ジャイアン/ジャイアン」といった感じで3セット揃えるとあがり。
あがり方の例
またオールマイティーという何にでもなれる牌もあって、「ドラえもん/ドラえもん/オールマイティー」のように置き換えて使える超強い牌です。
ドラえもんならではの「役」があります
ただ3つずつ揃えればいいというわけではなく、より高い得点がもらえるセットを揃えるのがミソ。それを「役」といって、たとえばドラえもんだけで揃えると100万ドルという高得点になります(ドラえもんドンジャラは得点が「ドル」となっていて、最終的にそれが一番多い人が勝ち)。
ほかにも「源家セット」や「ママセット」など、ドラえもんを理解していると覚えやすい役が多いです。
必殺! ひみつ道具カード
さらにドラえもんドンジャラには特殊なルールがあり、ドラえもんの牌を捨てると「ひみつ道具」というカードが使えます。ひみつ道具は「捨ててある牌から好きなものをもらえる」や「オールマイティーをすべて自分のものにする」など強力なものが多く、これをどう使うかが今回のカギになっています。
ドンジャラは商品によって微妙にルールが違う箇所があります。だからこの時点では、ルールの予習をしている僕以外はほぼ知識レベルが同じ。
ただ水口さんにルールを説明すると、ドンジャラ未経験にもかかわらず飲み込みがめちゃくちゃ速かった。
黙々とルールを見る水口プロ
「なるほど、七対子(チートイツ)はないんですね」
「絵柄で揃えるだけなので、役柄を覚えて近いアガリで揃えたほうがよさそうですね」
「ポン、カン、チーはなしで暗刻だけとなると、ほとんど単騎待ちなのか…」
ルールブックを読んで黙々と研究していた。なにこれ怖い。考えていることが僕らと全然違いそう。
北村さんが持ってきてくれたドンジャラ
水口さんが黙々とルールを見ている間に、北村さんが持ってきてくれたドンジャラを見せてもらった。キン肉マン、ガンダム、アラレちゃん、モーニング娘。、マリオ…と実にいろいろとありました。
僕が今日用意したドンジャラは2016年に発売されたもので、結構新しいもの。北村さんが言うには、昔のものと比べると牌も台もかなり小型化されているらしいです。
パーマンとアラレちゃん、さらにモーニング娘。のドンジャラまである。アラレちゃんのほうは正確には「ポンジャン」という商品。出している会社が違うから同じようなゲームだけど、ポンジャンと呼ぶらしいです。知らなかった…。
ガンダムのドンジャラは箱がカッコイイ。この背中合わせのガンダムとザクのデザインおしゃれすぎませんか?
あとガンダムの箱に入っていた得点計算用のコインが懐かしい! 僕が昔やっていたマリオのドンジャラもこのコインだったなぁ…
前置きが長くなってしまったけど、そろそろルールを飲み込めたようなので試合スタート!!
まずはジャラジャラと牌をまぜます。これだけでテンションが上がりますよね
そして牌を引いていくところからスタート
最初は順番に牌を引いていきます。ドンジャラは反時計回りで牌を引いていくのですが、麻雀は時計周りなので水口さんはかなり手間取っていました。
しかし、ゆるキャラと麻雀のプロが並んでドンジャラをやるってすごい構図だな…盆と正月とマイケル・ジャクソンが一緒に来たみたいな話だ。時空の歪みを感じる。
みんなで卓を囲んでドンジャラをやっていると、昔からの知り合いなんじゃないかと錯覚するほど落ち着いてきて、一生この時間が続いてほしいと思うほどリラックスできました。
水口さんがいきなりリーチ
しかし、そんな僕の平穏な空気を壊すように、麻雀のプロ水口さんが動きだします。ドンジャラ未経験にもかかわらず初戦にしていきなりのリーチ。3人の間に緊張が走る。早くもプロが牙をむく。
ドンジャラではリーチしたあとに、ほかの人が捨てた牌が欲しいものだった場合は、それをもらってあがることができる。そうなったら、捨てた人がすべての得点を勝った人に払わないといけないので、かなりの大打撃…。
水口さんが待っているものを捨てないように慎重に牌を選択しなければならないが…。
よし、この牌なら捨てても大丈夫なはずだ。大丈夫。大丈夫。行け!!
