「LINE未読200件」高校生がLINE離れしてインスタに向かう理由

「高校生はもうLINEを使っていない」

取材先でそう耳にする機会が増えた。企業のプロモーション担当者は、どのSNSで若者にアプローチをするか頭を悩ませている。

実際に高校生や20代の女子に聞くと、「気付いたらLINEを使わなくなった」と“LINE離れ”を口にする。

「LINEが久しぶりに鳴ったかと思ったら、『広告かよ』って」(27歳女子)

もはやLINEを通じた企業の宣伝は、逆効果のようだ。

彼女たちがアクティブに使うのは、もっぱらインスタグラム(Instagram)だ。「インスタのDM(ダイレクトメッセージ)で連絡を取るようになってから、あまりLINEを使わなくなった」そうだ。しかも、彼女たちは独自の手法でインスタを駆使している。

LINE離れのイメージカット

若い子と連絡を取りたくてLINEを使いこなす親世代。時には、親世代から大量のスタンプが送りつけられる。その若者へのアプローチの仕方、間違っているかもしれませんよ。

都立高校の女子高校生(17)の日常は、スマホとともにある。帰宅後は終始、インスタ→ぶつ森(どうぶつの森)→インスタ→YouTubeのサイクルを回す。

気が付けば、LINEを使わなくなった。前は未読も既読も溜めなかったけど。LINEはすぐ返す方が少ない。友人には未読が30〜40件溜まっている人もいる。未読スルーを嫌がる人もいると思うけど、今は当たり前になっている」と話す。

まったくLINEを使わないわけではない。利用シーンは、「あまり仲良くない子」や、すごく親密ではないが「仲良くなっていたい子」とのやりとり。「高校生が終わるわ(卒業するわ)」「学園祭の劇、めっちゃ楽しかった」などの内容を、「結構な文章量で連絡し合っている」という。しかし、返信のペースはお互いに1〜2週間に1度ぐらい。そのやりとりがもう2年近く続いているんだとか。何とも不思議な関係だ。

「インスタはLINEよりも写真が(前提に)あって」

アクティブに使うSNSはいつのまにかインスタグラムになっていた。

ミレニアル脱落組はLINEで(笑)

20代はどうか。若年層の流行を分析する企業「ブームプランニング」で実体験を聞いた。

同社のプランナーの堀江葉さん(24)は、高校生のころはmixiボイス、大学3年まではLINEやTwitter、大学4年ごろからInstagramに移行した。

「インスタで情報を得て、インスタのDM(ダイレクトメッセージ)でやりとりする。LINEを使うのは(インスタ)ストーリーズ(注:24時間で投稿が消える機能)にあがったものを、『あれ、あげてたよね?』とグループで共有するときくらい。既読でも未読でもOKになった」

と話す。ちなみに

高校1年の妹はTwitterメイン。LINEは200件も未読が溜まっている。未読は開いて見ないで(既読を付けずに)、まとめて消すそうです。高校3年の妹はインスタ。ツイキャスもやっていたみたいです

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20代のSNSの利用方法は、コミュニティや世代により異なる。左から、堀江さん、清水さん、中村さん。

撮影:木許はるみ

堀江さんより、やや年上のプランナー清水絵梨さん(27)は、「自称SNSモンスター」。

Facebook、Instagram、Twitter、LINE、Snapchatを使うものの、主にInstagramを使う。

実際、清水さんの従兄弟3人のうち、21歳はFbのmessengerかLINE、18歳はLINE、高校3年生はInstagramやLINEを使う。

学年、コミュニティが違えば、使うツールが違う。彼らと連絡を取りたければ、ツールを合わせないとレスをもらえない」(清水さん)

清水さんの周囲の同世代は、「ミレニアル」と「ミレニアル脱落組」でSNSが違う。脱落組とは、「ミレニアル世代と言われる1980年代以降に生まれたが、年配の人々に囲まれ、デジタルネイティブな感覚を失いつつある属性」のこと。

脱落組はLINEを使い、かつ日常的にメッセージが長い。連絡事項でもバナーに収まらず、数行にわたり、スタンプや「w」を使わず、顔文字や「(笑)」を用いて、「ガラケー時代」を彷彿とさせるそうだ。

