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デビュー当初から、テイラー・スウィフトの曲はわたしたちを魅了していた。2006年にリリースされた彼女の名を冠したアルバムは、陽気な「Our Song(アワ・ソング)」と、愛情を表現した「Tim McGraw(ティム・マックグロウ)」という強烈なシングル2曲を擁し、自分のことを包み隠さない身近な存在として、その地位を確立した。彼女はリスナーに自分の秘密を打ち明け、一緒に歌うことを許したのだ。

その後10年の間、リスナーが年齢を重ねても、「You Belong With Me(ユー・ビロング・ウィズ・ミー)」「We Are Never Ever Getting Back Together(私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない)」「Blank Space(ブランク・スペース)」といったスウィフトのヒット曲は多くの人に受け入れられ、誰もが20代の彼女の生き方に引き込まれていった。

2014年、スウィフトの「Shake it Off(シェイク・イット・オフ〜気にしてなんかいられないっ!!)」は、タブロイド紙での批判など自分を悪く言うものを批判した「騒動の日々」を歌ったものだが、それでもみんなで励ましあうような「応援歌」だった。いずれにせよ、スウィフトの世界では「彼女との結び付き」を常に感じるものだったのだ。

3年ぶりの“非”サウンドトラック曲だったが…

11月に発売されるアルバム『Reputation(レピュテーション)』からのシングル曲である「Look What You Made Me Do(ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ)」は、3年ぶりの“非”サウンドトラック曲であるが、これほど失望させられたのはなぜだろうか。おそらく、スウィフトのキャリアで最も「寒々しく」「よそよそしい」曲だからだろう。はかないピアノの音により21世紀最高のポップアーティストが悪の末裔に没落してしまっているのだ。

また、この曲の自意識過剰で自己拡張的な歌詞では、人々の心を惹きつける効果は薄い。「あなたのちっぽけなゲームが気に入らない/あなたの傾いたステージが嫌い」とスウィフトは歌っているが、これは明らかにカニエ・ウェストのことを指している。それともキム・カーダシアン・ウェストだろうか(それともケイティ・ペリー? ニッキー・ミナージュ?)。

結局のところ、スウィフトにこの曲をつくるようにけしかけたのが誰かというのは問題ではない。その後の2週間にわたってインターネットが、この標的に関する議論に費やされることが問題なのだ。

もちろん、それがすべてスウィフトの意図によるものだった可能性もある。彼女にとって最高の引き立て役であるウェストとまったく同じように、彼女はインターネットで一連のドラマがどのように展開していくかを完全に知り尽くしている。今回の新曲は、話題づくりとしてSNSを焚き付ける意図のある曲であり、ダンスというよりダイレクトメッセージだ。

スウィフトはアルバム『1989』の「Bad Blood(バッド・ブラッド)」によって再びポップカルチャー界を支配し、そのコーラスのよさが誇張されたことで、彼女が実際には何も発していないことを見落としてしまう。だが、この曲でさえ、「メイド・ミー・ドゥ」のように計算通りにいったわけではなかった。

「メイド・ミー・ドゥ」は、以前のような感情的で繊細な題材ではなく、実験的に成功したような感じなのだ。間の抜けた感じで発せられる「テイラーはただいま電話に出られません」という部分はどうだろう。 

この歌詞がまったく本音とかけ離れている様子は、このわざとらしいジョーク自体が小さなミームになり、この歌が人の頭のなかや時代精神の価値を超えて留まり続けることを理解しているかのようだ。

だが、「メイド・ミー・ドゥ」からわかることは、多くの人々が直面しているのと同じ問題をスウィフトも抱えていることである。つまり、彼女はインターネット上の「テイラー・スウィフト」に関して読みすぎている。

すべてが「麻薬」のようなものである。曲は個人的というよりも演奏性が高く、日々の生活において重要ではなさそうな一連の不可思議な論争に対するぼんやりとした言い返しなのだ。彼女が早く“森”の外に出て、そして自らの思考からも解放されることが望まれる。

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