雪かき、芝刈り、枯れ葉処理の1台3役「庭用ルンバ」

2016/10/27

シリコンバレーのコンペで優勝

「庭用のルンバ」と呼ばれているロボットがある。「コビ」(Kobi)というロボットだ。
コビは、家の中を勝手に動き回ってきれいにしてくれるお掃除ロボット「ルンバ」と同じように、屋外を自在に走行し、家回りをきれいにしてくれるロボットというふれこみだ。
せんだってシリコンバレーで開催されたロボット・スタートアップコンペ「ピッチファイア」で優勝し、製品化が待たれている。しかもコビは、雪かき、芝刈り、枯れ葉処理と1台で数役をこなすロボットだ。
このうち芝刈り用は、他社でもすでにロボットが発売されている。ちょうどお掃除ロボットが部屋の中をもれなく走行してちりを吸い取るのと同じように、芝刈りロボットも庭の輪郭を認識して、その内側の表面積を隙間なく刈っていく。
ヨーロッパで先に発売されていたが、芝が多いはずのアメリカではなかなか見かけなかったのは、庭掃除を請け負ってくれるメキシコ系の安い労働力があるからだろう。
近年、ようやく数社の製品がメディアでも見られるようになっていたが、コビのように何役も兼務するというのは他にはない。

超音波センサーで障害物を認識

コビは、自動走行システムを持つ駆動部分と、雪かき、芝刈り、枯れ葉処理の各機能を搭載した先端部分とが組み合わせられるようになっているところがミソである。
ワンタッチで取り外し・取り付けが可能で、車体下部の歯やショベルのような機器とその機構が付け替えられる。
アイロボットのお掃除ロボットは、掃除機のようなちり吸入とモップがけやタイル磨きが別々のロボットになっているのだが、コビは「何台もロボットを持つのはちょっと」と躊躇(ちゅうちょ)する気持ちをうまく解決してくれる点でも、得点が高いだろう。
さて、コビを使う場合には、まず庭の輪郭を覚えさせなければならない。そのために、庭の隅に発信器のようなものを取り付けて、そこから先へ進まないようにする。また使用前に1度、遠隔操作で走らせて走行する場所を記憶させることが必要だ。
カメラと超音波センサーも搭載しているので、人や犬などの障害物があれば停止する。また、木や花壇などもよけて通るが、庭に散らばったオモチャなどをあらかじめ取り去ってきれいにしておかなければならないのは、お掃除ロボットと同じだ。
各機能は次のような仕組みである。芝刈りでは、刈られた芝はそのままで放置。枯れれば、いずれ庭の肥料になるからという。
雪かきは、スマートフォンのアプリで雪を積み上げておく場所を指定することができ、そこへ向かってかいた雪を噴射する。40フィート(約12メートル)先まで到達可能だ。そして、枯れ葉は、よくアメリカで行われているように風を吹き付けて散らしながら、最後に1カ所に集める。

時間節約、公害防止にもメリット

コビの価格は4000ドル。現在はベータ版でテストユーザーらが試用している状態なので、実際どの程度満足に各機能を満たすのかはまだわからない。
したがって、これが高いのか手頃なのかの判断はつきにくいが、3つの役目を無難にこなしてくれるのなら安いだろう。来年には製品として発売される予定だ。
コビ社では、このロボットを使う利点を「時間節約、公害防止」という面からアピールしている。何でもアメリカ人は年間70時間を芝や庭の手入れに費やしているそうで、「これは2週間まるまる仕事をしたようなものです」という。
また、米国環境保護庁によると、庭用の機器に入れようとしてこぼしてしまうガソリンは年間1700万ガロン(6435万リットル)にも上るそうで、アメリカの大気汚染の5%を起こしているという。充電式の電動ロボットならば、重労働も公害もないというわけだ。
確かに、庭仕事というのはちょっと牧歌的な響きがあるものの、現実的には庭をいつもきれいに保つのはそう簡単ではない。
ただ、枯れ葉をかいたりするその作業にはちょっとした風情があり、また瞑想に通じるようなところもあったのだが、それもロボットが担当してくれることになる。うれしいような、残念なような気分だ。
*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。
(文:瀧口範子)