民主政治のルールの中で政治力を獲得しながら、自らの政治的思いを実現する道を選択した。都議会議員選挙に乗り出す今の小池都知事も同じ。

改革を進めるには「劇場型」の政治だって必要だ!

大阪都構想法案は、2012年8月29日成立した。各党国会議員の皆さんが成立させてくれて、これは感謝、感謝なんだけど、でも大阪からお願いしただけで全てこちらの思う通りにやってくれる、なんて甘いもんじゃない。

もちろん、みんなの党(当時)の渡辺喜美さん、当時は野党だった自民党の菅義偉さん、与党民主党(現・民進党)の前原誠司さん、逢坂誠二さんは、地方分権に力を入れていた政治家なので、特に力を注いでくれたと思う。でも最後、政党として賛成に回ってくれたのは、そのときの維新の会の政治状況も大きな要因になっていたと思う。お願いだけじゃダメなんだよね。政治力を持っていないと。沖縄が基地問題で自らの意思を実行できないのは、政治力が足りないから。厳しいようだけど、これが政治の現実なんだよね。理想論や口だけでは政治は動かない。

あのとき維新の会は、大阪での一地域政党。大阪府知事、大阪市長は維新の会。府議会は過半数。大阪市議会はかなり優位な第一党。堺市議会はぎりぎりの第一党。加えて、その他地方議員が少し、という状態だった。そして国会議員はゼロ。

こんな状態で、永田町・霞が関の目を大阪に振り向かせて、大阪都構想法案の採決において衆参の国会議員の過半数に賛成起立してもらう。口で言うのは簡単だけど、これをやるのはほんと大変だよ。

大阪維新の会を結成して組織も金もない中、わずか1年後に既存の政党と統一地方選挙でガチンコで戦うことも大変だったけど、さらに次のステップとして永田町・霞が関にメッセージをぶつけるのはもっと大変だった。単なるデモや陳情じゃ永田町・霞が関は動かない。ましてや自称インテリのように自分の主張を述べるだけでは何も実現しない。やっぱり有権者の支持を背景とした選挙を通じた政治力が必要なんだよね。

国会議員ゼロの状態ではあったけど、大阪維新の会での統一地方選挙の勝利、大阪府知事・大阪市長のダブル選挙の勝利の勢いに乗って、今後全国に国会議員候補者を立てるとぶち上げる。そして改革姿勢を徹底的に示して有権者の支持をつかむ。組織も何もないのだから、魂を込めたメッセージをメディアに乗っけて全国の有権者の共感を得る。

全国の有権者に関心を持ってもらうには、劇場型と言われようがエンターテイメント性を醸し出した政治状況を作ることも必要になる。これを自称インテリはポピュリズムと批判するが、じゃあ組織も金もない中で、国政に政治力を持って自らの政治的思いを実現するのに他にどんな方法があるのか。

口を開けばポピュリズムしか言わないちょび髭藤井なんかは、口ばっかりで自ら実現することを全く考えていない。だから、政治力を持つ方法についてはノーアイデア。批判はするけど代替案については何も持ち合わせていない。まあ彼は権力の犬だから、自民党の二階俊博さんや西田昌司さん(京都選出の参議院議員)にへばりついてモニョモニョ言っていることで自己満足しているんだろう。

僕はちょび髭藤井のような人生はまっぴらごめんなので、民主政治のルールの中で政治力を獲得しながら、自らの政治的思いを実現する道を選択した。それがポピュリズムでダメだと言うなら他の方法を教えてくれよな。

東京大改革を合言葉に今度の都議会議員選挙に乗り出す今の小池百合子都知事も同じ。スケールは違うけど、トランプのおっちゃんも同じ匂いがするね。もちろん、僕も、小池さんも、トランプのおっちゃんも神じゃないんだから、常に絶対的に正しいわけじゃない。

それでも民主政治において自分の政治的な思いを実現するためには、多くの有権者の支持を得る必要がある。それも既存政党の力を借りないとなれば、ポピュリズムという批判を受けてでも、改革姿勢に対する期待感や変化を起こす期待感を最大限に膨らませなければならない。

その後、有権者の支持を得たその政治家が、有権者のためになる政治をするのかどうかは、これはメディアや有権者にチェックしてもらうしかない。三権分立の国なら、議会や裁判所もチェックをする。

保身や自分の利益のため、自分の不祥事を隠すためなどに有権者の支持を取り付けて政治力を得るのはご法度だ。そこをきちんとチェックする重要な役割がメディアや自称インテリにある。ゆえに抽象的なフレーズやレッテル貼りで批判するのではなく、その政治家がやろうとしている政策・改革の中身をしっかりとチェックしていかないといけないよね。

今のところ、小池さんが進めようとしている東京大改革は、中身がよくわからない。それでも、小池さんの改革姿勢や都政の進め方の雰囲気に有権者は強い期待感を抱いている。

そりゃそうだ。小池さんのことを劇場型だ、ポピュリズムだと批判したところで、じゃあ都知事選に出た他の候補者(鳥越俊太郎さん、増田寛也さん)でここまでのことができたか、これまでの歴代東京都知事がここまでのことをやったか。このような比較優位の視点で考えたら、僕を含めた自称インテリがぶつぶつ、ぶつぶつ細かなことで批判をしたところで、有権者の支持は揺るがない。

政治・行政に100%完璧なものはない。常に比較優位の視点で考えなければならない。今の小池都政とこれまでの東京都政との比較。有権者は小池都政に、これまでの都政よりも優位性を感じているんだろうね。

それでも有権者にしっかりと考えてもらうために、僕は、ポピュリズム! などの抽象的なフレーズを用いることなく政策や改革の中身について批評し、そして批判するならしっかりと他の解決策を示した上で批判していきたいと思います。ここが、ちょび髭藤井との決定的な違いです。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.43(2月21日配信)からの引用です。全文はメールマガジンで!!

(撮影=市来朋久)
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