2018年ロシアW杯アジア最終予選対UAE戦が行われるのは3月23日。慣例に従えば、そのメンバー発表は3月上旬だ。Jリーグの日程で言えば2節(3月5、6日)が終了したあたりか。

 代表チームが最後に試合を行ったのは、昨年の11月15日。試合が行われるのは4ヶ月ぶりだ。ハリルジャパンにとって、試合間隔がこれだけ空くのは、昨年のこの時期に続き2度目。だが、前回が2次予選の最中だったのに対し、今回は最終予選の最中。しかも次戦は、初戦のホーム戦で苦杯をなめているUAEだ。再度敗れれば4位転落。出場圏外に放り出される、今予選のハイライト。最重要カードと言ってもいい。

 ところが、1ヶ月後に大一番が迫っているというのに、サッカー界が緊張感に包まれている様子はない。プロ野球のWBCの報道に完全に劣っている。少なからず、注目すべき事件が起きているというのに、だ。問題提起の仕方が下手というか、敢えて見過ごそうとしているのか。メディアの事なかれ主義も輪を掛ける。その最たるものは結局、起用される見通しのないミランに居座る決断をした本田だ。

 不思議なのは、本田に低評価を下すモンテッラ監督ではない。評価されていないことを承知しながら、プレイ機会を最優先に求めなかった本田のプロサッカー選手としての姿勢だ。

 注目はハリルホジッチの対応だ。考えられる選択肢は以下の4つ。

 (1)それでもスタメンで先発起用する
 (2)前戦、サウジ戦のように交代出場に止める
 (3)代表には招集するが試合には使わない
 (4)宣言通り、代表には呼ばない

 いずれにしても、これは、11月から引き続いている関心でもあり、移籍市場が閉じられた瞬間(1月末日)、決定的になったいわば事件だ。

 日本代表での背番号は4ながら、実質は10だ。2010年以降、日本代表の顔役として、もっと言えば、日本サッカー界の顔として存在してきた本田。ハリルホジッチの選択が(1)でも(4)でも大問題。大問題になることを承知で、ミラン残留を選択した本田の決断も大問題。「所属クラブで試合に出場していない選手は使わない」というハリルホジッチの意向に真っ向から背く選択であるにもかかわらず、大きな騒ぎに発展しなかった日本のサッカー界もまた大問題。メディアとして、真っ先に飛びつくべき話になるが、ハルホジッチのコメントも、本田のコメントも、いずれも表に出てきていない。

 それに比べれば、テネリフェに移籍したものの、いまだ練習に参加できていない柴崎の方が問題の程度は低い。クラブW杯直後のハリルホジッチのコメントを聞く限り、次は呼ばれそうなムード感じた期待の選手だが、本田に比べれば、今のところ小者。本田のサッカー選手としての不思議な行動はいま、柴崎問題の陰に隠れた状態にある。

 一に本田、二に柴崎と言うわけでもない。所属チームで出場機会に恵まれていない選手は誰か。ハリルホジッチの言葉に従えば、海外勢の中で落選の可能性を秘めている選手は誰かと言えば、香川、長友の名前が浮上する。

 香川の出場機会はブンデスリーガ21節を終了して、交代出場を含めて10試合。合計わずか525分だ。90分の試合を6試合分こなしていない計算になる。ハリルホジッチはそれでも呼ぶだろうが、香川は本田に次ぐ中心選手。背番号は10だ。ハリルジャパンの虚しい現実を象徴する事象と言える。

 そして長友。確かにアモーレは美しい女優さんだ。よくやったと拍手を送りたくなる、まさにおめでたい話だが、サッカー選手としての長友は、逆に大きな苦戦を強いられている。こちらの出場時間は25週を消化して計501分。およそ4分の3の時間、ベンチを温めている計算になる。私生活でいま一番おめでたい選手に、落選の危機が忍び寄っているわけだ。