水口さん「ドンジャラ! あがりです!」
まじかよ…さっそくあがられてしまった。あんなに家で予習してきたのに…。しかしいきなり勝ってしまうとは…これがプロの実力なのか!
いやまだ決めるのには早い。ビギナーズラックという可能性もあるし、次に期待しよう。第2ゲームだ!!
水口さん「あがりです!」
まさかの2連勝!!
強い、強すぎる…「やはり麻雀のプロはドンジャラも強いのかもしれない」と全員の頭によぎった。
しかし負けるわけにはいかない。ドンジャラは僕のほうが長くやっているし、予習だってバッチリやってきた。これじゃあ今まで一緒にドンジャラをやってきた家族に顔向けできない!
僕のギャンブラーとしての直感が言っている。ここで流れを変えるべきだ! 今こそ「ひみつ道具」を使うとき!!
ドラえもんの牌を捨てると「ひみつ道具カード」を使うことができます。しかしひみつ道具の種類は選べず完全にランダム。いいカード来い!!
……引いたのは「もしもボックス」カード!!
なんとこのカードを使用すると、台を90°回転させて人が使っていた牌でゲームを続行することになる。つまり誰かが持っていた牌で勝負を続けることになるという、かなりの博打カードです。
だがしかし、これで戦局が大きく変わるはず!
水口さん「ドンジャラ!!」
驚異の3連勝…! まさかの強運。強すぎる。やっぱり麻雀のプロは一般人にはない何かを持っているのかもしれない。女性版カイジだ。
水口さんが3連勝したものの、まだまだ試合は終わりません。初めにサイコロを振って、一番大きい目がでた人を「親」として、1ゲームごとに時計回りで交代するシステム。親が2周するとゲームセットです(親があがった場合は、次のゲームも同じ人が親になる仕組み)。
ワイワイ楽しみながら進めます
水口さんが強すぎるが、卓を囲んでやるドンジャラは本当に白熱するし楽しい。ドラえもんという共通の認識キャラクターがいるので会話が弾むのもいいですね。
水口さん「出木杉くんは高得点にならないので、すぐ捨てちゃいますね…」
北村さん「映画では彼は呼ばれないですからね」
僕らはドラえもんの思い出話というより出木杉くんディスっているだけでしたけどね。
カニ巫女さんがルールを把握できない…!
ゲームは順調に進んでいったように思えましたが、ここで重大なことが発覚。カニ巫女さんがルールをあまり把握していないという…。
カニ巫女「コレってあがりになっているんですか?」
カニ巫女「あ、すいません…リーチじゃありませんでした……」
1人で困惑している状態だった。特別に「ルールを忘れて流れを止めた際はドルをみんなに払う」というルールができるほどでした。1人の力でルールができるなんてある意味で革命家だ。
僕もあがれました!
カニ巫女さんは置いておいて、勝負は進みようやく僕もあがることができました。
うわー! ドンジャラで久しぶりにあがれると単純にうれしい! そしてプロの連勝をようやく止められました!!
北村さんもあがった!
