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アメリカのハンバーガーが「旨味」を極める理由とは?

山路力也フードジャーナリスト
日本で生まれた「旨味」が世界を席巻しつつある。(写真:UMAMI BURGER)

ハンバーガーの世界に相次ぐ「黒船」の襲来

2016年に「SHAKE SHACK」が日本進出したことで、一気に加速したバーガーブーム。
2016年に「SHAKE SHACK」が日本進出したことで、一気に加速したバーガーブーム。

 ここ数年、ハンバーガーの本場アメリカからのバーガーレストラン進出が止まらない。2015年に「BAREBURGER」が日本初上陸を果たしたのを皮切りに、翌2016年には「Carl's Jr」と「SHAKE SHACK」が日本初進出。そして2017年「UMAMI BURGER」「THE COUNTER」が相次いでオープンと、アメリカの人気バーガーレストランが続々と日本に進出し、今までにないハンバーガーブームになっている。

 その中でも「SHAKE SHACK」の日本進出は大いに話題になり、日本のハンバーガーブームを一気に加速させた。ニューヨークの屋台として2000年にスタートした「SHAKE SHACK」は、ホルモン剤を一切使用していない100%オールナチュラルのアンガスビーフを使用するなど、品質にこだわったハンバーガーがニューヨーカーの支持を受け、短期間に急成長を果たした人気ハンバーガーレストランだ。

 この「SHAKE SHACK」の登場により「ファストフード」「ジャンクフード」の代名詞とも言われたハンバーガーが、品質と味、さらには健康面にも配慮した「プレミアムバーガー」へと進化して、今日本を席巻しているのだ(「第3次ハンバーガーブームはいつまで続くのか?」)。

ブームに火を点けた「UMAMI BURGER」

2017年「UMAMI BURGER」1号店が北青山にオープンし、行列を生んだ。
2017年「UMAMI BURGER」1号店が北青山にオープンし、行列を生んだ。

 相次ぐハンバーガーチェーンの日本進出によって、各ブランドにとってはいかに他ブランドと差別化を図るかが重要になってきた。「BAREBURGER」はエコロジーやオーガニックをコンセプトの中心に据え、「THE COUNTER」は「100万通り以上のハンバーガーを楽しめる」カスタムバーガーをウリにしている。そんな中で一際独特の個性を放っているのが、2017年3月北青山にオープンした「UMAMI BURGER」である。

 「UMAMI BURGER」は、2009年にロサンゼルスで1号店をオープンし、これまでアメリカ国内で25店舗を展開している人気ハンバーガーレストラン。TIME誌の「史上、最も影響力のある17のバーガー」にも選出されるなど、国内で高い人気を誇っている中で、待望の日本への初進出を果たした。店名の「UMAMI」とは日本語の「旨味」のこと。創業者であるアダム・フライシュマン氏が旨味を最大限に引き出す調理法を確立し作られたのが「UMAMI BURGER」だ。

日本人が発見した「旨味」をハンバーガーに

2017年のオープン以来、人気を集め続ける「UMAMI BURGER」。
2017年のオープン以来、人気を集め続ける「UMAMI BURGER」。

 日本では古くから昆布やカツオ節による「出汁」文化があり、その出汁の味わいに「旨味」が存在することは経験的にも分かっていた。1900年代初頭には、昆布の中にあるグルタミン酸やカツオ節の中にあるイノシン酸が旨味成分であるということが突き止められ、その後シイタケの中のグアニル酸も旨味成分であることが分かっている。一方、欧米で「旨味」に注目が集まるようになったのは2000年代に入ってからのこと。「UMAMI BURGER」はそんな中でいち早くハンバーガーの世界に「旨味」を取り込んだ先駆者と言って良いだろう。

 

 旨味を多く含むローストトマトやシイタケなどを使うなど、旨味を味作りの軸に据えたハンバーガーを開発。日本の店舗で提供するメニューには、アメリカの提供メニューの中から日本人の味覚に合う商品を厳選した。アメリカの味そのままで提供するのと同時に、日本料理の調理法や日本人が慣れ親しんでいる素材を生かした、日本独自の味を楽しめる日本限定のオリジナルバーガーもメニューに揃えた。オープンしてまだ半年ほどだが、連日店の前には行列が出来るほどの人気ぶりだ。

開店以来初となる大型メニューリニューアル

「TERIYAKI SAMURAI BURGER」はワサビと味噌が隠し味に。
「TERIYAKI SAMURAI BURGER」はワサビと味噌が隠し味に。

 そんな「UMAMI BURGER」が、9月16日より開店以来初となるメニューのリニューアルを行い、新メニューの提供を開始している。今回のリニューアルでは、4種類の新たなハンバーガーをはじめ、サイドメニューやデザートも加わっており、かなり大幅なメニュー追加になっている。

 今回新たにグランドメニューに仲間入りした「TERIYAKI SAMURAI BURGER」は、アメリカでも人気の一品。日本の調理技法である「照り焼き」を用いて、甘いテリヤキソースを絡めたビーフパティに、アボカドの天ぷらやフライドエッグなどを一緒に挟み、ワサビとミソマスタードを隠し味に加えたもの。日本人なら誰もが好む照り焼きの味と、ワサビや味噌のコクのある味わいが調和したハンバーガーは、新しいのにどこか懐かしさも感じる味になっている。

日本限定の新メニュー「U-BBQ BURGER」は今までにない新感覚の味わい。
日本限定の新メニュー「U-BBQ BURGER」は今までにない新感覚の味わい。

 そして今回のリニューアルのフラッグシップアイテムとも言うべきハンバーガーが、日本限定のオリジナルバーガー「U-BBQ BURGER(ウマミバーベキューバーガー)」だろう。様々な素材を使って「旨味」をしっかりと引き出したオリジナルのバーベキューソースに、ミソメープルベーコンやキャラメルオニオン、天ぷらビッツなどの個性的な具材を合わせた、今までにない新感覚のハンバーガー。味だけでなくアクセントとなる食感も色々と楽しめる、食べていて楽しくなるハンバーガーが出来上がった。このハンバーガーを味わえるのは日本だけだ。

 日本に初出店してまだ半年ほどだが、早くも日本のハンバーガーブームを牽引する勢いの「UMAMI BURGER」。数あるハンバーガーレストランとの差別化のアイテムとして「旨味」に着目したハンバーガーが、どの国よりも旨味に慣れ親しんでいる日本で人気を集めているのも当然と言えるだろう。2020年までに全国で10店舗の展開を計画しているのだという「UMAMI BURGER」だが、今後どれだけ日本人に浸透していくのか注視していきたい。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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