沖縄県住宅供給公社(那覇市旭町)で、公営住宅の入居申請などを受け付ける窓口カウンター内に「貧乏退散」と書かれたシールが貼られていたことが28日、分かった。2月上旬に外部からの指摘を受け、公社は「不適切だった」と謝罪。シールを剥がしたが、生活困窮者の支援者は「貧困を、自分たちが生きる社会の問題として考えていない証拠だ」と厳しく批判している。(社会部・島袋晋作)

 シールは、カウンター越しにあるキャビネットに貼られ、来訪者から見える状態だった。そばには「どん底」「人生強気」と書かれたシールも貼られていた。

 2月上旬、団地への入居継続を希望する男性の付き添いで公社を訪れた司法書士の安里長従さんが発見。問題を職員に指摘し、経緯や趣旨の説明を求めた。

 指摘を受けた公社はシールを剥がすとともに、職員や退職者を含む歴代の担当者から聞き取り調査をしたが、住宅部の崎浜秀人部長は「時間が経過し、経緯が確認できなかった」「指摘を受けるまで誰も気付かなかった」と説明。いつから貼られていたかも不明という。

 シールは「駄菓子の景品」であり、「何げなく貼ったと推測され、意図したことはないと考えている」との見解を示した。

 その上で「窓口に来られた県営住宅の入居者らに対して、不快な思いをさせたことに心よりおわびする。配慮が足りなかった」と謝罪。全職員に対して注意喚起したと説明した。

 沖縄憲法25条を守るネットワーク(沖縄25条の会)の事務局長も務める安里さんは「生活困窮者も訪れる場所。長期間貼られていても、そこに想像力が及ばなかったことこそが問題だ」と批判。「行政がそういう感覚でいれば、市民による貧困の自己責任論やバッシングにもつながりかねない」と警鐘を鳴らした。

 

■住民「何の目的?」「嫌な気持ちに」

 県住宅供給公社の窓口カウンター内に「貧乏退散」と書かれたシールが貼られていたことに対し、県営住宅の住民は不信感と怒りをあらわにした。

 「何、これ、私たちを差別しているの」。那覇市古波蔵の県営住宅に住んで25年になるという女性(52)は、記者からシールの写真を見せられて驚きの声を上げた。「何の目的で、どういう意味で貼っていたのか知りたい。嫌な気持ちになった」と険しい表情で話した。

 両親と一緒に入居する女性(36)は「約30年住んでいるが、両親は申請のたびに『すみません』との思いで頭を下げている。気持ちが苦しい」と語った。

 小学生の子どもを含め、家族5人で住んでいる男性(37)は「こんなシールが貼られているのに、職員の誰一人と気付かなかったことが許せない。そういう目で入居申請する人を見ているのだろう」とあきれた。

 同市壺川の県営住宅に住む男性(50)は、姉と母親の3人暮らし。「ぎりぎりの生活をしている自分たちに向けて言われているみたいで涙が出る」と悲しげな表情。「もしステッカーを見つけていたら、その場で剥がしてやりたい。悔しい」と憤った。

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