オリエンタルランド社長兼COO 上西京一郎氏

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東京ディズニーランド」「東京ディズニーシー」を運営するオリエンタルランドは、2016年4〜12月期の連結営業利益は前年同期並みの921億円だったことを今年1月30日に発表。
一方、入園者1人当たりの売上高は16年4〜12月期も増加している。過去3年連続、入園料を値上げしていたが、入園者数は3000万人超と当初の中期経営計画を上回っている。

■3年連続値上げでも、予想を超える入園者

――入園料については、どういった判断か。

【上西】常にハードとソフトに投資をし続け、それにより提供されるサービスに入園者が満足していれば、後から入園料を引き上げる。消費者は敏感だから、価値のないものにはお金を払わない。

――昨年は6月に上海ディズニーランドが開園、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は入園者数過去最高記録を更新した。影響は?

【上西】ほかのテーマパークと競合し、お客様を取り合うことはない。むしろ、上海圏の3億人にディズニーの魅力を感じてもらうことは、我々に対しての興味関心にもつながる。マーケットが広がることは歓迎だ。

――ディズニーのファンになってもらうために、最も大事にしていることは。

【上西】お客様の体験価値だ。私たちはそれを「ハピネス」と呼んでいる。

東京ディズニーランドは開園から33年、東京ディズニーシーは15年が経つ。この間に6億7000万人を超える方々に訪れていただいた背景には、「口コミ」効果があると思う。宣伝も刺激剤としては重要だが、入園者の声に勝るものはない。入園者をしっかり満足させなければ、新規のお客様もリピーターも増えないということだ。このこと自体が、今後の少子化による人口減少への対応策にもなる。

――入園者のうち2回目以上の方が90%以上とリピート率が高い。

【上西】そのために力を注いでいるのが、アトラクションなどのハード(設備)と、それを扱うスタッフの教育やモチベーション向上のための施策(ソフト)への投資だ。

ハードでは、16年から20年までの間に約2500億円を投資して「美女と野獣エリア(仮称)」や、映画『ベイマックス』をテーマにした新アトラクションなどを新設する。

ソフトは、16年からビジネススキル研修などホスピタリティを高める新しい教育プログラムを始めるほか、ロサンゼルスのディズニーランドと同じスタッフ研修を毎年実施するなど、モチベーションを高めるためのプログラムが始まったところだ。

――スタッフのホスピタリティはマニュアル化されているのか。

【上西】3000万人のお客様に対して、すべて対応できるマニュアルはつくれるものではない。一人ひとりのスタッフが、状況に応じてお客様が何を望んでいるかをしっかりと受け止めて、対応していくほかない。そういうスタッフを育てるためにはどうするかを試行錯誤してソフトへの投資をしている。

――いつまで投資し続けるのか。

【上西】「これでいい」ということはない。たとえば、直近の例でいうと東京ディズニーシーの「トイ・ストーリー・マニア!」という新しいアトラクションが人気になった。それによりお客様の満足度が高まったことは間違いないが、お客様がずっと満足し続けるかというとまた別だ。パークに来たときにはまた違う新しさを提供することで、既存のアトラクションも生きてくる。

それが、ウォルト・ディズニーの言った「パークは永遠に完成しない」ということだと思っている。

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オリエンタルランド社長兼COO 上西京一郎
1958年、東京都生まれ。80年4月入社。以後、総務部、スポンサー業務部を経て、2003年取締役総務部長に就任。取締役執行役員経営戦略本部長などを経て、09年4月より現職。

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(朽木誠一郎=文 むかのけんじ=撮影)