愛車のボディーがくすんで見えるのは、切ないものです。それを避けようと「しっかり洗車して、ちゃんとワックスもかけて」という人のほうが、実はかえってくすみやすいかもしれません。洗車のプロにその理由を聞きました。

愛車にワックス、ちゃんとかけていますか?

 大切にしている愛車、ふと気付くと色がくすんで見える、という経験はないでしょうか。スーパーの大型駐車場のような、たくさんクルマが並んでいる場所では、特にその感覚に襲われやすいもの。「うちのクルマ、こんな色だったっけ」なんて……これ、ちょっと切ないですね。


ワックスは正しい知識のもとでかけないと、かえって残念なことに(写真出典:kamolnatt456/123RF)。

 くすんで見える原因は、まず、紫外線などによる単純な経年劣化が考えられます。保管場所を変えない限り、それはもう仕方がないこと。しかし、それ以外に実は「愛情をかけて手入れすればするほど、ボディーをくすませてしまっている」という場合があります。そんなとても残念な原因、それが「ワックスがけ」です。

 見た目の問題だけでなく、クルマを良い状態でキープするためにも、洗車は大切です。しかし、「毎週毎週手洗い洗車して、きっちりワックスをかけて……」というやり方は、かえって悪影響を与える場合があります。それは、「ワックスを完全に落とすのは難しい」からです。

見えないワックス、そこにある「落とし穴」

 洗車するとき、「完全にワックスを除去すること」を心掛けているでしょうか。「走行しているうちに不純物と混ざり、油膜となった古いワックスを、普段の水洗い洗車でムラなく完全に落とすのは難しいものです」と、クルマの美観に関するメンテナンスを行っている千葉ガレージ(東京都杉並区)の千葉邦彦さんは話します。

 また、汚れと違い、ワックスの残りは目で見て分かりにくいため、きちんと落とせているかは非常に確認しづらいものです。

「完全にきれいにするにはプロに頼む手もありますが、ワックスを落とすための専用研磨剤なども発売されていますので、ご自分でやってやれないことはありません。でも、ドア1枚ずつきっちりクリーニングして……なんて洗車は、そうたびたびできるものではありませんよね」(千葉ガレージ 千葉さん)

 古いワックスを落としきれなかった場合、ムラになったボディーに新たにワックスを塗ることになります。それが回数を重ねるたび、どんどんボディーに積層していってしまう……これこそ、ボディーがくすんで見える原因です。

結局、ワックスはかけたほうがいいのか?

 では、ワックスはかけないほうがいいのか、というと、そんなことはもちろんありません。一度洗車したら、汚れはなるべく付けたくないのが本音。そのために、ワックスはとても有用です。

 ボディーの塗装そのままの状態ではなく、それをカバーするワックスが乗った状態でついた汚れなら、直接ボディーをこすらず簡単に落とすことができます。また、水切れが良くなるため、躍起になって拭かなくてもすむことから、ボディーに摩擦による余計な小傷もつきません。

「ワックスは、クルマをツヤツヤに見せるためのものではなく、汚れの防止策。そう思って使用し、過剰に塗るのをやめて、塗りなおす際にはしっかり落とすこと。これを心がければ、愛車の色ツヤは長持ちするでしょう」(千葉ガレージ 千葉さん)

 繰り返しますが、大切に愛情をかけすぎて逆効果、というのは悲しいので、愛車は正しくケアしたいものです。