そして、中盤になって北村さんもあがり、いよいよ優勝候補も実力を現し始めました。戦いは誰が勝つのかわからない状況に。
いつの間にか真剣な空気に
ゲームも進み、佳境に入ってきた。水口さんも要領をつかみ始めて得点の高い役を狙ったりひみつ道具を駆使しだしたりして、一進一退の攻防が続く。
遊び感覚でやっていたはずなのに不思議と「負けたくない!」って意地がでてくるからおもしろい。
そして勝負は終盤戦というところで、とある人物の快進撃が始まる。この場を制するといってもいいくらいの力を発揮する。革命家の登場です。
なんと一気に追い上げたのは、カニ巫女さんだ。「ルールがよくわかっていない」と言っていたカニ巫女さんが実力を出し始めたのです。能あるカニは爪を隠すとはこのことか。
カニ巫女さんが一気に連勝し、さらに「骨川家セット」というスネ夫とスネ夫のお母さんが揃った高得点の役をたたきだし、一気に24万ドルを獲得する。通常のあがりは6万ドルなので、ここで一気に優勝候補に踊りでてきました。
ラスト回になってからは北村さんが怒涛の連勝。いよいよゲームは最後までわからない膠着状態に
ちなみに僕はなんやかんやあってかなり負けていて、完全に優勝候補から外れていました。もはや勝つには100万ドルもらえる最高得点のドラえもんの役をだすしかなかったのです。多分勝てる可能性は0.02%くらい。今からジャニーズ入るくらい無謀。
最後はカニ巫女さん、水口さん、北村さんの誰が勝ってもおかしくない状態に。ひみつ道具を駆使し、相手にあがられないように捨て牌を全員が必死に考え、盤面では熱戦が繰り広げられていました。ラストの親回はなんと3度も続くほど均衡した試合となったのです。
全員が真剣に挑んだ結果、いよいよ勝負に決着がついた
優勝はなんとルールを途中までよく把握していないカニ巫女さん! 怒涛の連勝、そして途中で高得点の役をたたきだしたのが勝利の決め手でした。
カニ巫女さん自身も優勝するとは思っていなかったようで、終わったあとに「むしろ空気が読めずに勝っちゃってすみません!」と謝られました。いいんです。これがリアルなんです! これがドンジャラなんです!!
最終的な順位は以下となりました。
ドンジャラと麻雀は似ているけど、やっぱり別物ということがわかりました。麻雀のプロだからといってドンジャラが強いというわけではないみたいです。
むしろルールをあまり把握していないカニ巫女さんが勝つほどなので、ドンジャラは子供から大人までできるいいゲームだといえると思います。
ただ麻雀のプロとやってみて、やっぱりすごいと思ったのは、プロは「負けない」ということでした。僕や北村さんやカニ巫女さんは、あがることしか考えておらず、とにかく必死に手を揃えようとしていました。
しかし、水口さんは誰かがリーチをかけたとき、相手の捨て牌や周りの状態を見て、とにかく相手にあがられないように試合をしていました。
だから、水口さんが牌を捨てて誰かがあがったことはなかったと思います。
それから、水口さんは考えてドンジャラをやっているようでした。ずっと得点表を見てドンジャラを研究していました。僕ら3人は「あがった! うれしい!」だけだったけど、水口さんは終わったあとの牌を見ると得点が高い役を揃えようとしており、常に考えているようでしたね。
ということで「麻雀のプロはドンジャラも強いのか?」という検証結果は…!?
「麻雀のプロとドンジャラの強さは関係ないけど、一般人より常に考えてやっている」ということになりました。
でも本当に楽しかったです。ドンジャラってやっぱりおもしろい。大人になってからやってもおもしろいものですね…! 本当にいいゲーム。またやりたい!!
検証は終わったけど、最後に水口さんと一緒に麻雀をやらせてもらっちゃいました。カニ巫女さんと北村さんは麻雀をやったことがないらしいので、カニ巫女は教えてもらいながらやっていました。いきなりプロに教えてもらいながらやるとはぜいたく。
ちなみにカニ巫女さんや北村さんが麻雀を知らないうえに、水口さんが教えながらやっているかなりのハンデがある中で、空気を読まずに僕があがりました。「麻雀は水口さんがあがりました! やっぱりプロは強い!!」とすればこの記事のオチもキレイになっていいものを…
今思えばあんなにドンジャラ楽しかったのに、あのときの「おいおい、お前があがるのかよ…」という冷めた空気がすごかったな…。
時が戻るならあのときに戻ってやり直したい! 助けてドラえもん!!