農場の暮らしに、変化が生じている。
Tanza Loudenback/Business Insider
- 「アグリフッド(agrihood)」と呼ばれる新しいタイプの住宅コミュニティーがアメリカ各地で生まれている。
- アグリフッドは、田舎の農村の設備と、都会の現代的な利便性を兼ね備えたコミュニティーだ。
- カリフォルニア州オレンジ郡(Orange County)にあるアグリフッド「ランチョ・ミッション・ビエホ(Rancho Mission Viejo)」には、ミレニアル世代の若者だけでなく、活動的な定年退職者も集まっている。
農場の暮らしに、変化が生じている。
アメリカでは、「アグリカルチュラル・ネイバーフッド(agricultural neighborhoods)」略して「アグリフッド」 と呼ばれる新しいタイプの住宅コミュニティーが、不動産の最新トレンドの1つとして、人気を集めている。
アグリフッドの開発業者たちは、新鮮な野菜や果物、広々としたアウトドア・スペースといった田舎の農村の設備を、都会の現代的な住宅地に取り入れようとしている。住宅も、ソーラーパネルやコンポストのある、環境にやさしい作りとなっていることが多い。
「人々のつながり方も変化し、デベロッパーやプランナーは、活気のある、魅力的なコミュニティーを作るため、よりクリエイティブな選択肢を模索している」カリフォルニア州オレンジ郡にある、2万3000エーカー(約93平方キロメートル)のアグリフッド「ランチョ・ミッション・ビエホ」を手がけたポール・ジョンソン(Paul Johnson)氏は語った。
「以前ならショッピングモールやコミュニティー・センターが建設されたような場所に、デベロッパーは今、変化する人々の生活ニーズに応える場を作ろうとしている」と同氏は言う。
ランチョ・ミッション・ビエホでは、住宅はコミュニティー・ファームを取り囲むように建てられている。アグリフッドは、今日のアメリカ最大の住宅購買層であるミレニアル世代の若者だけでなく、活動的な定年退職者をも魅了している。
Business Insiderは実際に現地を訪れ、アグリフッドの暮らしがどのようなものか、探ってきた。
ランチョ・ミッション・ビエホは、カリフォルニア州最大のマスタープランに基づく新しいコミュニティーだ。完成すれば、6000エーカー(約24平方キロメートル)の住宅地と1万7000エーカー近い(約69平方キロメートル)生物保護区で構成される。現時点で、建設は約25%完了している。
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最初に作られた2つのエリア「Esencia(エセンシア)」と「 Sendero(センデロ)」には、タウンハウス(庭付きの低層集合住宅)や戸建住宅、分譲マンションを含む3411戸の住宅が建ち並ぶ。
Rancho Mission Viejo/Facebook
新築住宅の価格は、40万ドル(約4500万円)から100万ドル(約1億1200万円)以上。世代間交流を促すため、55歳以上向けの住宅もあるという。
Rancho Mission Viejo/Facebook
この土地は100年以上にわたり、牧畜に使われてきた。開発業者はそこから「アグリフッド」という言葉を思いつき、地域の歴史を保存するためにも、コミュニティー・ファームを取り囲むようにそれぞれの住宅エリアを配置することにした。
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3つのコミュニティー・ファームに加え、ここにはプールやハイキングコース、公園、クラブハウス、コーヒーショップもある。
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「センデロ」で母親と暮らす20代の女性マリッサ・アルバーソン(Marissa Alverson)さんは、ソフトウエアの営業の仕事をしている。彼女にとって、農場は「素晴らしいストレス緩和剤」だと言う。アルバーソンさんは、引っ越してすぐにボランティア活動を開始、今では定期的に農場を訪れている。
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裏庭に畑があることの魅力の1つとして、アルバーソンさんは、いつでも新鮮で美味しい野菜や果物をとりに行けることだと語る。
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それぞれのコミュニティー・ファームは、住民がアクセスしやすいよう注意深く配置されていると、ジョンソン氏は言う。「これは、後からではどうにもならない」
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「エセンシア」で、ファーム・プログラムに参加しているのは、約65世帯。参加する世帯は、利用料として半年ごとに100ドル(約1万1200円)を支払い、毎月4時間のボランティア活動を行うことが求められる。その代わり、農場がオープンしている時間であればいつでも花やハーブを摘むことができ、毎週かごいっぱいの農作物を収穫することができる。
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写真のようなワークショップ・エリアもある。ここでは、農場でとれた季節の食材を使った料理教室などが開かれている。
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写真のエセンシア・ファームには、プランターベッドに加え、26本の果樹、9本のアボカドの木、桑やクルミ、月桂樹の木があり、納屋や温室、道具小屋、堆肥化システム、鶏舎もある。
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「若い家族連れからリタイアしたシニア世代まで、農場の活動に参加する人の年齢層は幅広いの」こう語るのは、センデロ・ファームに参加するアルバーソンさんだ。特に子どもにとっては、コミュニティー作りの良い機会になっていると言う。「農場は、まさに『子どもは社会全体で育てる』のルーツなのよ」
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「アグリフッドは、環境やコミュニティーの仲間、両方とのつながりを構築する」ランチョ・ミッション・ビエホのコミュニティーサービス部門の責任者、アマヤ・ジェナーロ(Amaya Genaro)氏は言う。
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「アグリフッドの何に共感するかは、人によって異なるかもしれない。だが、この歴史的な農場の遺産と文化は守り続けられる」とジョンソン氏は言う。「『土地を世話すれば、土地があなたを世話してくれる』は、ランチョ・ミッション・ビエホのかつての女性リーダー、マルグリット・デイジー・オニール(Marguerite 'Daisy' O'Neill)の言葉だ」
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[原文:Millennials are abandoning the suburbs for a new kind of neighborhood — see inside]
(翻訳/編集:山口佳美)