紺野健太郎●1978年、東京都生まれ。融資先を見つけてから物件を探すという新しい不動産購入スタイルを確立。投資とライフスタイルの情報を共有する「毎月100万円キャッシュフロー倶楽部」を主宰している。

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■時間を自由に使える金持ちになりたい!

高校中退し騎手を目指して渡豪するも挫折、ホテルに就職しベルボーイになったが朝から晩まで働いて年収240万円の現実を知る。高級外車で乗り付ける身なりの良い客を見るたびに思った。「自分もあんな金持ちになりたい……」それが紺野氏が投資を始めた原点だった。

「ホテルを辞めてネット企業の営業職に転職したら、いきなり年収が800万円に上がったんです。でも今度は激務で、休日はほぼゼロ。僕は海外旅行が好きなんですが、せっかく年収が上がってもどこにも行けません。早期リタイアできるまで貯金してから旅行三昧しようかとも考えましたが、十分な額が貯まる頃には高齢で体力がなくなっている。旅をしながら収入を得るには、不動産投資しかないと思ったんです」

だが、紺野氏は当時まだ25歳、資金もなければ知識もない。そこでノウハウを得るために、不動産投資会社→税理士事務所→不動産管理会社と職を転々。宅建やFPの資格を取り、元手となる200万円をつくった。

「それで31歳のとき、神奈川県大和市に築24年のワンルームマンションが買えたんです。価格は1000万円以下、ノンバンクから年利4.3%、30年の長期融資を受けました」

ところが実際に運営してみると、管理費や固定資産税などがかかり、手元には月2万円ほどしか残らない。苦労してようやく手に入れたワンルームだが、ベルボーイ時代の年収を得るには、同じ物件を10室も所有しなければならないのだ。

■重視すべきはキャッシュフロー

「それで気づいたんです。不動産を買うときは、誰もが物件にどれだけの資産価値があるのかを気にしますよね。でも投資として見た場合は、月々いくらが手元に残るのか――すなわち“キャッシュフロー”が大事なんだということに」

そこで今度は利回り重視の一棟建てアパートを狙うが「年収と自己資金が不足している」と冷たくあしらわれるばかり。それでも挫けず100軒以上の不動産会社をあたった結果、神奈川県横浜市に築26年の木造アパートが買えることになった。

■融資と物件の組み合わせがカギ

「第2号物件は、諸経費と税金を引いても月19万円が手元に残りました。第1号物件と合わせて月収21万円です。この調子で物件を増やしていけば、月収100万円だって可能だと思いましたね。問題となるのはやはり融資でしたが、それも経験を積むうちにわかってきたことがありました。金融機関には築年数や収益率などでそれぞれ融資できる条件が決まっていて、持ち込まれた物件が適合していれば審査は通るんです」

それに気が付いてからというもの、物件購入は飛躍的にスムーズになった。今では旅先からメールとネット電話のやりとりで、物件を購入できるまでになっているという。実際、第8号物件は、バリ島で買い付け、パリで価格交渉をし、ハワイで融資承認を受けたものだ。

「2015年4月に第10号物件を入手して、月収240万円になりました。ベルボーイ時代の年収が、とうとう月収になったんです。貧乏時代に思い描いていた夢は全部、実現できました!」

次なる野望は大好きなパリに築100年の味のあるアパートを購入し、旅行者向けのホテルとして運用することだと言う。不動産投資家、世界を巡る――紺野氏は今月も、物件探しの旅に忙しい。

■毎月240万円のキャッシュフローを生む紺野氏が所有する9物件の内訳

※73室、駐車場29台、倉庫17室。築年数は購入時

「手取り額」は、月々の家賃収入からローン返済額と固定資産税を引き、×0.8を乗じる。この20%は修繕費や入居者募集の経費、空室が生じた場合を想定したロス分だ。全体に築古なのが気になるが「自分の人生の残り時間は限られている。その間収益を生んでくれれば十分と考えている」(紺野氏)。

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●紺野氏が次に手掛ける「Airbnb」とは!?
不動産投資で高利回りを実現するには、物件を安く購入するか賃料を高く取るかだが、最近は格安物件が少なくなった。

そこで紺野氏が目を付けたのが「Airbnb」だ。家主が部屋を貸し出し、泊まりたい旅行者がネットで申し込むシステム。

紺野氏は横浜に築60年の木造平屋+茶室の「第9号物件」を購入。趣のある純和風にリフォームし、外国人観光客に貸し出す計画という。1泊平均2万円で70%稼働すると、実質利回り30%が実現する。

家族やグループで来日する外国人観光客向けに「第9号物件」を純和風に改装中。

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(渡辺一朗=文・構成 山本祐之、加藤昌人、工藤睦子、和田佳久=撮影)