本アカには盛れてる写真、裏は「うるさくしていい」

前出の女子高校生にインスタの画面を見せてもらった。アカウントは、本アカ、裏アカ、好きなユーチューバーの写真を投稿するアカウントの3つだ。

本アカは「見返したくなる日記」、盛れた写真、楽しそうな写真を載せる。

裏アカは、彼女にとって「うるさくしてもいい」場所。うるさいというのは、盛れていないような写真も気軽に次々と載せるということだそう。

ストーリーズを見せてもらうと、地元の友人とカラオケに行った動画が投稿されていた。彼女の友人は、その投稿をスクリーンショット(スクショ)した画像にコメントを書いてストーリーズにあげていた。さらに、彼女は友人の投稿をスクショして、またコメントを書き足してアップ。なぜ、そんな手間なことを、と思ってしまうが、「それが主流」なんだとか。裏アカの名前は、仲のいい子だけがわかるあだ名にしている。

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インスタグラムをフォローするかどうかは、3スクロールで決めるという。

REUTERS/Thomas White

彼女の友人の男子高校生は、女子大生の真似をして「200いいねをもらう」という試みをしている。そんな「ギャグセンの低い男子もいる」。ファッション好きなおしゃれな「インスタグラマー風の男子」は、それっぽいおしゃれな写真を本アカで投稿していた。

本アカの投稿には、ある鉄則も存在する。

清水さんは、本アカの投稿は「あえて100投稿くらいに抑えないと、自己ブランディングができない」という。本アカは、プロフィールの代名詞だ。企業やブランド、インフルエンサーのアカウントをフォローするかどうかは、「3スクロールくらいでジャッジ」する。投稿画面を3スクロールして、気に入ればフォローするということ。企業のアカウントは3スクロールの投稿に磨きをかけるのがコツという。

LINE全盛期は2012年から4年間

ブームプランニングによると、LINEは2012年から4年ほどは高校生、大学生に爆発的に使われた。

一方、2016年からはインスタグラムも浸透し、「高校生の時間がインスタグラム、LINE、Twitterに3等分された」(清水さん)という。Instagramに、24時間で投稿が消える「ストーリーズ」ができ、ビジュアル版のTwitterのような役割を果たすようになった。投稿された写真をDM(ダイレクトメッセージ)でやりとりをすれば、わざわざLINEを使う必要はない。「機能がインスタで完結してしまうようになった」ということだ。

さらに、SNSモンスターの清水さんは、インスタの小まめなアップデートが気に入っている。「評判が悪いと機能が改良されて、思い通りに変化していき、愛着が湧く。アップデートに一喜一憂して楽しんでいる」と話す。一方、LINEは「LINE Pay」「LINEデリマ」と「ファンクションが増えすぎた」と指摘する。

インスタグラム側は取材に、ユーザーのコミュニティが主催するフォトジェニックな写真の撮影会「インスタミート」に参加するなど、ユーザーの声を聞いて機能の改善に役立てているという。

女子高生のLINEのアクティブユーザーは低い?

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2017年10月の調査では、女子高生が利用するSNSは、LINE、Twitter、インスタグラムの順に多かった。

出典:若年層調査のTesTee(テスティー)

若年層調査の「TesTee(URL:https://testee.co/)」が女子高生500人にSNSの利用状況を調査した結果、利用するSNSはLINEが98%、Twitterが80%、インスタグラムが56%の順に続いた。

用途などを合わせて質問すると、LINEは「連絡用」と答える人が多く、Twitterは、「アカウントにより、キャラクターを変える」という割合が高かった。インスタグラムは、音楽やファッション、食事が趣味のユーザーが多かった。

TesTeeは7月に、一部の女子高生の間で流行っていたという「おじさんLINEごっこ」を調査。ごっこの文面は、「絵文字や顔文字」で溢れていた。まさに、「ミレニアル脱落組」が使うような「ガラケー」を思い起こさせる文面だった。

データ上では、多くの女子高生に支持されるLINE。しかし、ブームプランニングの中村泰子代表(57)は、「女子高生のアカウントの所持率は100%だが、アクティブユーザーは減っているのが現状」と分析した。

女子高生からのブームが見えにくい

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かつては女子高生を発信源にさまざまなブームが起きた。

撮影:今村拓馬

中村さんは、約30年前から女子高生のマーケティングをしながら流行を見続けきた。

1990年代までは、プリクラ、カラオケ、ルーズソックスというブームが、「女子高生自身のリアルな口コミで広がった」というが、「今はSNSの中で個々が動くので、ブームが見えにくい」と分析する。SNSを通じて、個々の趣味に合わせた情報を得られるので、女子高生の共通のブームは起きにくい。

しかし、「SNSでターゲットを絞り、万人には無理でも、コミュニティーにつながれば応援してもらえる」と新しい流行の作り方に期待する。企業によって、まず大切なのは、世代、コミュニティに合ったSNSを選ぶことになりそうだ。

(文:木許はるみ)

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